何度も旅をしているのに、飽きることのないマカオ。旅の目的といえば、ノスタルジックな街歩きや、ほかの都市では食べられない独特のグルメ、リーズナブルなポルトガルワインですが、最近は新しい楽しみも増えています。それは、アート。美術館だけでなく、巨大ホテルのパブリックスペースや街中など、至るところで作品を見ることができるのです。
世界最長の海上橋を渡って、マカオへ
旧宗主国のポルトガルから中国に返還されてから20年を迎えるマカオ。以前に比べると、アクセスが飛躍的によくなり、気軽に行けるようになりました。成田国際空港、関西国際空港、福岡空港からの直行便に加え、香港国際空港経由でフェリーを利用するなど、日本からマカオへのアクセス方法はいくつかあります。

今回の旅では、2018年10月に開通した「港珠澳大橋」を使って、マカオ入りすることにしました。香港、マカオ、中国本土の珠海を結ぶこの橋の全長は約55キロメートル。東京と茅ケ崎(神奈川県)との距離とほぼ同じで、海上橋としては世界最長を誇ります。

港珠澳大橋の総工費は1000億元(1兆6000億円)以上。ここ数年の間に、着々と工事が進む様子をマカオへ向かうフェリーの窓から見たことはありますが、完成した橋を渡ると、あらためてスケールの大きさに驚かされます。さすが、世界が注目する珠江デルタ(中国・広州、香港、マカオの三都市を中心とした地域および経済圏)。

香港とマカオの間は、シャトルバスを利用してわずか約30~40分。シャトルバスは5~30分おきに運行され、橋は専用のナンバーを持つ車しか走ることができないため、渋滞もなく、時間のロスはほとんど気になりません。地下鉄に乗る感覚で、香港とマカオを移動することができます。料金は日本円で1000円ほどと、フェリーの約4分の1。この橋が開通したことで、マカオへの移動時間が、気持ち的にも体力的にも、ずいぶんと楽になりました。

橋を渡るシャトルバスは24時間運行しています。そして何より、マカオは路線バスが24時間走る便利な街。早朝の帰国はとてもスムーズでラクチンでした。同様に、深夜もアクセスに不便はありません。仕事を終えて深夜に香港国際空港に到着し、はるばるタクシーで市内まで行き、さらにフェリーに乗り換えてマカオへ向かっていた頃が、遠い昔のことのようです。
探検気分で探したい路地裏のウォールアート
そんなマカオは、昔からアート系のイベントが盛んな街。日本ではあまり知られていませんが、毎年恒例の芸術祭も開催され、世界中からアーティストが集っています。
目下、開催されているのが「アート・マカオ」と題する長期的で大規模なイベント(2019年10月まで)。ミュージアムやホテルでは、世界中から集結した貴重なコレクションが展示されています。それらも楽しみですが、まずは街中を散策。日常の景色の中にも、アートの息吹は感じられます。
観光の中心地、セナド広場近くの路地で見つけたのは、頭上を覆いつくす傘でした。ポルトガルのアゲダで夏に開催される「アンブレラ・スカイ・プロジェクト(傘祭り)」を彷彿とさせる光景です。ただし、ポルトガルのように洋傘ではなく、中国傘というのがユニーク。決して観光スポットではない日常の中にこんな風景があるのも、面白いなあと思います。

マカオの半島部から橋を渡ったタイパにある官也街では、ウォールアートをいくつも見つけました。「フードストリート」とも呼ばれるこの通りは、昔から観光スポットとして知られていますが、ここ数年はフォトジェニックなお店が増えています。
マカオを散策していると、路地裏にふと迷い込んだときにアートを見つけることも。写真を撮る人で行列ができるほどのインスタスポットではありませんが、だからこそ、見つけたときはうれしくなります。
開発が進むマカオでは、古い建物はどんどん壊され、新しいものへと変わりつつあります。いつ消えてしまうともしれないアートスポットを探してみるのも、今のマカオを旅する楽しみかもしれません。
【オススメの関連記事】
リフレッシュ! 極上旅