壮大なカルデラのなかに位置し、自然が豊かな阿蘇は、良質な水に恵まれた地。湧き水のある爽やかな風景や、名水が育むおいしい食材は、おなかと心を満たしてくれます。熊本・阿蘇の旅で、水の恵みにたっぷりと癒やされました。
阿蘇神社の門前町を散策
ここ阿蘇は、中心地にこんこんと水の湧く町。地域のシンボル、阿蘇神社に続く「阿蘇一の宮門前町商店街」をぶらりと歩くだけで、湧水スポットをいくつも見つけることができます。

地元では、水が湧き出る場所を昔から「水基」と呼び、生活用水や農業用水として利用してきました。現在は、33か所の水基が観光用に整備され、それらを巡る散策コースも人気を集めています。

湧水に誘われて商店街を歩いていくと、やがて、切り妻屋根のレトロな木造建築が並ぶ一角にたどり着きました。ここは、明治時代にあった学校の古い木造校舎をリノベーションした「旧女学校跡」。

明治35(1902)年から昭和52(1977)年まで、裁縫技術を学ぶ女学校がありました。かつての校舎は今、アンティークショップやカフェなどとして利用されています。
緑が育ち、水路が整備された一帯は、みずみずしい空気の中に文化が香る気持ちのいい場所。技術を身に付けようと夢を抱き、イキイキと学ぶ彼女たちの姿を想像しながら、しばし散策を楽しみました。

さらに名水を求めて足を延ばしたのは、車で10分ほどの湧水スポット、「手野の名水」。巨大な阿蘇溶結凝灰岩の割れ目から水がじゃぶじゃぶと湧き出る景観は圧巻!

水の温度は、13.1度。冬はほんのり温かく、夏はひんやりと冷たく感じる温度です。この水はもちろん飲用可能。口に含むと、とても優しくまろやかでした。地元の方は、癖がないこのお水でご飯を炊いたり料理をしたりするというから、うらやましいかぎりです。この日も、次から次へと、たくさんの人が水を汲みに訪れていました。
名水を使った阿蘇のグルメに舌鼓を打つ
良質の水を感じられる食べ物といえば、豆腐。阿蘇で3代にわたり、名水を使った豆腐作りを続けているのが、「木村とうふ店」です。店内には、オーソドックスな絹豆腐と木綿豆腐のほかに、しそ豆腐、黒ゴマ豆腐、ゆず豆腐など、フレーバー豆腐が並んでいました。地元の人がひっきりなしに買いに来る人気店ですが、イートインスペースもあり、旅行者も気軽にその場で食べられます。

私はザルに入った、かわいらしい「宿場豆腐」と豆乳をいただくことに。トロリとした豆乳は濃厚で、飲みごたえがあります。美容によくておいしいから毎日でも飲みたいぐらい! 宿場豆腐は手に取るとずっしりと重く、主食になりそうなほどの存在感です。豆の風味を、存分に感じました。

阿蘇の名水を使ったパンがおいしいと聞いて訪ねたのは、「パン工房 豆の木」。パン職人、泊伸一郎さんが作るパンを求めて、住宅街のなかにある小さなお店に、遠くからも常連客がやって来ます。
泊さんは以前、福岡の都心でベーカリーを営んでいました。当時は毎日、パン作りのために車で1時間かけて天然水を汲みに行っていたといいます。「今はあちらこちらに湧水があり、手軽に良い水が手に入ります。阿蘇の名水を使ったパン生地はみずみずしくて、買った翌日に食べてもおいしいといわれますよ。いい水を使うのは大事なことなんです」と泊さん。

大人気商品は、「木の実の阿蘇パネトーネ」。阿部牧場の阿蘇ミルクを乳酸発酵させ天然酵母にし、作られたパンです。本場イタリアのパネトーネ(クリスマスに食べる伝統菓子)のごとく、もっちりとした生地ですが、より繊細で上品な味わい。アーモンドやクルミ、カシューナッツ、カボチャの種、ベリーなどがトッピングされていて、見た目も華やかです。
さて、阿蘇の旅ではおいしいものを食べてばかりいましたが、日常で使えるお土産も探してみました。見つけたのは、「阿蘇くんわの里」で作られている馬油のコスメ。障がい者アーティストのイラストを使用した、かわいらしいパッケージが目を引きます。

見た目に惹かれてお土産にしましたが、馬油クリームはとても使いやすく、すっかり愛用品となりました。最高級の馬油をていねいに精製した「馬油せっけん」は、入浴後のボディーローションが要らないほどお肌がしっとり。使うたびに、美しく豊かな阿蘇の旅を思い出しています。
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