モスクワを旅するなら、スーツケースのスペースには余裕をもって行きたいもの。上質な蜂蜜にチョコレートにオーガニックコスメ……と、女性の心を奪うものが豊富にあるからです。ロシアのお土産は、マトリョーシカだけにあらず。日本では物欲があまり湧かない私が、思わず買い物に夢中になってしまいました。
陳列にセンスを感じるすてきな市場や百貨店
モスクワで、いや、ロシアで一番有名なお店といえば、「グム百貨店」でしょう。建物が完成したのは、皇帝が絶大な権力をふるっていた帝政ロシア時代の1893年。1921年、レーニンにより国営百貨店となった後、スターリンの独裁体制下での閉鎖を経て、東西冷戦、ペレストロイカ、ソ連崩壊と、激動の歴史を見守り続けてきた時代の生き証人です。

現在は、市民や観光客に愛されるショッピングスポットとなっているこの百貨店。モスクワの中心地、赤の広場に面して立つ重厚な石造りの建物は、まるでその存在を誇るかのように堂々としています。

ロシア随一の百貨店と聞いてワクワクしながら館内に入ると、そこには期待を裏切らない華やかな空間が。構造は吹き抜け3階建て、左右にはブティックがずらりと並び、両側をつなぐ橋が随所にかけられています。ガラスの天井から自然光が優しく降り注ぐ館内は開放的で居心地がよく、シックな階段の手すりや壁の装飾にも、歴史の物語を感じます。

見学気分で入ってみたのに、思いのほか時間を費やしてしまったのが、地下の食品街でした。日本でいえば「デパ地下」に相当するエリアですが、重厚な雰囲気のなかにあらゆる食品が上品にディスプレーされていて、眺めているだけでも楽しくなるのです。ソ連時代の食品売り場を再現したという(日本の昭和ブームみたいなもの?)、レトロな雰囲気にもひかれます。

モスクワには、こんな豪華な百貨店もあれば、洗練された市場もあります。訪ねたのは「ダニロフスキー市場」。1960年代から続く市場ですが、近年リニューアルされ、カフェやイートインスペース、各国料理を提供するバーなどが集結する人気のスポットとなりました。ここは食材の並べ方やイートインのあしらいもなかなか洗練されていて、絵になります。

もちろん、観光スポットではなく本物の市場なので、食材は豊富。蜂蜜にソーセージにトヴァローグ(カッテージチーズ)、ドライフルーツにピクルス、パン……と、おつまみになりそうなものがたくさんあって、思わず「今晩はここで買って部屋飲みしようかなあ」と思うほどでした。

ここは買い物をしなくても、ぶらりと一周してみるだけでも楽しい場所です。海兵隊のようなマリンルックの魚屋さんや、メイド風のワンピースを着た清掃スタッフがいて、まるでテーマパークのよう。屋根があるので天気を気にせず歩けるし、売り場もトイレもとても清潔(それどころか、おしゃれ)です。
極寒の地で育った野生植物がオーガニックコスメに
モスクワ行きが決まったときから「たくさん買わなくちゃ」と思っていたのが蜂蜜。昨年、極東の街ウラジオストクを旅した際に、ロシアの蜂蜜の豊富さとおいしさに目覚め、今回もいろいろ試してみたいと思っていたのです。
冬が長いロシアでは、風邪を予防するために蜂蜜を料理に多用する習慣があり、日本では見かけないたくさんの蜂蜜が容易に手に入ります。なかでもアムール川流域にしかないロシア産菩提樹の蜂蜜を結晶化させたホワイトハニーはコクが深くて、おいしい。ハード系のパン、とくに黒パンに合います。

お土産は、食材だけではありません。購入して愛用しているのが、ロシア産のオーガニックコスメブランドの「ナチュラシベリカ」。冬はマイナス50℃以下にもなる極寒の地、シベリアで育った野生植物の成分を使用した、オーガニックコスメブランドです。
コンセプトもパッケージもすてきですが、ロシアで購入すると、いわゆる「プチプラ」価格。中心部にあるショップでは、ゲストにハーブティーもふるまってくれ、ゆっくりと商品を試すことができます。コスメのパッケージや説明書きの多くはロシア語ですが、英語が話せるスタッフとなんとかコミュニケーションをとりながら、ハンドクリームやボディーバター、ボディースクラブ、リップクリームなどを購入しました。

私は夏でも肌が乾燥するのですが、ナチュラシベリカのコスメはどれも表面はベタベタせず、肌の内側からしっとりと潤うので、気に入っています。外資系化粧品独特の強い香りもなく、とてもナチュラル。乾燥肌でオーガニックコスメ好きの友人にもプレゼントしたところ、とても喜んでもらえました。
ロシアの日用品がこれほど楽しく役立つとは。次にモスクワに行くときは、大きめのスーツケースで行こうと思います。
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