いよいよ夏本番。新型コロナの感染予防で今年の夏はどこに行くにも、マスクが手放せません。熱中症にならないためにも、こまめな水分補給を心がけたいものです。ところが、読売新聞の掲示板「発言小町」には「生水が苦手」という悩みが寄せられています。カフェインを多く含む飲み物には利尿作用があり、水分補給にならないと家族に言われたそうですが、本当なのでしょうか。この時期、水分補給のために取るべき飲み物について、専門家に聞きました。
紅茶やコーヒー、スムージー…「良い水分補給」は?
トピ主の「ナナミ」さんは、昔から“生水”が苦手。麦茶は青臭く感じてしまい、「炭酸などは一口飲むともう飲めません」と言います。この時期、水分補給をしなくてはと、100袋で400円程度の紅茶のティーバッグで、熱々の紅茶を1日に5杯程度飲む生活をしていますが、娘から「紅茶は水分補給にはならない」と言われてしまったそうです。
それに加えて、「ナナミ」さんは1年前から胃潰瘍の治療中。医師から紅茶もコーヒーも控えるように言われています。「紅茶に代わるものが思い当たりません。皆様はどのように『良い水分補給』をされているのか、ぜひご教示ください」と発言小町で問いかけました。
この投稿に対し、90件近くの反響(レス)がありました。「ナナミ」さんと同じように、水が苦手な人もいるようです。
「私も、水分全般の摂取が苦手。色々試してたどり着いたのは、細いストローを挿して飲むと知らないうちに吸い続けて、たくさん水分が取れるという結論です」(「どんたく」さん)
このほか、様々なアイデアが寄せられました。
「ゼリーや寒天などはどうですか? 経口補水液もパウチタイプのゼリーの物がありますし、食欲の落ちたお年寄り向けにトマトなどで作ったゼリーもあります」(「ワーママ」さん)
「フルーツのフレーバー付きのお酢を水で希釈して飲んだり、果汁入りの蜂蜜を水で薄めて飲んだり。色もキレイで気分も上がります」(「なな」さん)
「水と言わず食べ物は温度によって全く味が違う。氷でキンキンに冷やした水や熱々の水や色々な温度の水を試してみればいかがでしょう」(「ss」さん)
「1日に水2リットル以上」は必須?
「良い水分補給」とは、どんなものなのでしょうか。循環器内科医で、日本内科学会認定総合内科専門医でもある秋津医院(東京・品川区)の秋津壽男院長に聞きました。
「『水は1日に2リットル以上飲んだ方が良い』と言われることが多いですが、私たちは3回の食事の中で、800~1200ミリ・リットルの水分を摂取すると考えられます。足りない部分は、食後にお茶を飲むなどして補えば、そんなに脱水状態を心配することはありません。もちろん、夏のこの時期、個人差がありますから、汗をよくかく人や運動をする人などは、これに加えてなるべく多くの水分をこまめに取るに越したことはないです」と秋津院長。

コーヒーや紅茶、緑茶など、カフェインが多く含まれる飲料については、利尿作用があることが知られており、その意味で、「水分補給にならない」と結論づける人もいます。しかし、秋津院長は「個人の体質によってカフェインの感受性は違います。少しのカフェインでも利尿作用が強く出る人と、それほど出ない人がいます」と話します。
例えば、カフェでカフェイン入り飲料を飲み、「もうそろそろ出よう」と立ち上がった時に尿意を催す人は、カフェインが効きやすい体質とのこと。「個人の体質にもよりますが、カフェインを含む飲料でも、全く水分をとらないよりは飲んだ方がいいですね。ただし、胃腸が弱い人にとって、コーヒーは刺激物になるので、水や牛乳で、子どもが飲めるくらいまで薄めましょう」と勧めます。麦茶やほうじ茶、玄米茶は、カフェインが少なく、ウーロン茶にはカフェインが多く含まれているそうです。
水が苦手でも「昆布水」でおいしく水分補給
レモンスカッシュやジュース、フレーバーシロップ入りのミネラルウォーター……投稿には様々なアイデアが寄せられています。秋津院長は「水分補給を目的にするなら、“ノンカロリー・ノンアルコール”のものを選ぶべき。例えば、果汁100%のジュース一杯には、ミカンおよそ8個分の糖分が含まれています。スポーツ飲料にも糖分が含まれているため、飲み過ぎると、糖分過多になる恐れがあります」と強調します。
手軽に、おいしく水分補給できる方法として、秋津院長がオススメするのは「昆布水」です。市販の出汁用昆布1枚と500ミリリットル程度の水を水筒に入れ、冷蔵庫などで一晩寝かせるだけ。外出時に持ち運ぶこともできます。「昆布から食物繊維が溶け出しているので、胃腸を整える作用もあります。塩分は加えないでください。出汁用パックで煮出したものでもかまいません」と話します。
「生水が苦手」と言っていたトピ主の「ナナミ」さんも、その後、友人のオフィスでウォーターサーバーの水をごちそうになったところ、ほど良い冷たさがとてもおいしく感じられたそうです。この夏は、自宅でも浄水器の水に氷を入れて飲んでみたいと言います。温度やシチュエーションによって微妙に口当たりの変わる水。無理なく水分補給し、猛暑を乗り切りましょう。
(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)
【紹介したトピ】
水分補給(「水」が苦手です)