「私が最後じゃない」働く女性を引きつけるハリス副大統領の服と言葉

米国初の女性副大統領に就任したカマラ・ハリスさん。1月20日(日本時間21日)に行われた大統領就任式の前から、ファッションアイコンとしても世界の注目を集めています。女性初というだけでなく、アフリカ系、アジア系としても初となる副大統領の誕生について、米国の女性たちはどう受け止めているのでしょうか。ニューヨーク在住のファッションジャーナリスト、森光世さんに聞きました。

――ハリスさんの就任式での服装にも注目が集まりました。

パープルのコートとドレスのアンサンブルは、ニューヨークを拠点とする黒人デザイナーの有望株、クリストファー・ジョン・ロジャーズさんが手掛けたもの。トレードマークのパールのネックレスは、プエルトリコ出身のジュエリー・デザイナーによる「ウィルフレド・ロサド」のものでした。就任前夜に行われた新型コロナウイルスの犠牲者をたたえる式典の際は、ハイチ系米国人若手デザイナーのブランド「パイヤーモス」のコートを着用していました。「若手の小さなブランドの服を着ることで、低迷するアメリカファッション界の力になれたら」との彼女の思いを感じました。

新型コロナウイルスの犠牲者追悼式典で「パイヤーモス」のコートを着用したハリスさん(19日、AP)

親しみやすいファッションアイコン

――彼女はすでにファッションアイコンで、彼女の装いを編集した「KAMALA’S CLOSET」というサイトまでできているそうですね。

テーラードのパンツスーツにマノロ・ブラニクのヒール靴、シャネルのトートバッグという、キャリアウーマンの典型的なファッションもする一方で、ブレザーとTシャツにジーンズ、コンバースのスニーカーやティンバーランドのワークブーツなどカリフォルニア・スタイルのカジュアルさのある装いが支持されています。彼女のファッションが、「approachable(親しみやすい)」であることを体現しているようです。彼女のテーラードスーツは、一昔前のキャリアウーマンの多くが着ていた、メンズのビジネススーツの色を赤やピンクにしたものとは違います。昨年11月の民主党勝利宣言の際の、米ブランド「キャロリーナ・ヘレラ」の真っ白なスーツのように、女性の体形を美しく見せるテーラードが特徴です。色も黒、ネイビー、ベージュ、ボルドーと地味な色が多く、クラシックでもモダンな印象を与えていると思います。

「ガラスの天井」打ち破った 融合のシンボル

――ガラスの天井を打ち破ったハリスさんは、アメリカの女性たちにどのように受け止められているのでしょう。

彼女が、移民の子供であるということがとても好意的に受け止められています。トランプ前政権下では人種や性差別、移民政策が問題の種となったことから、ハリスさんの生い立ちはアメリカを一つにするシンボルになると期待する人が多いのです。彼女の存在は「よきアメリカ」を体現しているとして、共和党支持者にも、「バイデン氏は嫌でも彼女は許せる」という人が多いようです。

――彼女の演説には、多くの女性が感銘を受けたのでは?

彼女は20、30代の女性に絶大な人気で、特にキャリア志向の強い女性たちのあこがれの存在です。ハリスさんがインタビューで度々口にする「I won’t be the last(私が最後じゃないわよ)」という、「私の後に続いてほしい」と願う言葉に勇気付けられたという女性や女子学生たちが大勢います。アフリカ系女性として初のサンフランシスコ地方検事、カリフォルニア州司法長官に就任。黒人女性では2人目の上院議員に当選、そして初の女性副大統領と、マイノリティーであること、女性であることの壁を越えて、地位を獲得してきたからです。

――夫と夫の先妻との間の2人の子どもからは「ステップマム(義理のお母さん)」ではなく、「ママラ」と呼ばれていると報道されていました。

キャリアに集中するだけでなく、家庭や家族の存在を大切にしているところも女性たちの心をつかんでいます。キャリアのために家庭を築くことを半ばあきらめている30、40代の女性たちにとっては、ハリスさんが50歳になって初めて結婚し、夫の先妻との間の子供たちともうまくやっている姿もあこがれとなっているようです。

――ハリスさんにどんなことを期待しますか。

検事時代、上院議員時代に培った司法、外交、情報、環境分野での経験を生かし、定評のある事実に基づくシャープな質疑応答で、政権内でリーダーシップを発揮してもらいたいですね。初の女性副大統領としての存在感を国内外に示すとともに、これまで多様性とインクルーシブ(誰もが参加できる)についての発言も多いので、アメリカ国内の融和に力を注いでもらいたい。ペンス前副大統領のような陰の人ではなく「見える副大統領」になってもらいたいですね。

(聞き手・読売新聞メディア局編集部 谷本陽子)

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森 光世(もり・てるよ)
ファッションジャーナリスト

東京生まれ。ファッション誌「流行通信」編集部を経て、1980年にニューヨークへ移住。アメリカのファッションやデザイナーの取材を約40年続けている。

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