「1ミリでもまつげを長く伸ばして目立たせたい!」と思う気持ちで、ただひたすらにマスカラをつける女性のまつげが美しく仕上がったのを、僕は見たことがありません。
だけど、その強い思いだけは痛いほど感じるので、その場ではなにも言えずにいることが多いのです。今日はそんな女性たちのために、本当は伝えたかったアドバイスをこのコラムに込めたいと思います。
「より長く、より太く」への盲信
不思議なことに、まつげが短い女性だけが、この“より長く! より太く!”という思いを持っているわけではないのです。それが分かるのは、“まつげエクステンション”、いわゆる「まつエク」という技術が10年くらい前に初めて流行った時です。

「まつエク」は、1ミリくらいしか伸ばせなかったそれまでのマスカラと違い、欲望のままにまつげを伸ばせる「パンドラの箱」でした。僕の周りの“おしゃれ”もしくは“美容賢者”と呼ばれる美のエキスパートの女性たちでさえ、どっぷりとハマり、元のまつげの長さに関係なく、どこまでも長い、不自然で滑稽な毛を、しばらくの間、目のまわりにぶらさげていました。
最近では、少し冷静さを取り戻し、長すぎる「まつエク」は変、ということに気づいてきたようですね。
だからといって、「長いまつげ信仰」がなくなったわけではないのです。それが思いっきり表れているのがマスカラのつけ方です。
間違いだらけのマスカラの使い方

「じゃあ、マスカラつけてみて」と、僕がお願いすると、全ての女性は、一心不乱にまつげを少しでも伸ばそうと、マスカラを毛先に向かってしつこく撫でつけます。
毛先に意識が集中しているので、根元なんてほとんどついていません。毛先にいくほどマスカラを重ねてつけるので、毛は長くなりますが、根元はオリジナルの細さ。毛先に向かって太くなり、それはまるで黒いこん棒のような形で、美しいまつげとはほど遠いのです。
こん棒形の毛は、先だけが目立って長くなったようにも見えるので、そこに満足して、美しいかどうかには疑問を持たない。そんな感性は僕にとって不思議なのですが、それほどまでに長いまつげに対する憧れが勝ってしまうということかもしれません。
美しさを追いかけた、日本人形を思い出してみてください。
まつげ一本一本が理想の形で描かれています。その毛は、皆さんがマスカラで仕上げるのとは逆で、根元が太く、徐々に毛先に向かって細くなり、針先のように消えていく、毛がもともとあるべきかたち。
根元にしっかり
マスカラをつける時には、そのかたちを目指すことで、美しさがアップします。そのやり方を教えますね。
まずは、マスカラブラシを上まつげの下からその根元(ほとんどまぶたの皮膚に当たるくらいのところ)に当てます。マスカラブラシは細いものを選んだほうが、そこに当てやすいです。
その位置をキープしながらブラシを左右に動かすことで、根元にたくさんマスカラをつけるようにします。
たっぷりとついたら、毛先に向かってブラシをできるだけゆっくりとコームする。これをほどよく、まつげの存在感が強調されるまで数回繰り返します。
この仕上がりを観察すると、まつげの根元の黒さが強調されることで、目の輪郭がはっきりとしてアイライン効果が出て、目の存在が強調されます。それに比べ、こん棒形は、根元はほとんどついていないので、目のかたちはボヤけたまま。
まつげの中間部と毛先の方は、そこばかり強調されるこん棒形に比べると、より自然で、ほどよく黒さと太さが増しています。
毛の先端は、こん棒形より目立たないので、たとえ長さが増していても、印象としては分かりにくいですが、まつげの存在感は根元の黒さで十分感じます。結果、存在感のある美しいまつ毛に仕上がり、目の存在を強調しつつ、しかも自然に顔に馴染むのです。
世界共通、黒いまつげで目力アップ

本来、まつげは目を守るために存在するものなのに、いつからか、髪のように人を美しく見せるためのアクセントになってしまいました。そうなるとつい、日本人にはないまつ毛の長さに憧れがちになってしまいますが、それなら欧米人はマスカラなんて必要なくなります。
でも、黒のマスカラは世界共通。なぜなら黒いまつげが目を際立てる。もっというと、白目のしろさをより美しく強調するからです。だから、どんなに美しい金髪の女性も黒髪にはしないのに、まつげを黒くするのです。長さではなく、まつげの美しい黒さを大切にすることで、より顔を美しく見せることができるのです。
明日からは、この新しいやり方、取り入れてみませんか?
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