コロナ禍で「猫を飼いたい」その前に…シェアハウスで世話体験

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、「おうち時間」に癒やしを求め、ペットの飼育を希望する人が増えています。なかでも、散歩が要らず、初心者でも飼いやすい猫が人気ですが、いざ飼おうと思っても、「単身者向けの賃貸住宅に『ペット可』の物件が少ない」「留守中の世話はどうしたらいいのか心配」といった問題が少なくありません。そこで注目されているのが、他の入居者とともに猫の世話をしながら暮らす「猫付きシェアハウス」です。東京・新宿にある猫付きシェアハウスを訪ね、生活の様子を取材しました。

居住者が当番で猫のトイレや食事の世話

「猫付きシェアハウス『562(ごろにゃ)四谷』」では、居住者の共有スペースで4匹の猫が暮らしています。いずれも、NPO団体「東京キャットガーディアン」が保健所などから引き取り、飼育希望者を探している「保護猫」。東京キャットガーディアンは、「ペットウェルカム物件」を仲介するポータルサイト「しっぽ不動産」を運営しており、「562四谷」は、しっぽ不動産が監修して5年ほど前、猫が快適に暮らせるように内装をリノベーションしたシェアハウスです。

562四谷の玄関:東京キャットガーディアン提供

保護猫は、完全室内飼いが必須で、玄関のドアを開けた時に猫が外に飛び出さないように、二重扉になっています。火を扱うキッチンも、猫が入れないように引き戸で仕切るなど、細心の注意が払われています。「猫を気に入り、シェアハウスを卒業する時に、『飼い猫として引き取りたい』と申し出る方もいらっしゃいます。猫が引き取られていったら、また新しい猫が入る。これがうまく循環して、小さな猫シェルターになればと思っています」。東京キャットガーディアン代表の山本葉子さんはそう話します。

居住者が当番で猫のトイレや食事の世話をし、もしも猫が体調を崩したら、動物病院に連れていきます。キャットガーディアンのスタッフも、問題が起きていないか定期的に物件を巡回。居住者からトラブルの連絡を受けたら、緊急性の有無を判断したうえで、場合によってはシェアハウスに駆け付け、居住者をサポートします。

山本さんは「猫たちは、決してレンタル猫ではありません。普通の家庭と同じような環境に慣れて、『里親さん』を待っている猫だということを承知してほしい。保護猫の預かりボランティアをやっているという気持ちで、猫との生活を楽しんでほしい。飼育経験がなくてもレクチャーしますので、いい飼い主になってほしいです」と強調します。

562四谷のリビング:東京キャットガーディアン提供

「562四谷」の居住者は現在4人で、全員が女性。コロナ禍の今は、共有のリビングルームで、猫に癒やされながらリモートワークをする人もいます。

キャットガーディアンは現在、「562四谷」のほか、東京に2棟、大阪に2棟の戸建ての猫付きシェアハウスを所有しています。入居は、保護猫たちと一緒に暮らし、世話をすることが条件。入居者を募る時には、猫を飼う適性があるかどうかを面談で見極め、里親になる人と同じ適性条件をクリアすれば、入居することができます。

「シェアハウスの特長で、割と短いサイクルで、住人は入れ替わりますが、中には長年住み続ける人もいます。また、シェアハウスの保護猫を引き取って、別の賃貸物件に引っ越しして、飼う人もいます」と山本さん。

最近では、戸建て住宅の一部を単身者用住居として貸し出し、借りた人がキャットガーディアンの保護猫と暮らすという仕組みもあります。

山本さんによると、「しっぽ不動産」で物件探しをした人の多くは、「やっと物件が見つかった」と喜ぶといいます。「ペットを飼いたいという人の数に対し、明らかにペットを飼える物件数が少ないんです。もっと増えるといいですね」

562四谷の居室(左):東京キャットガーディアン提供
562四谷の居室(左):東京キャットガーディアン提供

ペットを飼って「おうち時間」楽しく

コロナ禍で気軽に外出してレジャーを楽しめなくなったことなどから、自宅にペットを迎えて安らぎを求める傾向が強まっています。

社団法人「ペットフード協会」(東京)が2020年10月に実施した「全国犬猫飼育実態調査」の結果(推計値)を見ると、1年以内に新たに飼われた犬と猫は計約95万匹で、前年比約15%増となりました。同協会は「コロナ禍の影響で、ペットとの生活から癒やしを求める傾向がうかがえる」と分析しています。

また、ペット保険を取り扱う「au損保」(東京)が同年12月に実施したコロナ禍でのペット飼育に関するアンケート調査では、全国の犬・猫の飼い主1000人に、ペットを飼い始めた理由を尋ねたところ(複数回答)、「おうち時間を楽しく過ごすため」が63.0%で最多に。「寂しい時に寄りそってくれると思うから」が46.2%、「一緒に散歩に行ったり、遊んだりしたいから」が43.8%で続きました。

出典:au損保
出典:au損保

「おうち時間を楽しく過ごすため」と答えた人の割合を、新型コロナ流行前後で比較してみると、流行前の「2020年3月以前」に飼い始めた人のうち、その割合は61.9%なのに対し、流行後の「2020年4月以降」に飼い始めた人のうちでは74.7%と、新型コロナ流行後の方が割合が高くなっています。

コロナ収束後、飼育放棄増加の懸念も

東京キャットガーディアンでは、猫カフェ形式の保護施設「大塚シェルター」(豊島区南大塚)も運営しています。山本さんに、コロナ禍以降に保護猫の引き取りの申し出が増えたかどうか聞いたところ、「一時期、増えましたが、今は落ち着いています。それ以前も譲渡数は月平均50~60頭と多いんです。昨年8月には、1か月で120頭もの譲渡がありました。猫を飼いたいと思っていた潜在的な層の人たちが、在宅時間が増えたのを機に飼う条件が整い、行動に移したのだと思います」と答えました。

東京キャットガーディアン代表の山本さん(大塚シェルターで)

コロナ禍でのちょっとしたペットブーム。でも、単なるブームであれば、新型コロナが収束した後、飼育放棄が増えてしまう懸念も捨て切れません。ペットは一生の家族。ずっと大切に育てられるかどうか、長期を見据えて判断をしたいものです。(取材:読売新聞メディア局・遠山留美)

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