一生に一度は行きたい善光寺、秘密いっぱい長野のワンダーランド

古くから「遠くとも一度はまいれ善光寺」と言われている国宝・善光寺(長野市)。新型コロナウイルスの影響で、もうひとつ気分が晴れない今こそ御利益を授かろうと、長野を訪ね、善光寺を参詣しました。そこには、隠された秘密をひもときながら巡る楽しさがあり、思わぬ発見をすると、より多くの御利益を授かれそうな気分になれます。

長野を訪れたのは11月上旬。JR東京駅から新幹線で約1時間半かけて、長野駅に到着しました。ここから善光寺までは約1.8キロ、バスに乗れば10分足らずですが、澄みわたる秋晴れに気分を良くして、徒歩で向かうことにしました。約30分の道中には、おしゃれなカフェや、名物・信州そばの店、有名な唐辛子の店などが軒を連ね、目移りして飽きることがありません。街路樹にはイルミネーションの準備が進められていました。

忘れずに見て! 仁王像の裏には・・・

善光寺に着くと、まず目に入るのは「仁王門」。口を開いた「阿形(あぎょう)」と、口を閉じた「吽形(うんぎょう)」の2体の仁王像が出迎えてくれます。阿形は行動力とひらめき力で成功へ導き、吽形は思慮深さと心身の安らぎをもたらすとされています。たくましい肉体といかめしい表情を持つ仁王像は、それぞれ高さが5メートルもあります。

その背後には、大黒天、毘沙門天、弁財天の合体像「三面大黒天」と、火よけを祈る「三宝荒神像」が安置されています。「参拝客の多くが仁王像に見とれて、背後にあるこの二つを見落としてしまいがちです。高村光雲の作とされている貴重なものですから、忘れずに見てくださいね」と、案内してくれた善光寺事務局職員が話します。

仁王門をくぐり抜け、仲見世通りへ。土産物店、仏具店、飲食店が立ち並んでいます。長野特産の「おやき」やアップルパイの店先には行列もできていました。境内入り口から続く石畳は、山門下まで7777枚あると聞けば、なんともありがたい気持ちになります。

11月上旬、紅葉の時期も趣があります

「善光寺」の文字の中にアレと・・・え、アレも?

仲見世から山門へ向かう参道入り口には、「駒返り橋」があります。ここは、源頼朝が善光寺に訪れた時、馬のひづめが穴にはさまってしまい、馬を帰して歩いて参詣したという伝説が伝えられています。前方に目をやると、「善光寺」の文字が金色に光る山門の姿があります。

善光寺の有名な「鳩字の額」

すると、職員の男性が「さて、ここでクイズです。ここに書かれた『善光寺』という文字は『鳩字はとじの額』と言われています。文字の中に5羽の鳩が隠れていますよ。また、善光寺にゆかりのある動物の顔にも見えませんか」と出題。目を凝らして見ると、なるほど、鳩の姿と牛の顔が浮かんできます。

ついに、善光寺本堂です。本堂正面を入ったところで参拝者がさかんに手を伸ばしているのは「びんずる尊者像」です。

頭が良くなるかも?

自分の体の気になるところと同じ場所をなでると、病気や傷が治るとの言い伝えがあります。修学旅行で訪れたという生徒たちは、頭に触れようと必死の様子。長野市の女子中学生(14)は「これで、期末テストで良い点が取れると思う。陸上部なので、けがをしないように足もなでちゃおう」と御利益を期待します。

極楽浄土行きの雲に一つだけ空席が?

びんずる尊者像の先に広がる約150畳敷きの内陣は、御本尊近くでお参りできる特別な空間です。御本尊が安置されている内々陣を隔てる上部の欄間に目を向けると、雲に乗った25体の菩薩像がありました。

善光寺本堂の内陣

信者を極楽浄土に迎えにきてくれている様子を表しているそうですが、一つだけ菩薩像の乗っていない雲があります。「あれは信者を乗せるための雲です」(善光寺職員)。信者のために極楽浄土行きの席がきちんと用意されているのです。

極楽浄土へ行く前に、必ずしておきたいのが「お戒壇巡り」です。内々陣の奥に「入り口」と書かれ、地下へと誘う階段があります。地下は、真の暗闇。その中を手探り状態で恐る恐る進むため、「まるでお化け屋敷」と言われるのも納得です。

お戒壇巡りの入り口

前を歩く人の姿も分からず、距離を十分にとっていないとぶつかってしまうほど。壁伝いに約45メートル進むと、そこには「極楽の錠前」と呼ばれる巨大な錠に触れることができます。ちょうど真上には、御本尊の善光寺如来が安置されているそうです。御本尊とつながったような気持ちになり、先の見えないこの世で一筋の光明を感じ取れた瞬間です。

山門の2階にあの虫がずっといる・・・?

善光寺の見どころは、これだけにとどまりません。本堂には108本の柱があるそうです。人間の煩悩が108とされることに由来しているそうで、除夜の鐘と同じです。「柱をよく見てください。少しねじれていませんか?」といたずらっぽく促す善光寺職員。そう言われてみると、台座の石と柱の角度が10度ほどずれています。

ねじれ柱。台座と柱がずれています

「1847年に善光寺地震と呼ばれる大変大きな地震があって、地震柱とも呼ばれているのですが、弁慶が源頼朝を憎んでねじったという伝説もあります。でも実際は現本堂が造られる際、完全に乾いた木材を使うことが困難な状況であったため、職人が木材のねじれを見越し、あえて柱をずらして設置したと考えられています」

職人技はほかにもあります。勾配のきつい階段を上って山門の2階へ。ここには、四国八十八か所霊場の分身仏が安置されています。お遍路をしたのと同じだけの御利益が授かれるそうです。

「ここで、また問題です。今回はちょっと難問ですよ」。インターネットにもあまり載っていない特ダネっぽい雰囲気です。どうやら、善光寺の職員はクイズを出すのが好きみたい。それだけ、善光寺には秘密がたくさんあるのでしょう。

「この2階にはセミが隠れています。さあ、探してみてください」

セミ? 夏の間に迷い込んだセミの抜け殻が柱にでもくっついているのかと見渡してみます。もしかしたら、セミのイラストが壁に描かれているのかもしれません。いや、板間の木目がセミっぽく見えるというオチでしょうか。「はい残念、時間です。正解はあちらです」。指さしたのは、回廊を隔てる扉。鉄製の板状の鍵の一部が、まさにセミの姿です。でも、どうして? 質問しようとすると、すかさず「職人の遊び心ですよ」とさらっと説明してくれました。

こんなところにセミが!

仁王門にはあのかわいらしい動物も・・・?

昼過ぎに到着してから、たっぷり4時間。宝探しをするような気分で、善光寺を満喫しました。案内をしてもらった善光寺職員にお礼を言うと、「言い忘れていましたが、仁王門にはうさぎもいますから、帰りに探してみてくださいね」とのこと。御利益と隠れキャラがいっぱいの、まさにワンダーランドです。

善光寺の御朱印を揮毫(きごう)してもらいました

善光寺の御朱印と厄よけのお守りも手に入れ、善光寺を後にします。たそがれ時の表参道には、イルミネーションが点灯していました。振り返ると、ライトアップされた仁王像は帰路の安全を見守ってくれているようでした。

一度と言わず、何度も訪れたくなる善光寺。仁王像が見送ってくれました

(読売新聞メディア局編集部 鈴木幸大)

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