車に乗せてもらったお礼が「ありがとう」の一言じゃダメですか?

友人同士で話題の温泉へ足をのばしたり、仕事の後でマイカー通勤の同僚に駅まで送ってもらったり、さまざまなケースで誰かの車に乗せてもらう機会があるでしょう。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、「車に乗せてもらって『ありがとう』だけ?」「車に乗せたのにお礼がない」など、車を出したドライバーから不満の声が寄せられています。車に乗せてもらった時のお礼やマナーについて、車生活アドバイザーの鈴木珠美さんに聞きました。

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ガソリン代や高速代を払ったのに・・・

北陸地方に住むトピ主の「ミミ」さんは、近所に住んでいて大雪で駐車場から車が出せなくなった会社の先輩を3日間、車に乗せて通勤しました。降り積もった雪のせいで、普段なら会社まで30分の道のりが2時間以上かかりました。先輩は、ガタガタ道で運転をして疲れ切った「ミミ」さんを励ましてくれたり、会社の駐車場の雪かきを手伝ったりしましたが、お礼は「ありがとう」の言葉だけ。「ミミ」さんは、どうにも釈然としません。

別のトピでは、社会人になったばかりの「るう」さんが、自分の運転で友人と旅行に出かけたエピソードを紹介しました。目的地は、「るう」さんの自宅から直接行けば1時間程度ですが、友人2人の迎えで遠回りをしたため、2時間かかりました。ガソリン代や高速代は「るう」さんが負担。ところが、お金については誰も何も言わず、「るう」さんも、楽しい雰囲気を崩したくなかったので、そのまま帰宅しました。車に乗せてもらう立場だったら、「みんなでお金を出し合おうと声を掛けるのが、運転者に対する礼儀として当たり前」と、割り切れない気持ちでいるそうです。

ドライバーの精神的、金銭的負担は大きい

なぜ、ドライバーと、車に乗せてもらう同乗者の考え方に、このようなズレが生じてしまうのでしょうか。車生活アドバイザーの鈴木さんは、「自ら車を所有して運転する人と、車を持っていない人とでは、運転に対する心構え、車にかかるコスト意識に大きなギャップがある」と指摘します。

運転に慣れているベテランドライバーでも、ハンドルを握れば、安全運転の責任と緊張で気が張った状態になります。同乗者がいれば、普段よりももっと疲労します。

そして、車を走らせるには、ガソリン代や高速代などのランニングコストに加え、メンテナンス代、駐車場代、自動車保険代、自動車税などの維持費もばかになりません。

こうしたドライバーにかかる精神的、金銭的な負担のどちらとも、運転しない人には見えにくく、あたかも、ドライバーの負担がほとんどないかのように誤解する可能性があります。

とはいえ、車の運転や所有の機会がないから「知らなかった」では済まされません。鈴木さんは「ドライバーの立場になって、どのような負担があるのだろうかと想像することが大人として当然の思いやりです」と話します。

車はドライバーの“マイルーム”

車に乗せてもらうときのマナーや、車を出してもらったドライバーへのお礼について、鈴木さんは次のように提案します。

 【ドライブ・旅行の場合】

・車を出す人が、都合のいい集合場所や降車場所を指定する
・車を出す人は、事前にドライブルートをメールなどで同乗者と共有する
・車を出す人は、移動ルート・距離からおおよそのガソリン代、高速代を計算し、同乗者に事前に伝える
・費用を割り勘にした上で、同乗者はドライバーをランチや飲み物などでねぎらう

【“ついで”の範囲を超えて乗せてもらう場合】

・車を出す人がきょうだいや親友なら、感謝を述べる(長距離の場合は金品を渡すことも)
・車を出す人が会社の同僚・上司・部下、近所の人などの場合は、感謝の気持ちを形(菓子、飲み物、お土産など)で示す
・相手から依頼された場合は、車を出す人が「ガソリン代・高速代を負担してもらえますか」と先に伝える

「車はいわば、ドライバーの“マイルーム”です」と鈴木さん。「自宅に誰かを招くことを考えてみれば、親友やきょうだいなら、手ぶらで訪ねてきても気にならないと思います。でも、一定の距離のある関係であれば、やはり、手ぶらでお邪魔するというわけにはいきません」と説明します。

気をつけたい同乗者のマナー

鈴木さんは、車に乗せてもらったときのお礼だけでなく、気をつけてもらいたい同乗者のマナーを5つ挙げています。

・ドアを勢いよく閉める
・ドアにヒールなどをぶつける
・居眠りしっぱなし
・急に大きな声を出す
・道に迷ったときにフォローしない

車に乗るとき、降りるとき、注意が必要です
写真はイメージです

車のドアの開閉は、慣れていない人には加減が難しいかもしれません。力が弱すぎると、半ドアになってしまいます。苦手意識がある場合は、ドライバーに「ドアの閉め方がうまくできない」とあらかじめ伝え、教えてもらうほうがいいと言います。

同乗者の居眠りについては、「信頼してもらっている」と好意的にとらえるドライバーもいますが、移動の時間と空間を楽しく共有することは、思い出を増やす絶好のチャンスです。

また、突然、同乗者が大声を上げれば、ドライバーはびっくりして急ハンドルを切ってしまったり、急ブレーキをかけてしまったりしかねません。同乗者の心構えとして、ドライバーを慌てさせる行動は避けるべきです。

同様に、ドライバーが道に迷って困っていたら、一緒に解決策を探すようにしてあげること。愚痴をこぼしたり、知らんぷりをしたりすれば、ドライバーはさらに焦ってしまいます。スマートフォンの地図アプリなどで調べてあげるといいでしょう。

「車の運転でその人の本性が分かると言われますが、同乗者も車内の過ごし方でその人の本性が分かってしまいます。車に乗せてもらった同乗者は、ドライバーの厚意に甘えるのではなく、負担や疲労にも思いやってほしいですね」と鈴木さん。「その方が、快適なドライブを楽しめるでしょうし、後になって、ドライバーがお礼やマナーについてもやもやするという状況も避けられるはずです」とアドバイスします。

(読売新聞メディア局 鈴木幸大)

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鈴木珠美
鈴木 珠美(すずき・たまみ)
車生活アドバイザー

出版社勤務を経て独立。女性誌、ブライダル、動物雑誌で企画編集に携わる。女性のための車生活マガジンの編集長。オフィスタマ株式会社設立。車、女性、生活、健康を軸にアドバイザー、取材・執筆、セミナー講師を務める。

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