問診票
〈1〉天候が変わる時に体調が悪い
〈2〉雨が降る前や天候が変わる前に、何となく予測ができる
〈3〉 耳鳴りやめまいが起こりやすい
〈4〉肩こり、首こりがある。首の外傷歴がある
〈5〉猫背、そり腰がある。姿勢が悪い
〈6〉乗り物酔いしやすい
〈7〉PC作業やスマートフォンの使用時間が、1日平均4時間以上
〈8〉ストレッチや柔軟体操をすることが少ない
〈9〉歯の食いしばりや歯ぎしり、歯の治療が多い。がく関節症と診断されたことがある
〈10〉エアコンが苦手である
〈11〉日常的にストレスを感じている(特に精神面で)
雨が降りそうになると、急に頭がズキズキと痛くなったり、体がだるくて起き上がれなくなったりすることはありませんか。それらは、「気象病」や「天気病」と呼ばれる症状かもしれません。気象病は天気の変化によって起こり、厚い雲が垂れ込める梅雨の時期や、特に台風の前などに症状が出やすいと言われます。どんな対策をとるべきか、専門の「気象病・天気病外来」のある「せたがや内科・神経内科クリニック」(東京)の久手堅司院長に聞きました。
女性に多い気象病、生活に影響するおそれも
気象病は正式な病名ではなく、主に気圧の変化によって、頭痛やめまい、全身のけんたい感などの体調不良が起きることを指します。「目に見える症状ではないため軽く考えがちですが、日常生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります」と、久手堅院長は注意を促します。
「雨の日の朝なんかは、体がだるくて布団から出られないんです」。20代の会社員女性が、久手堅院長のもとを訪れ、そう訴えました。この女性は不調のたびに、耳鼻科、内科、心療内科などを受診してきましたが、症状はいっこうに改善しませんでした。会社を休みがちになり、結局、退職しました。その後も、雨が降る前になると激しい頭痛や倦怠感に悩まされ、再就職したものの、また休職をすることになったといいます。
気象病は、女性に多いのも特徴の一つです。ロート製薬(大阪)とウェザーニューズ(千葉)が2020年に行った調査によると、男女別の内訳を見ると、天気の変化による不調がある人は、男性が47%だったのに対し、女性は78%に上りました。久手堅院長の「気象病・天気病外来」に訪れる患者も、女性が7割ほどを占めているそう。症状を訴えるのは、特に、デスクワークの職種に目立ちますが、美容師や客室乗務員の仕事の女性も多いといいます。
その頭痛、気象病かも…? 問診票でチェック
久手堅院長が実際に使っている問診票で、気象病かどうかチェックしてみましょう。
〈1〉〈2〉のどちらかに当てはまる人は、気象病の可能性が高く、〈3〉以下は、三つ以上当てはまる人は、「気象病予備軍」です。
気圧の変化で体に不調が起こるワケ
気圧が変化すると、なぜ体調不良を感じるのでしょうか。
人間の体は、耳の奥にある「内耳」という場所が気圧を感じています。気圧が変動すると、内耳から脳に信号が送られ、自律神経を介して、体を気圧の変化に順応させようとします。そこで乱れが生じて、不調が出てしまうのです。
「デスクワークで座りっぱなしだったり、スマホを長時間見ていたりして骨格がゆがんでいると、頭部と内耳の位置が安定しにくくなるため、もともと自律神経が乱れている傾向にあります。そこへ気圧の変化がさらに加わることで、気象病の症状が起こるのでしょう」と久手堅院長は説明します。
特に女性は、筋肉量が少ないため気圧変化の影響を受けやすく、また、生理周期との関係もあって、男性より自律神経が乱れやすい傾向があるといいます。
顔まわりのマッサージで、つらさを軽減
久手堅院長に、気象病の症状を和らげる五つの対処法を教えてもらいました。
〈1〉 こめかみを押す
〈2〉 ほお骨の下のくぼみを押す
〈3〉 耳の下のくぼみを指で持ち上げる

〈4〉 耳たぶを横に引っ張り、上下に回す
〈5〉 耳の縁の真ん中あたりをつまむ

不調を感じたら、このマッサージをそれぞれ20~30秒行います。気持ち良いと感じる程度にとどめ、強く押し過ぎないようにしましょう。いずれも、内耳の血流を促したり、歯を食いしばって緊張しているあごの筋肉をほぐしたりするのに効果的で、自律神経を整える効果が期待できます。
首にタオルをかけ、両端を持ってぐっと前に引っ張ったまま、首をゆっくり上下に動かす方法もおすすめ。正しい姿勢でデスクワークをして、骨格がゆがまないようにすることが重要です。両足首と両膝をそれぞれ90度に曲げて座れる高さの椅子に、両膝の間を拳1個分あけて、深く腰掛けましょう。
マッサージのほかに、体内の水分の滞りを改善する漢方薬「五苓散」は、内耳の周りの水分バランスを整えてくれるほか、酔い止め薬にも気象病の症状に効果があるといいます。
久手堅院長によると、曇天が続く梅雨や気圧が急激に変わる台風シーズンには、症状を訴える人が急増するとのこと。あらかじめ対策を知っておくことで、つらい季節を乗り切りたいものです。
(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)