「年末はゴミ出し日の期限もあるし、大掃除は計画的に行ったほうがいいのはわかっているけれど……」。とは言え、仕事や家事に追われる毎日で、大掃除のことにまでまだ気が回っていないという人も少なくないのでは。実際、多くの企業や官庁が御用納めを行う翌日の29日に大掃除を予定している人が多いようです。そこで、掃除のプロに、今からでも間に合う大掃除のコツや、「ここを磨けば、お正月に向けて気分が明るくなる」というポイントを聞きました。
大掃除は29日が最も多い
調査会社「マクロミル」(本社・東京都港区)が11月30日と12月1日の2日間、モニターの男女1000人にインターネットでアンケート調査を実施したところ、「大掃除をする」と答えた人は54%(既にした人も含む)。「しない」と答えた人は28%でした。
「する」とした人に実施予定日を聞いたところ、平日よりも土日が多く、年末に近づくにつれて上昇。「12月29日」が29%で最多となりました。また、大掃除にかける予算の合計(洗剤や掃除用品、掃除家電、掃除代行サービスの利用料などを含む)は、平均1845円でした。
無理をしない範囲で、まずは作戦を
「いま『使える時間』がどのくらいあるのか。新年までにどこをきれいにしたいのか。まずはご家族で話し合って作戦を立てるといいですよ」。そうアドバイスするのは、家事研究家で家事代行会社「ベアーズ」(本社・東京都中央区)の副社長、高橋ゆきさんです。

年の瀬が押し迫ると、大掃除のほかにも、年賀状書きやおせち料理の準備など、やらなければいけないことがたくさんあります。高橋さんは「掃除の範囲はここまで、と決めて、無理しないことが大事です。焦りやイライラは禁物。むしろ、家族を巻き込んで『こうやるとキレイになるよ』と教え合うような機会にできるといいですね」と話します。
掃除のできる時間が限られている場合、台所の換気扇やエアコン掃除などは、正月明けにプロの清掃業者に依頼しても良いかもしれません。外壁の掃除など、屋外で水を使う作業は、気温の高い時期のほうが適していることもあります。
ピカッと輝く蛇口・鏡・窓にする

では、年末に掃除をするとしたら、具体的に何をすれば効果的なのでしょうか。高橋さんによると、キッチンではシンクや蛇口の部分、洗面所では鏡、リビングだと窓と照明器具の掃除が効果的です。「蛇口も鏡も、本来の輝きを取り戻すと、家全体が明るくなったように感じるんですよ」(高橋さん)。
キッチンのシンクや蛇口が新品のときには輝いていたのに、くすぶるようになってしまうのは、水あかとキズのためだそうです。シンクや蛇口を洗うときには、キズを増幅するような金属製のタワシなどは使わないように。スポンジの柔らかい面を使う、もしくは台ふきんを軽く絞って食器用洗剤をつけ、大まかな汚れを落とします。蛇口の根元の際などは、古い歯ブラシで細かい汚れを落とします。

汚れと洗剤の両方を水拭きで洗い流したあとに、ふきんを替えて乾拭きをします。さらに、使わなくなったストッキングで作った「三つ編みストッキング」で、仕上げ磨きをすると、ピカッと輝く蛇口になります。シンクは毎回使ったあとに水滴をすべて拭き取っておくと、水あかが付かないそうです。洗面所の鏡は、水だけでも汚れを落とすことができます。こちらも、水拭き、乾拭き、仕上げ磨きの順で行います。

ぞうきんの持ち方にもコツ
リビングの窓は、はじめに洗剤や水で洗うと、表面のホコリがダマになってしまうので、先に使い古しのストッキングと靴下で作った「ストッキングだんご」で、上から下へとホコリを落とします。その後、固く絞ったぞうきんで水拭きをし、さらに乾拭きします。

このとき、拭き方は、上から下へ拭いたら、一度窓からぞうきんを離して、また上から下へ、一定方向に拭きます。ぞうきんの持ち方は、手のひらにおさまるくらいの大きさにします。均一に力を入れることができて、しかもたくさんの面を使えるので効率的です。
最後の仕上げ磨きは、古いTシャツのなどの布で行うと、毛羽立ちが起きにくく、美しさが長持ちするそうです。もちろん、ガラスクリーナーを使ってもOK。その場合も、最初にホコリ落としをした方が効率的です。クリーナーで窓に大きく「Z」の文字を書いて、しばらく放置してから磨くと良いそうです。
軍手ぞうきんは両刀使い
高橋さんは、リビングの掃除のときに、ゴム手袋の上に軍手(滑り止めのないタイプが両面使えて便利)をかぶせて両手にはめる「軍手ぞうきん」を愛用しています。

普通のぞうきんよりも細かい作業ができるほか、右手の方だけ除菌スプレーや消毒用エタノールで湿らせ、左手を乾拭き用にすれば、どんどん効率的に磨くことができるためです。
「戸建て住宅での階段掃除でも、交互に手を伸ばせばいいので、時間の節約になります」(高橋さん)
照明器具は、電源を切って取り外し、アクリルカバーの内側にたまったホコリや汚れを除菌スプレーで湿らせた「軍手ぞうきん」で拭き取り、乾拭きします。このとき、拭き方にムラがあると、照明も汚く見えてしまうので、普通のぞうきんと同じように一定方向に。古Tシャツで仕上げ磨きをすると、部屋全体の明るさが増します。
頑固な油汚れは重曹液でゆるませる
大掃除で、気になるところはほかにもあります。

キッチンでは、ガス台や五徳、魚焼きグリルなどの頑固な油汚れもあります。高橋さんが油汚れの掃除で愛用しているのは、重曹。100円ショップなどでも手軽に買うことができます。重曹を熱めのお湯(45度~50度)に溶かした液に五徳や魚焼きグリルなどを漬け置きしておけば、簡単に汚れが落ちるようになります。
油汚れは、時間がたつほど頑固になっていきます。ガス台に付いた汚れは、まだ余熱が残っているうちに、重曹スプレーで湿らせたペーパータオルなどでひと拭きするといいそうです。重曹は弱アルカリ性ですが、手荒れを防ぐためにはゴム手袋をしたほうがよいそうです。また、ガス台掃除はやけどに気を付けて、十分に冷めてから行うとよいでしょう。
臭い対策も、怠りなく
日頃清潔にしているキッチンの中でも、ゴミ箱自体を丸洗いすることは少ないかもしれません。しかし、このゴミ箱が「臭い」の発生源となっていることもあるのだとか。大掃除の際に丸洗いしておくのが良さそうです。

トイレの便器はピカピカに掃除していても、壁やドアに尿成分が飛び散っていることに気づかずに過ごしていることもあるそうです。酸性のクエン酸スプレーを付けたぞうきんで、トイレの壁部分などを拭くと、汚れが落ちるだけでなく、臭いの元になっているアンモニアなどを中和するので消臭効果も期待できます。
また、玄関の靴箱は、密閉状態になっていることが多いので、換気をすると良いそうです。「大切なのは考え方です。ポイントをつかんで、汚れをためない生活を工夫できるようにして、明るい気持ちで新年を迎えられるといいですね」と高橋さんは話しています。
*髙橋ゆきさんが監修する本が出ました。タイトルは「No.1家事代行『ベアーズ』式 楽ラクうちごはん」で、11月29日発売、世界文化社、税別1300円です。料理代行サービスの経験豊富なスタッフが考え抜いた「忙しくてもきちん食べる」ノウハウを収録。週末に平日5日分の晩ごはんを作りおきする段取りとテクニック、フライパン1つ・鍋1つで続けて3品作ることができる段取り術、身近な野菜の作りおき料理など90品のレシピを紹介しています。