極寒期ならではの感動的な景色を求めて旅した、ひがし北海道。最後に訪ねたのは、厚岸町でした。お目当ては、極上の牡蠣はもちろん、新進気鋭のウイスキー。海と湿原に恵まれたこの街には、理想的な環境と作り手の情熱が生み出す国産ウイスキーがあるのです。
スコットランド・アイラ島に似た環境が生み出す極上ウイスキー
私はとくに熱心なウイスキー・ラバーというわけではありません。でも、北の小さな街で造られるクラフトウイスキーと聞けば、テイストはもちろん、その誕生ヒストリーがとても気になります。訪ねた厚岸は、天然の良港で知られる、道東で最も古い歴史を持つ街のひとつです。
本格的なモルトウイスキーを生み出しているは、「厚岸蒸溜所」。2016年に本格稼働をスタートし、18年に「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 1」「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 2」を発売して話題を集めた、新しいウイスキー蒸溜所です。
3月5日には、待望の新作「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 3」が登場。北海道産の希少なミズナラ材のみを使用した樽で8~23か月熟成させたノンピーテッドモルト原酒をバッティングしています。

「厚岸蒸溜所」の母体は、食品の原材料の輸入も行う堅展実業(本社・東京)。もともとウイスキーの輸出も行っていましたが、ブームで人気が高まるなか、国産ウイスキーの確保が難しくなり、自社での生産に取り組むことに。風味の決め手となる“熟成を行う環境”を探して、厚岸にたどり着いたのだといいます。
海の幸で知られる漁師町の厚岸が、ウイスキー造りの地として選ばれた理由は、気候と風土。冷涼で湿潤な気候や、豊富なピート(麦芽を乾燥させる際に使う、植物が炭化してできた泥炭)は、シングルモルトの聖地と呼ばれるスコットランド・アイラ島にとてもよく似ているのだといいます。ピート層を通ったホマカイ川の軟水を仕込み水として使用できる点も、アイラ島のウイスキー造りと共通しています。

「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 1」は、発売とほぼ同時に完売。話題を集めつつも少量生産のため、なかなか手に入りにくい厚岸ウイスキーですが、町内にある道の駅「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」内の三つの飲食店で飲むことができます。
ウイスキーと牡蠣を味わうべく訪れると、高台にある建物の眼下に、海に面した街並みが広がっていました。海流の影響で立ちこめる海霧に包まれた日にはきっと、アイラ島とよく似た風景になるのでしょう。
どちらも厚岸産! 牡蠣とウイスキーのマリアージュ
「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」にある「炭焼き 炙屋」は、牡蠣やジンギスカン、野菜など、新鮮な食材を欲しい分だけ購入して、自分で炙って食べることができる、屋内バーベキュー施設。バーベキューが大好きなので、こんな場所は食欲をかき立たてられます。小ぶりだが、うま味が凝縮された「カキえもん」、殻が大きな「ナガえもん」、身がたっぷりの「マルえもん」と、厚岸名物の牡蠣を存分に味わいました。

厚岸ウイスキーは、2種類を飲み比べ。「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 1」は、樽と柑橘系のフルーティーな香りが心地よく鼻をくすぐります。「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 2」は、燻製のような香ばしさが。ウイスキーに詳しくないのでほぼ区別がつかないかな、と思いきや、香りの違いをはっきりと感じることができました。スコットランドを旅したときのように、殻付きの生牡蠣に数滴たらして口にすると……磯の風味とスモーキーな香りが口いっぱいに広がり、幸せな気分に。
4月からは、蒸溜所内をガラス越しに見学し、「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」で試飲するツアー(参加申し込みは、「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」のホームページで)もスタート。海が見える高台に貯蔵庫を造る計画もあるという厚岸産ウイスキーの将来が楽しみです。

すっかり食とお酒に魅了されてしまった厚岸ですが、もちろん、アクテビティーの楽しみもあります。春以降、私がぜひ体験したいと思っているのが、別寒辺牛川でのカナディアンカヌー。別寒辺牛川は、日本の主要河川の中で最も人工工作物が少ないといわれ、原始的な風景も見られるのだとか。5~10月に開催され、「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」で参加を受け付けています。
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