シンガー・ソングライターのBaby Kiy(ベイビー・キイ)さんが、10月30日発売のファーストアルバム「All About You」でメジャーデビューします。切ない歌詞や飾らないライフスタイルが若い女性の支持を集め、インスタグラム(インスタ)のフォロワーは30万人を突破しました。「SNS世代のアイコン」として今注目のアーティストに、アルバムに込めた思いや今後の抱負などを聞きました。
聴けば、大切な「誰か」が思い浮かぶ
――「All About You」は、女性の心のときめきや切なさがギュッと詰まった一枚です。コンセプトを教えてください。
アルバムに入っている楽曲は、全部「誰か」を思って作りました。それは、恋人だったり友達だったり、家族だったり――アルバムを聴いた人たちが、それぞれにとっての大切な「誰か」を思い浮かべられたらいいなあって。だから実は、歌詞も恋愛だけではないんです。よーく聴いてみると「あれ……? 女友達に歌っている!」と気づく曲もあると思います。
――アルバムの中で、特に思い入れのある曲はありますか。
「Hummingbird~キセツハズレノハナビ~」は、今回のアルバムのために制作した曲です。秋にリリースされるから、肌寒くなった時に聴いてほしいと思って作った楽曲。「せつなソング」ですね。大人になった人が、5年前、10年前を思い出して「あー、あんな夏もあったなあ。あんな恋もしたなあ」って、ノスタルジックに浸る曲なの。

――恋する人への思いを赤裸々につづった、共感性の強い歌詞も魅力ですね。実体験を基に書いているのですか。
もちろん実体験もあるし、自分が読んだ本や映画からインスピレーションを得ることもあります。でも、必ずどこかに自分の気持ちや経験を盛り込んで書いているから、たくさんの女の子が共感してくれたらいいなあと思います。
ライフスタイルはあえて載せない
――2010年から始めたインスタのフォロワーは30万人を超えました。投稿のポイントはありますか。
なんにも意識していないです。元々、旅行とか写真を撮るのが好きで始めたけど、もう10年近く続けているから、ちょっとマンネリしちゃっているかな(笑)。この間は、2週間くらい更新期間を空けちゃいました。モチベーションに波があるのかも。ライブやCDなどの情報を発信できる場でもあるし、ファンのみんなとのコミュニケーションの場としても利用しています。
ミュージシャンの裏側って結構、地味なんですよ。ずっと机に向かって歌詞を書いたり、ずっとレコーディングスタジオにこもったり。だから、写真を撮ることもインスタにアップすることもないと思っていました。でも、そういう側面って、フォロワーさんにとっては未知の世界。CDがリリースされるまでの作業などを、もっと紹介していきたいなあと考えるようになりました。
――Kiyさんのライフスタイルを知りたいファンの方にとっては、少し残念かもしれませんね。
きっとファンの人が欲しい情報ではないのでしょうね。着ている服や使っている香水などは、ファンに聞かれたときには答えています。でも、ミュージシャンには、見えない部分も残した方がいいのかなあと思ったりもします。
まずはインスタグラムの世界から一歩進んで、ミュージシャンとして自分の作品を聴いてもらえるようになりたいですね。
――抜群のスタイルも、ファンの憧れです。スタイル維持の秘けつは?
何もしていないです。夜の12時過ぎにご飯を食べることもあるし、炭水化物も大好き。以前は、週に3回くらいトレーニングして、毎日スクワットもしていたので、プリッと上向きのお尻だったんですよ。今は、トレーニングする時間もなくて……。もう「お尻終了」のお知らせです。冬には落ち着くはずだから、「お尻復活」のお知らせができるよう、また頑張ります(笑)。
ずっと身近だった「海」と「音楽」
――Kiyさんの曲は、浜辺のさざなみをイメージさせるような曲調が印象的です。ご自身で“ビーチミュージック”と表現することもあるようですが、興味を持ったきっかけは?
ジャンルにこだわりはありません。アルバムにも、カントリー調からJ-POP、レゲエまであります。ありがたいことに、0歳から毎年家族にハワイへ連れていってもらっていたので、海はすごく身近な存在なんです。海の近くにいたいと思って、2、3年、海沿いの街に住んだこともあるくらい。音楽も昔から家にあるものでした。母が歌唱指導をしているので、ちっちゃい頃から母親の仕事場についていったり、学校帰りにレッスンの様子をのぞきに行ったりしていました。
――アコースティックギターは、小さい頃から弾いていたのですか。
いや、全然! 中学校の時に安いギターを買ったんですけど、1、2曲弾いただけでやめちゃって。歌手になりたいと思った時に、一から音楽の勉強をしたことないなあって気づき、専門学校に通いました。ギターもそこで練習しました。でも私、100回練習するより、1回ライブした方がうまくなるタイプみたいです(笑)。バックバンドのギタリストに教えてもらったりして、実践して学ぶことが多いんですよ。
――すごいですね。あまりライブで緊張しないタイプですか。
緊張します。ライブに出るまでは、めっちゃ緊張している。弾いている時間が一番緊張しないかもしれません。弾き終わった瞬間「やばい、なにしゃべろう……」って焦りますね。MCとか、なるべく一人しゃべりはしたくないもん。言葉のキャッチボールはできる方だと思うけど、ラジオ番組とか、MCのように一人でしゃべるのが苦手です。
――ミュージシャンになりたいと思ったのは、いつ頃?
明確に決めたことはないなあ。今のように「何して生きよう」とか考えていませんでした。若い時って、無敵じゃないですか。今思えば、昔の私も、何をしても生きられる自信があったのかも(笑)。でも今、すごく頑張りたいと思っています。ミュージシャンって本当にすごい仕事! 最近、静岡でのライブで、5000人のお客さんを前にした時にも、「この場所からこの景色を見られるって、他の仕事じゃきっと味わえないな」と感動しました。
こんなに毎日、魂から絞り出して、心の中をえぐり出して歌詞を書いていても、うまくいかないこともある。その分、お客さんの前で歌えるのがすごく楽しいです。
――今後、目指すことを教えてください。
女性として輝き続けたい。子どもが生まれて母になっても、パワフルでキラキラしている女性でいたいと、いつもいろんな人に話しています。音楽っていうのは、Baby Kiyを表現する一つのツール。インスタや、過去に発売したライフスタイル本もそう。そういうバックグラウンドがあるからこそ、私の曲ができていると思っています。そういうものが丸ごと全部、愛され続ける人になりたいなあ。
(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)