小さく生まれた赤ちゃん、育児の不安抱える親を支援する

10人に1人の割合で低出生体重児が生まれている。親は予定外の出産に戸惑い、育児の不安を感じがちだ。当事者が交流できる育児サークルができたり、成長を記録できる専用の小冊子が作成・配布されたりするなど、支援の取り組みが少しずつ広がっている。

育児サークルで交流

低出生体重児とは、生まれた時の体重が2500グラム未満の赤ちゃん。1500グラム未満の場合は「極低出生体重児」といわれる。早産による場合が多く、子宮内での胎児の体重増加が十分でない子宮内胎児発育遅延による場合もある。

オンラインで交流会を開催する川満さん

「娘が退院しました! 皆さんにお披露目できてうれしいです」。10月下旬、低出生体重児の家族会「小さく産まれた子どもと家族の会『一歩』」のオンライン交流会が開かれた。子どもが入院中や退院したばかりという人も含めて約10人が参加し、子育ての悩みや経験を語ったり、助産師が助言をしたりした。

一歩の代表を務める埼玉県上尾市の看護師川満ひとみさん(35)は2019年、妊娠26週で次女を出産した。出生体重は897グラム。「心身ともにつらく産後は本当に孤独だった」という。今年1月、「低出生体重児の現状を多くの人に知ってもらい、子育てを支援する場を作りたい」と一歩を結成した。

厚生労働省の人口動態統計によると、低出生体重児が全出生数に占める割合は、1985年は5・5%(約7万8000人)だったが、19年には9・4%(約8万1000人)に増えた。医療技術の進歩による救命率の向上などが背景にあるという。

ただ、低出生体重児は、NICU(新生児集中治療室)などで入院が必要な場合が多く、退院後も正期産(妊娠37~41週)で生まれた子に比べて成長が遅れる場合もある。低出生体重児とその親を支援する動きも出始めてきた。

「できた日」記入できる専用冊子

静岡県は、母子健康手帳(母子手帳)と一緒に使う低出生体重児専用の小冊子「しずおかリトルベビーハンドブック」を18年から配布している。母子手帳には「お乳をよく飲みますか」など、発育の状況を「はい・いいえ」の二択で尋ねる欄が多い。低出生体重児の親は「いいえ」と答えることが多く気持ちが落ち込むという。

静岡県が作成した低出生体重児専用の小冊子(左)。今年、6か国7言語に翻訳したもの(右)も作成された

専用小冊子では「できた日」を記入するようにし、わが子の成長を実感できるようにした。母子手帳では1000グラムからしか記入できない体重のグラフも、0グラムから記入できる。先輩ママからの応援メッセージも掲載している。

県は、静岡市の低出生体重児の育児サークル「ポコアポコ」が11年に作った「リトルベビーハンドブック」を参考に小冊子を作成した。代表の小林さとみさん(53)も双子の娘を体重1000グラム未満で出産した。「お母さんが記入したくなるハンドブックにしたかった」と話す。小冊子の作成などを支援する「国際母子手帳委員会」事務局長の板東あけみさんによると、同様の小冊子は昨年から今年にかけて、名古屋市や福岡県など4自治体でも作られたという。

「プリミーサイズ」と呼ばれる低出生体重児向けの肌着も登場した。17年に開業したウェブショップ「ベビーストリア」には、新生児サイズ(50~60サイズ)より二回りほど小さいピンクや水色などの肌着が並ぶ。代表の谷山綾子さん(38)は12年に次男を妊娠23週、445グラムで出産した。徐々に成長し肌着を着せられるようになったが、新生児サイズの肌着を着せるとぶかぶかで、小ささが際立ってしまいつらかったという。「子どもの体に合う、かわいい肌着を着せたい」と独学で肌着作りを始めた。

親のネットワーク作りも支援する板東さんによると、低出生体重児とその親への支援は、病院や地域によって差が大きいという。板東さんは「低出生体重児の親は、正期産で出産した他の親と話すのもつらいという場合も多く、孤独感を深めやすい。当事者と医療機関、地域の保健師らが協力しあい、出産後早期からのきめ細やかな支援が必要だ」と指摘している。

どのように接すればいい?

周囲に子どもが小さく生まれた家族がいた場合、どのように接すればいいのだろうか。東京情報大准教授(母性看護学)の市川香織さんは「まずは当事者の親がどんな状況にあるのかを知ることが大切」と指摘する。

市川さんによると、低出生体重児は、早産など急な出産で生まれることも多い。地域の産婦人科での妊婦検診で、新生児集中治療室(NICU)がある病院への搬送を指示され、初めて訪れた病院で出産という場合もある。

思い描いていた出産とのギャップに傷つき、人工呼吸器などいろいろなチューブがつながった状態のわが子を見て、強い自責の念に駆られる親も多い。

さらに、子どもがNICUに入院すると、親は母乳を持って面会に行くこともある。「育児への不安に加えて、身体的な負担もかなり大きいことを理解してほしい」と市川さん。

声かける時に気をつけたいこと

実際に、どのように声をかけたらいいのだろうか。NICUで臨床心理士として長年働いていた山王教育研究所の橋本洋子さんは「どんなに小さく生まれても、まずは『おめでとう』と誕生を喜んであげてほしい」と話す。

そして、「『買い物のついでに何か買ってこようか』『病院に行っている間、上の子を見ていようか』など、『必要な時は声をかけて』といった態度で接するのがいい」とアドバイスする。

一方、何げないひと言が相手を傷付けることもあるので気をつけたい。例えば月齢について。「何か月?」と聞かれると、発育が遅いと指摘されているように感じてしまうこともあるという。

自分の気持ちや考えを誰かに話すことで、不安が和らぐこともある。「親が出産や子育てについて話をしたがっているときは、じっくりと聞いてあげてほしい」と橋本さんは話している。

取材を終えて

4年前、友人の子が予定より2か月早く1300グラム台で生まれたと連絡をもらった。お祝いのメッセージを送ったが、その後様子を聞いていいものかどうか逡巡しゅんじゅんした。そのときの経験が今回の取材の出発点だ。友人夫婦を含めて多くの方に話を伺い、赤ちゃんが予定より早く、小さく生まれることは誰にでも起こり得ることだと分かった。孤独感や不安にさいなまれるお母さん、お父さんが少しでも減るように、多くの人が現状を知り、支援を充実させていく必要があると思った。

(読売新聞生活部 木引美穂)

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