人間国宝の狂言師、野村万作さんと、萬斎さん親子による狂言「よみうり大手町 狂言座」が11月28日に東京・大手町で開催されます。映画や舞台などで幅広く活躍する野村萬斎さんに、読者からの質問をもとに狂言の楽しみ方などを教えてもらいました。
初心者には解説付き公演がお勧め
――初めて狂言を見る時の楽しみ方、見方を教えてください。今回の公演の注目ポイントや、事前に知っておくとよいことはありますか。
堅苦しく考えずにリラックスしてご覧いただきたいと思います。この公演もそうですが、初めてご覧になる時は、解説がある普及公演がいいかもしれませんね。今回の「舟渡聟」「蚊相撲」は、特に予備知識がなくても十分お楽しみいただける演目です。

――狂言を演じる際に一番大事にしていることは何ですか。どんなところが難しいですか。
時間・空間を操って、お客様に想像力を働かせていただくことです。
日常的に体をメンテナンス
――美しい声や姿勢を保つために、どのように鍛えているのでしょうか。日常の食事や運動、心の持ちようを教えてください。
毎日のように舞台があるということは、それに伴う稽古もほぼ毎日のようにしているわけですが、そのように稽古を繰り返すことが重要だと思っています。日常的には、やはり体が資本ですから、きちんと食事を取り、体のメンテナンスをし、短い時間でも睡眠を取るようにすることが欠かせませんね。
――朝一番にすることは何ですか。練習は1日何時間くらいでしょうか。
弟子の稽古。日によって違いますが、2~3時間でしょうか。
――日常生活で、狂言師の癖が出て困ってしまうようなことはありますか。
自分では意識していないのですが、方向を変える時に体をねじらずに体幹を維持したまま、変えているようです。わかりますか?
親子だから息が合う
――人間国宝である万作さんとの共演は、緊張しませんか。親子共演のやりやすい面、やりにくいところを教えてください。
師匠であり、子供の時から共に演じていますのでね、緊張することはあまりないのですが……。息が合うところは、やりやすいです。

――子供の頃、自分の境遇をどう受け止めていましたか。狂言の家に生まれていなかったら、どんな仕事をしていたと思いますか。
子供の頃は、あまり稽古は好きではありませんでした。友達と遊んでいる方が楽しいですからね。外交官になりたいとか、夢を持っていた時期もありますが、いずれにしても、何かを創造して、社会に問いかける仕事をしていたのではないかと思います。
――映画やお芝居にも多数出ていらっしゃいますが、演じる時に意識していることは異なりますか。逆に狂言と共通することはありますか。
最近はあまり隔たりがないと思っています。
――今後、チャレンジしたいことはありますか。
とりあえず、来年2月1日公開の映画「七つの会議」をご覧ください。
演出はまだ…

――東京2020オリンピック・パラリンピック開閉会式の演出の総合統括責任者としての抱負と、どういう形で狂言を盛り込むのか教えてください。
いろいろな方たちと話し合いを重ねているところで、現時点で具体的にお話しできることはあまりないのですが、皆さまにはあらゆる意味で、喜びや希望を感じていただけるようなものにしていきたいと思っています。
公演の度に変わる雰囲気
――11月28日に公演があります。同じ演目を何度も演じると思いますが、その都度、気持ちの持ち方や演じ方は異なりますか。
同じ演目を何度も演じますが、配役は異なりますので、例えば、父・万作が相手の場合と、若い者が相手の場合では心持ちや演じ方が違ってきますし、お客様の反応のあり方で雰囲気もだいぶ変わります。その辺は何度もご覧になって実際に体験していただきたいと思います。
公演情報 よみうり大手町 狂言座
日時 2018年11月28日(水)午後6時30分開場 午後7時開演
会場 東京都千代田区大手町1-7-1 よみうり大手町ホール
料金 5500円(税込み)全席指定
出演 野村万作、野村萬斎
演目 「舟渡聟」「蚊相撲」
主催 万作の会、読売新聞社 協賛 JR東日本 後援 千代田区
チケットは、チケットぴあやPeatixなどで販売中。問い合わせは、「万作の会」(電話03-5981-9778、平日午前11時~午後5時)。