「血液型占い」がないドイツの女性が運勢よりも気にすること

2021年を迎えました。今年はどんな年になるのでしょうか? 昨年は、世界中のだれもが認める「散々な年」であったため、今年の運勢が気になるところ。例年なら初詣に出かけ、おみくじを引いて運勢を占うのに、今年はコロナ禍で初詣を控えた人も少なくないはずです。今回は、日本とヨーロッパの「占い」について考えてみます。

血液型の話が大好きな日本人

日本で最もポピュラーな占いの一つと言えば、「血液型占い」でしょう。ところが、筆者の出身のドイツでは、「血液型占い」というものを聞くことはまずありません。筆者が日本に来たころに驚いたのが、占いに限らず、ともかく血液型の話題が多いことでした。飲み会で初対面の人がいれば、「何型?」と血液型を聞いたり、自己紹介を兼ねて自分の血液型を公表したりもします。そして、血液型を言った後、必ずといっていいほど、周囲の人たちに「リアクション」があります。驚いたり、笑ったり、納得したり。というのも、日本では「A型は真面目」、「B型は大雑把で明るい」といった血液型にまつわるイメージが先行しているからです。

ちなみに筆者はAB型ですが、「AB型です」と言うと、皆一瞬静かになります。そしてその後、決まって「なるほどね……」というリアクションになるのが気にかかっています。確かに占いの本を読んでみると、「AB型には一風変わった人が多い」などと書いてあったりするので、「それで周りはあんなリアクションなのかな」なんて想像してみたりします。

日本に長く住むダジャレ好きのある外国人男性は、初対面の人に「何型?」と聞かれるたびに「ガタガタですよ」と答えて笑いを誘っています。

良い名前は「字画」が大事? 欧米人には新鮮な姓名判断

日本の占いでもう一つ、欧米人に新鮮に映るのが、名前で運勢を占う「姓名判断」です。日本では、子供が生まれる時に、「苗字」と「名前」の画数が良いかどうかを見てもらった上で命名する親が少なくありません。

インターネット上にも、自分の苗字と名前を漢字で記入するだけで運勢が分かる「字画占いサイト」があります。筆者も仕事に行き詰まった時などにそういったサイトに自分の姓名を入力しては、診断結果にタメ息をついたりしています。というのも、旧姓の「渡部里美」という姓名が運勢的に微妙であった上に、結婚後の「大谷里美」はもっとキツい運勢だったりするからです。そんなことを定期的に再確認しているわけですが、毎回「ま、普段はカタカナの名前を使うことも多いし、運勢は気にしないようにしようっと」と自分に言い聞かせ、仕事に戻るのです。

そもそもなぜ、結果が分かり切っている字画占いサイトに何回も名前を入力してしまうのかというと、やはり「名前で占う」ということがドイツにないため、筆者にとっては興味がそそられるものだからです。漢字ではなくアルファベットを使う欧米人に「字画」という感覚はありません。よってドイツには「字画が良い」「字画が悪い」という発想自体がないのです。

コロナ禍のドイツで話題になった占い師

「血液型占い」も「姓名判断」もないドイツですが、では、ドイツには占いがないのかというと……あるのでした。

ドイツでは5人に1人が占いを信じていると言われていますが、最近はコロナ禍でさらに「占いへの関心度」が高まっているようです。特に注目を浴びているのが、ドイツ北西部の都市ハイデルベルグの占星術家Ute Flörchinger(ウテ・フリョールヒンガー)さんです。科学者から占い師になったという異色の経歴を持つこの女性の占いが「とにかく当たり過ぎていてビックリ」と評判なのです。というのも、ドイツの「ディ・ヴェルト」という新聞社のマガジンが毎年12月に「翌年の占い」を載せるのですが、同氏が2019年12月に占ったことが翌20年、現実になったからです。

写真はイメージ

彼女は「2020年は数百年に一度訪れる『大規模な変化のある年』で、今までの価値観が見直される年」だとし、困難のピークは「1月12日」と「12月」であると予言しました。その後、1月12日にWHOから新型コロナに関する発表があったことや、12月にはドイツ人にとって最も大切な行事であるクリスマスが、自宅であっても大勢の親戚が集まるのを禁止されるという災難に見舞われたため、同氏の予想が大きな話題になったのです。

また同氏は「2020年3月には人々がコントロールできない災難に見舞われますが、その時期は『外に幸せを求める』のではなく、『自分の中や家庭』に幸せを求めましょう」と書き、多くの人に「家庭的な時間」が訪れることを予言したのです。実際にドイツでは、3月に厳しい外出制限が設けられたため、家の中でパズルをしたり、家庭菜園をしたりと、「家庭的な時間」を過ごす人が増えました。

占いを掲載したディ・ウェルトは「科学的な根拠はない」としながらも、あまりの当たり具合に多くの人が驚いていることを、後に記事にしたほどです。やはり、新型コロナという未知のウイルスの登場で、今までになかった生活スタイルを強いられ、仕事でもプライベートも不安を感じる人が増えたからこそ、こういった占いがよく読まれ、話題にもなったのでしょう。

ドイツの占いのメインは「星座占い」

ドイツでは、ウテ・フリョールヒンガー氏やアメリカの著名占い師Susan Miller(スーザン・ミラー)氏のように、「ピンポイントで具体的なことを言ってくれる」占い師さんが人気です。後者に関しては、たとえば、美を追求する人に対して「ボトックス注射の日は、この日ではなく、この日のほうが良い」などとピンポイントで占うため、「まるで天気予報のようだ」と言われているほどです。

ところで、日本でもおなじみの「星座占い」ですが、ドイツでは、女子トークの中で星座の話がよく登場します。たとえば、女友達に「彼とこういう理由でケンカをしたの」などと恋愛相談をすると、「あなたの彼は燃えやすい〇〇座で、あなた自身は△△座だから、お互いにヒートアップしちゃうのかもね」といった返事が返ってきたりします。

このようにドイツでは、恋愛がらみで星座が語られることが多いです。「自分自身の運勢」も気にはなるけれど、気になっている男性または交際中の彼との「相性」が一番気になるというわけです。

そもそも幸せな時は占いに行かない?

ドイツにも普段から「占いが大好き」という人はいますが、やはり現在のコロナ禍のような「不安定な時期」だからこそ、占いが気になるという人が多いようです。

以前に誰だったか、「人間はそもそも、幸せな時は占いに興味を持たないものだ」と言っていました。筆者個人に関して言えば、それは当たっている気がします。筆者の最寄りの駅前には、占いのお店が複数あるのですが、振り返ってみると、実際にお店のドアを開いて相談したのは、失恋など「何かあったとき」でした。

コロナ禍で家にいる時間が長くなった今は、ネットや雑誌でついつい占いを読んでしまうこともあります。ドイツ語の占いもたまに読むのですが、コロナ禍になる前は、「来月はパーティーで異性との運命の出会いが……」なんて書かれていたのが、今はコロナ禍に合わせているのか、「パーティー」なんて言葉は一切登場しなくなりました。21年が終わるころには、占いにもまた「パーティー」という言葉が復活することを期待したいです。

あわせて読みたい

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)。

Keywords 関連キーワードから探す