箱根ラリック美術館…ときめく香水瓶 ドラマチック・ラリック展

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箱根の美術館には、テーマを思い切り絞ってファンを引きつける施設が多数あります。アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代に活躍したフランスの芸術家、ルネ・ラリック(1860―1945)に焦点をあてる「箱根ラリック美術館」も、その代表的な存在。

箱根ラリック美術館の全景

同美術館では現在、ラリック生誕160年と箱根ラリック美術館開館15周年を記念して、「ドラマチック・ラリック」展を開催。ラリックが手がけた香水瓶の数々を香水の広告とともに展示しています。

一流のジュエリー作家から、ガラス工芸家に転身

ラリックはフランス・シャンパーニュ地方のアイに生まれました。パリで装飾美術を学び、16歳で宝飾職人に弟子入りしました。カルティエなどの一流宝飾店から依頼されるほどのジュエリー作家になり、1900年のパリ万博でグランプリを受賞。コティの香水瓶制作をきっかけにガラス工芸家に転身した後も、オリエント急行や豪華客船ノルマンディー号の室内装飾を手掛けるなど、幅広いジャンルで独創性あふれる作品を生み出しました。

ルネ・ラリック

パリ万博後、ラリックは香水商フランソワ・コティとの出会いをきっかけに、香水瓶のデザインと製造という新しいジャンルへの挑戦をスタートさせました。それまで、香水瓶に独創的なデザインを施すという考えはあまりありませんでしたが、ラリックは目に見えない香りの魅力やイメージを、花々や真夜中に輝く月、高層ビルなどにたとえ、瓶の造形やデザインで表現したのです。

香水瓶「シクラメン」1909年 コティ社

容器という枠を超えて、繊細な意匠に豊かなストーリーが込められたラリックの香水瓶は、瞬く間に人々の心をつかみました。展示の目玉となっているウォルト社の「香水瓶5連作」は実にしゃれています。

左の青い瓶から順に「ダン・ラ・ニュイ(真夜中に)」(1924年)、「ヴェール・ル・ジュール(夜明け前に)」(1926年)、「サン・アデュー(さよならは言わない)」(1929年)、「ジュ・ルヴィアン(私は戻ってくる)」(1931年)」、「ヴェール・トワ(あなたのもとへ)」(1933年) いずれもウォルト社製

五つの作品名をつなげると、「真夜中に、夜明け前に さよならは言わない。私は戻ってくる、あなたのもとへ。」という愛の歌になります。こうしたドラマに乗って、香水瓶は人々のおもいをのせた贈り物として定着していきました。

このほか、当時の洗練されたデザインの広告素材なども、時代の空気を伝えていて興味深い展示です。

左・広告「ヴェール・トワ」1934年 ウォルト社 右・広告「ダン・ラ・ニュイ」1924年 ウォルト社

常設展示では、ラリックの精巧なデザインによる様々な作品を見ることができます。

ブローチ《シルフィード(風の精)あるいは羽のあるシレーヌ》1897~99年頃 金、ダイヤモンド、透胎七宝
上・花器《パンチエーヴル》1926 色ガラス、型吹き、パチネ 下・シャンデリア《狩り》1913 無色ガラス、プレス、パチネ、金属

敷地内には、ラリックが内装を手掛けたオリエント急行の車両(ル・トラン)が設置されており、中で優雅にティータイム(要予約)も楽しめます。

オリエント急行の車両(ル・トラン)

一人の作家の作品だけでも、驚くほど豊かな世界観に触れることができます。こうした美術館に立ち寄るのも贅沢ぜいたくな時間の使い方でしょう。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

ドラマチック・ラリック展
場所:箱根ラリック美術館2階企画展示室(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186-1)
会期:2021年3月21日(日)まで
箱根ラリック美術館
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