◆ビーフストロガノフ
【材料・4人分】
オリーブ油 大さじ2
にんにく(細かいみじん切り) 1片
玉ねぎ(くし形切り) 大1個 300g
塩 小さじ1
パプリカ(すりおろす) 大1個
セロリ(すりおろす) 5センチ トマトピューレ 大さじ2
水 200ml
バター 20g
マッシュルーム(5ミリ幅に切る) 大5個
牛肩ロース肉(スライス) 250g
白ワイン 100ml
粒マスタード(あれば) 小さじ2
ローリエ(あれば) 1枚
生クリーム 200ml
【作り方】
鍋に油を熱し、にんにくをきつね色になるまで炒め、玉ねぎと塩を加えてふたをし、中火で蒸し焼きにする。しんなりしたらふたを開けて強火にして表面をこんがりさせるように炒める。すり下ろしたパプリカ、セロリを加えて水分が飛ぶまで炒め、トマトピューレを混ぜ合わせ、水を注いで煮立て、10分ほど弱火で煮込む。
フライパンにバターを熱し、マッシュルームと牛肉を加えて炒め、白ワインを注いで煮立てる。鍋に加えて混ぜ合わせ、あれば粒マスタードとローリエを加えて混ぜ、生クリームを注いで5分ほど中火で煮る。
ビーフシチューとビーフストロガノフの違いを僕は知らない。
ビーフシチューとビーフカレーの違いなら説明できるというのに……。
どちらも牛肉の煮込みであることは、間違いないだろう。ビーフストロガノフがロシア料理だということは聞いたことがある。が、「どこからどこまでがロシアなの?」と聞かれたら答える自信はないし、「ロシアと隣接するウクライナやベラルーシにビーフストロガノフは存在しないんですか?」と聞かれたら、口ごもってしまう。すみません、ロシア料理という噂を聞いただけで、デマなのかも。ロシアが今のロシアになる前からきっとあの料理はあるんだとは思うんだけれど……、ええ、と……。
牛肉と玉ねぎとマッシュルームで何か作ろう、と思ったから単純にビーフシチューにしようと思ったのだ。香味野菜を活かせばおいしくなるはず。みじん切りしたにんにくを炒め、玉ねぎを加えて炒め、さらにセロリのすりおろしを加えて炒める。にんじんのみじん切りなんかを加えてもいいのだけれど、仕上がりににんじんのつぶつぶが残るのは避けたい。かといってすりおろしても意外とざらざらとした食感が残ってしまう。
別の香味野菜を使おうとスーパーでウロウロしていたら、真っ赤なやつが目に留まった。パプリカである。おっ、これはいい。手に取ろうとしてはたと考えた。
パプリカは、香味野菜なんだろうか?
きっと、違う。香味はあまり感じないから。でも、乾燥させたパウダーからは、強く香ばしい香りを感じられるし。ええい! この際、香味野菜じゃなくてもいいや。セロリと同様、すりおろして炒めることにした。パプリカはまもなくフライパンの底でチリチリと焼きつけられ、香ばしさを放ってくる。おお、やはり、パプリカは香味野菜なんじゃないのか……?
ぶつぶつ言いながら、トマトピューレと水を加えて煮込みに入る。
普通の野菜と香味野菜との区別もつかないのだから、ビーフシチューとビーフストロガノフとの区別が違いがわからなくても仕方がない。ただ、僕がこれからできあがる料理をビーフストロガノフとして出そうとしていることだけは間違いない。ちょっといい格好をしようとしている自分がダサい。
腕まくりして、「今夜はビーフシチューを作ろうか!」と意気込むよりも、鼻歌まじりで冷蔵庫を開けて、「ビーフストロガノフにでもするか……」とつぶやくほうが素敵だと思っているのだ。
フライパンにバターを熱し、マッシュルームと牛肉を炒める。この相性は素晴らしい。白ワインを注いで煮立て、煮込み鍋に混ぜ合わせた。ここで、もしあれば、粒マスタードやローリエでも加えたら、よりおいしいビーフストロガノフに出会えるのだけれど、まあ、なくてもいい。だって、こっちにはスパイス級にいい香りを奏でる香味野菜がいるのだから。
そろそろ仕上げようか、と生クリームを手に取って、また最初の悩みが頭をグルグルし始めた。ビーフストロガノフって、本当は、生クリームじゃなくてサワークリームをたっぷり入れるんじゃなかったっけ。酸味ですっきりさせるんじゃなかったっけ。ストロガノフ家の末裔って、どこかにいるのかな? 結局、僕は何も知らないのだ。
ビーフシチューとビーフストロガノフの違いがわかるまで、この料理の名前は、「ビーフの“ストロガノフ”風」くらいにしておくか。