ニュージーランドの首都ウエリントン。日本ではやや印象が薄い街かもしれませんが、ここは世界中のツーリストが憧れる都市のひとつです。イギリスの放送局「BBC」が発表した 「世界で最もホットな都市ランキング」で1位に輝き、著名な旅行ガイドブックの「ロンリープラネット」では「世界で最もクールで小さな首都」と称されるなど、常に注目されています。私たち女性にとって楽しみなのは、ヘルシーで環境に優しいオーガニックフードやワイン、ステキなカフェの数々。小さいけれど熱い都市ウエリントンは居心地がよくて、何日でも滞在したくなります。
個性派店がそろう通りで、幸せな食べ歩き
ウエリントンは、北島と南島に分かれるニュージーランドの北島南部に位置しています。人口約50万人と、首都にしては小規模ですが、コンパクトな街は機能的で治安も良く、雰囲気も洗練されています。

政府や省庁のお膝元ならではの落ち着いたたたずまいがありながら、街のすぐそばに美しい自然やワインの産地があるのも、ウエリントンの特徴です。さらに、ニュージーランドらしく、オーガニックの食材やコスメが充実しているのも大きな魅力。私がさらに魅了されたのは、「エコ」や「オーガニック」のその一歩先を行く考え方が、人々の間に根付いていることでした。
ウエリントンを歩いていると、「サスティナブル」「エシカル」という言葉をよく耳にします。「サスティナブル(持続可能な)=自然環境の維持に配慮した行動」「エシカル(倫理的な)=自分以外の人や社会や環境について考え、未来に向けて行う行動」を指します。
言葉だけを聞くとなんだか難しく感じてしまいますが、一杯のコーヒーを頼むとき、「豆はどこで、誰がどのようにして育てたのかな?」と考え、より環境に配慮した農場の豆を選んだりするのも、サスティナブルでエシカルな考え方。ウエリントンには、そうした思考が人々の間に浸透しています。

街の中心部のハンナーズレーンウェイで、そのことを強く実感しました。一帯には、エシカルトレード(企業が、自分たちの販売する商品を作る人々の労働環境や地球に責任を持つこと)に取り組むチョコレートショップやパティスリーが点在しています。
「Wellington Chocolate Factory」は、オーガニックでエシカルトレードの豆から作ったチョコレートがそろうショップ。ソロモン諸島やペルーなど、世界のあらゆるところから極上のカカオを探し、チョコレートに仕上げています。

ビーン・トゥ・バー(カカオ豆がチョコレートになるまでの工程を一貫して行う製造方法)で丁寧に作られたチョコレートバーは、工場で大量生産されるものとは違った温かみがあって、コーヒーとともに、じっくりいただきたくなるお味。なかでも、ソロモン諸島産カカオ85%のチョコレートは、ほんのりとウイスキーやクルミの風味を感じて、甘いものが苦手な私もおいしく味わいました。

商品ごとに異なるパッケージは、地元のアーティストがデザインしているそう。カカオの産地をほうふつとさせる絵柄がアーティスティックです。友人たちへのお土産にしたところ、とても好評でした。

「Lashings」はブラウニー専門店。ロンドンのミシュラン星つきのダイニングで働いていたジャッキーさんが、シングルオリジン(ひとつの原産国、生産地のカカオだけを使う製法)のチョコレートを使ったブラウニーを手作りしています。

太陽光がたっぷりと差し込むカフェスペースは、とても明るい雰囲気。アイスクリームやフレークをトッピングしたブラウニーはボリュームがあり、スイーツ好きなら立派なランチにもなりそうです。

路地裏の半地下にひっそりとある「Fix and Fogg」は、ピーナツバターの名店です。オーガニックの材料を使ったピーナツバターは何種類ものフレーバーがあり、味を比べてから購入することができます。瓶入りの商品はお土産としても人気ですが、私はピーナツバターのトーストをテイクアウトして、その場でパクッといただきました。
砂糖や添加物を入れないシンプルなピーナツバターにラズベリージャムをトッピング。口にした瞬間、濃厚で豊かな風味が口いっぱいに広がり、「ピーナツバターは甘いジャンクフード」という考えが覆されました。
極上のコーヒーで「エシカル」を心地よく実感する
ハンナーズレーンウェイと同様に個性的なショップが集うのが、キューバストリート。古着屋やレコードショップ、ライブハウスなどが点在しています。
朝食に訪れたのは、カフェレストランの「Loretta」。フリーレンジ(放牧)の豚肉やフリーレンジ・エッグ(放し飼いで育てた鶏の卵)、ビタミンたっぷりのアボカドをのせたトーストをいただきました。「朝からボリュームがありすぎるかな?」と思いきや、濃厚な卵がパンやアボカドに絡むととてもおいしくて、しっかりと完食。

ウエリントンは、カフェの街でもあります。角を曲がるたびにカフェがあるといっても過言ではなく、どの店も朝からにぎわっています。その多くが、日本でもよく見かける世界的チェーンではなく、こだわりを貫く個性派店。だから、ウエリントンでは、前日にどんなにワインを飲んでも、コーヒーを味わうために早起きしたくなります。
「Flight Coffee Hangar」は、世界大会にも出品する実力派のコーヒー焙煎所「Flight Coffee」の旗艦店。各地の契約農家から仕入れたコーヒー豆を焙煎し、エスプレッソのほか、ハンドドリップやエアロプレスなど、さまざまな方法で提供しています。

ニュージーランドでコーヒーといえば、エスプレッソのほか、エスプレッソにお湯を加えて飲みやすくしたロングブラック、エスプレッソに泡立てたミルクを注いだフラットホワイトなどが定番です。飲み方に迷ったら、ぜひ、テイスティングメニューを。同じ豆で3種類の味わい方を楽しんだり、豆の異なるフラットホワイトを3種類飲み比べたりするメニューは、奥深いコーヒーの世界を味わわせてくれました。
こちらでは、理想の豆を手に入れるべく、栽培農家と独自のプロジェクトを運営しています。ファッションではなく、真摯にこうした取り組みをしているのがステキです。私が飲んだ一杯のコーヒーが作られる環境を思いながら、コーヒーを味わいました。
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