◆春野菜のパスタ
【材料・2人分】
グリーンピース 20本分(50~60g)
クレソン 1束(50~60g)
水 1000ml
塩 10g
スパゲティ 200g
オリーブ油 大さじ2~3
チーズ 適宜
ブラックペッパー 少々
【作り方】
クレソンは茎の部分を粗みじん切りし、葉の部分は1センチ幅に切って別々に置いておく。鍋に水と塩を入れて沸騰させ、スパゲティをゆでる(ゆで時間は麺の太さによる)。ゆで上がり2分前にグリーンピースを加え、1分前にクレソンの茎の部分を加える。ゆで時間が終了したら火を止めてクレソンの葉を加えてざっと混ぜ、ざるでこして鍋に戻す。オリーブ油を絡め合わせ、器に盛ってチーズとブラックペッパーをふる。
世界は広いって人は言うけどね、確かにその通りだと思うよ。その裏にはきっと「もっと世界を知り、世界を体験したほうがいい」というメッセージが込められているんだろう。でもさ、もしかしたら「世界が狭いほうが幸せだ」ってケースもあるのかもしれない。昨日、パスタの麺をゆでながら、そう思ったんだ。
パスタの麺ってのは、お気に入りの物が見つかると離れられなくなるんだよね。僕はセタロパスタのリングエッティーネっていうのを気に入っていてね。近所の生ハム屋さんで買ったのがキッカケ。ひとまず、シンプルにアーリオ・オーリオにしてみたんだ。オリーブ油に唐辛子とにんにくのフレーバーがついただけで、抜群にうまかった。あれ? なんだこれ!? と思わず小さな声を上げてしまいそうになったんだ。あのときから僕はパスタの麺はこれに決めた。と同時にすごいことをひらめいてしまったんだ!
パスタをゆでるときは「たっぷりの湯で」とよく言われている。僕も今までそうやってきた。でも、そうとも限らないことを最近知った。フランス人料理研究家の書いた調理科学に関する本を読んでいたら、「パスタをたっぷりの湯でゆでても何の意味もない」と書いてある。簡単に言えば、少なめの湯でゆでた方が麺の周辺のでんぷん質が逃げにくいから、ソースが絡みやすくなるという。それに納得した僕は、これまでの半分の量の水を使うことにした。塩分濃度は1%ね。
今回の麺のゆで時間はたったの5~6分。この間に急いでしておきたいことがある。グリーンピースの豆をさやから取り出し、クレソンをみじん切りにするんだ。ちょっとせわしないかもしれないけれどね、テキパキと進めたい。仮にパスタを6分ゆでるとして、グリーンピースの下処理に2分、クレソンを切るのに1分をかけたとしよう。これで3分。残りは3分あるね。1分間でオリーブ油とチーズ、ブラックペッパーを準備する。
ゆで上がりまで残り2分。ここで、麺をゆでている鍋にグリーンピースを投入するんだ。なぜなら、グリーンピースの塩ゆでにちょうどいいのが2分程度だから。次に残り1分になったところでクレソンの茎の部分を投入。6分経過して火を止めたらクレソンの葉の部分を加えてざっと混ぜ合わせ、そのままざるに上げて水気を切り、ゆでていた鍋に戻す。すかさずオリーブ油を絡め合わせて、そのまま器に盛り付けよう。ふう、もうできた。
さて、僕がひらめいた“すごいこと”って何だかわかったかなぁ? この作り方でパスタを作ると、鍋をひとつしか使わないってこと。洗い物が減って楽でしょう? さらに、「パスタのゆで時間=調理時間」になるのもすごい。パスタとして食べたい素材を準備して、それらに火が通るまでの時間から逆算して鍋に投入すればいいんだから。そして最大の発見は、この手法で次々と新しいパスタのメニューが量産できるってこと。春野菜でやるなら、他に菜の花でもアスパラガスでもいい。何をどのサイズに切ったら何分煮るべきかを考えるだけ。毎日パスタだって飽きやしない。すごくない? すごいよね!
器に盛ったパスタにチーズを削ってふりかけ、ブラックペッパーを粗びきにしてふりかける。春野菜やオリーブ油のやわらかい風味にチーズのコクが加わり、ペッパーの刺激が全体の味わいを引き立ててくれる。「いやぁ、俺って天才なのかもな」なんて思いながらモグモグとパスタを食べたんだ。ステキな時間だった。
はじめの話に戻るけどね、僕がいい気分に浸れたのは、きっと僕の世界が狭いからだ。だって、例えばここに誰かがやってきてこんなふうに言ったとする。「そのやり方、自分が発見しただなんて勘違いだよ。18世紀半ばからナポリの家庭ではそうやっているんだから」。それが仮に事実だとしても興ざめだよね。こんなときだけは井の中のかわずでいい。僕にとっての幸せは、僕が発見したこの素晴らしい手法について自画自賛しながらパスタライフを送ることさ。だからね、この話はキミと僕だけの秘密にしておこう。
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