「今しか見られない景色」を求めて旅した、真冬のひがし北海道。目的は絶景ですが、ここに来たのなら美味しいものは欠かせません。前半の旅の拠点となった帯広では、十勝の恵みも存分に味わいました。
「旅のはじまり」という名のビール
厳冬期の美しい風景を探したこの旅では、毎日が早起きでした。太陽が昇り始める時間帯が、観賞の絶好のタイミングだったからです。おのずと早めに就寝しなければならないのですが、帯広といえば、十勝のおいしい食材が集結する美食タウン。夜はおいしいものを食べながら、お酒もしっかりと楽しむことにしました。
ネーミングが気になって試してみたのは、「旅のはじまりのビール」。十勝産の大麦麦芽を100%使用したクラフトビールです。「ホテル ヌプカ」の1階にある「カフェ&バー ヌプカ」では、樽生で飲むことができます。

名前にひかれて飲んでみましたが、芳醇な麦の香りと豊かなコクはとても気持ちがよく、おかわりしてしまったほど。優しい味わいは、雄大な十勝平野のような懐の深さを感じさせます。ちなみに、そのすてきな名前とラベルには、「十勝の地図を片手に、これからはじまる旅の話をしよう」という思いが込められているのだそうです。

カウンターの奥にはタップがあり、「旅のはじまりのビール」をはじめ、地元の「帯広ビール」や全国各地の樽生が12種類用意されています。ミズナラの木を加工した1枚板のテーブルや薪ストーブ、十勝の土を使用した土壁など、ローカルのアイテムをセンスよく取り入れた空間も居心地抜群。1、2杯だけのつもりがつい、ウィンナースタイルビールの「麦日和」、黒ビールの「クロウト」まで楽しんでしまいました。

もう一杯飲みたいな、と、ほろ酔いで立ち寄ったのは、ここから歩いてすぐの「オブリガーダ」。ビルの1階に個性的な飲食店が軒を連ねるアーケード街「北のうまいもん通り」のなかで、ひときわ存在感を放っているブラジル家庭料理のお店です。
カウンターだけの小さなお店には、生ハムの原木がどーん! お酒が進んじゃいそうな予感です。常連さんもいますが、女性の旅行者一人でも気軽に立ち寄れる開放的な雰囲気です。

料理は、十勝産の食材を使った手作りのブラジル料理。ブラジルの国民的なお酒、カシャッサ(サトウキビを原料にした蒸留酒)が、チーズや生ハムによく合います。
「北のうまいもん通り」から道路を挟んで隣には、個性的な屋台が軒を連ねる有名な屋台村「北の屋台」もあります。帯広は、食べることが大好き、お酒も好き、旅が好きという人を満足させてくれる街。旅人を温かく迎えてくれる街の気質が、私は大好きです。
キュートなおばあちゃまが手作りする、十勝食材の朝食ブッフェ
食べることに事欠かない帯広には、朝食を食べにはるばる遠くからファンがやってくるレストランもあります。
郊外にある英国式庭園「紫竹ガーデン」にあるレストラン「遊華」の朝食ビュッフェ(予約制)には、十勝産の食材を使った和洋中の料理やスイーツ、旬の野菜や果物のスムージーがずらり。種類はかなりありますが、どれも、自家菜園や近隣の農家から仕入れた食材からていねいに手作りされています。

豪華でヘルシーでおいしいというのもさることながら、このレストランに足を運びたくなる理由は、オーナーであるすてきなおばあちゃま。1927(昭和2)年生まれの紫竹昭葉さんは、今も現役で庭作りや調理にとバリバリ働き、笑顔でゲストを迎えています。

このガーデンは、おばあちゃまの夢そのもの。56歳で最愛のご主人を病気で亡くし、悲しみに打ちひしがれていたころ、「子どものころ、日が暮れるまで駆け回っていた花いっぱいの野原を再現して、そこで暮らそう」と一念発起、63歳でこのガーデンを造ったといいます。現在は、約1万5000坪の敷地に、約2500種の花々が咲き乱れる立派なガーデンに成長。ガーデニングはすべて、無肥料、無農薬、無灌水、自家製の有機堆肥にこだわっています。

生き生きと育つ草花とすてきなおばあちゃまに元気をもらえる「紫竹ガーデン」。お孫さんの龍太郎さんとの会話が、まるで漫才のようで、終始、笑いが絶えませんでした。冬季はクローズしていたガーデン(レストランは冬季も営業)も、まもなく(4月20日~)オープンします。
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