涼しくなった秋こそ、大掃除に適した季節――。そう話すのは、清掃代行会社でこれまでに3000件以上の掃除現場を取り扱い、「そうじの女王」とも呼ばれる上原好志子さん(44)です。夏場に繁殖したカビや雑菌を取り除き、快適に暮らしたいもの。上原さんの自宅を訪ね、掃除のコツについて聞きました。

水回り4か所を重点的に
「大掃除は年の瀬に、と思われがちですが、秋なら手や服が水でぬれてもつらくないし、何かと慌ただしい年の瀬よりも、まとまった時間が取りやすい。“秋の大掃除”のほうが合理的です」と上原さん。
重点的に掃除をしたいのは、トイレ・風呂場・洗面所・台所の「水回り」4か所と「窓」。いずれもカビや雑菌の発生源になりやすいところだといいます。
始めるときは、風呂場から。上原さんのおススメの方法は、酸素系漂白剤を使って漬けおき洗いをする“オキシ漬け”です。風呂の残り湯に漂白剤を入れ、湯あかがついた洗面器やシャワーヘッドなどはもちろん、トイレや洗面所の換気扇フードやフィルターを漬け込んでおくだけでOK。トイレや洗面所の換気扇は、台所のものとは違って、油汚れがひどくないのでスルスルと汚れが取れるそうです。

風呂場では、浴槽を覆うエプロン(前面パネル)の内側もぜひ掃除しておきたいところ。エプロンの内側にこびりついた水あかは、お酢で洗い流します。洗車用ブラシも、浴槽の下を掃除するのに便利です。長くて軟らかい毛先が、狭い隙間の奥まで届くそうです。
上原さんは「特別な道具を買う必要はありません。家にあるものを工夫して使えばいいんです」と言います。
臭いの原因は便器以外にも
トイレの臭いが気になる場合は、根本的な原因を考える必要があります。便器の汚ればかりが気になりがちですが、実は、臭いの発生源が「トイレブラシ」や「サニタリーボックス」の汚れだったりすることも。尿はねも原因の一つです。腰から下の壁の部分や、「床と便器のつなぎ目」などを重点的に掃除する必要があるといいます。
「床や壁はトイレ用の酸性洗剤か、100円ショップでも売っているクエン酸などで拭き取れば、臭いの原因となっているアンモニアの成分を中和させることができます」(上原さん)
トイレブラシなどは、上部をカットした大き目のペットボトルに、酸素系漂白剤を入れて漂白すれば、ペットボトルや漂白剤はそのまま捨てられます。また、洗面台の黒ずみは、サンドペーパーを活用し、こすって落とします。

換気扇を漬けおき洗い
台所の換気扇を掃除するときは、あらかじめ大き目の段ボールの下の角の部分を切って、シンクの排水口にセットしておきます。そこにゴミ袋を入れて、60度くらいのお湯と洗剤を入れて、換気扇を漬け込みます。洗剤は、重曹でも代替でき、アルカリ性のものが効果が高いそう。30分ほどして汚れがゆるんできたら、使用済みの歯ブラシなどでこすり落とし、最後にハサミで排水口に近いゴミ袋を切って排水してしまえば、油汚れが他に付着せずに済みます。「掃除のコツは『待つこと』。漬ける時間をきちんと取れば、ゴシゴシしなくても簡単に汚れは落ちますよ」(上原さん)
一通り掃除が終わったら、次の掃除を楽にする工夫が大切といいます。
具体的には、
(1)キッチンのシンクや洗面所、トイレのカビ・水あか防止には、専用のコーティング剤を塗る。
(2)シンクの排水溝のぬめり・細菌の繁殖防止には、小さく丸めたアルミホイルを排水口の水切りカゴに入れる。アルミホイルから出る金属イオンが、ぬめりを発生しにくくする。
(3)換気扇のほこり付着防止には、ぬるま湯に少量のリンスを混ぜて換気扇に塗ると、静電気を抑える効果でほこりが付きにくくなる。
(4)窓のサッシのレール部分にマスキングテープをあらかじめ貼っておく。ほこりがたまったときに簡単にはがせる。
(5)便器と床のつなぎ目にマスキングテープを貼っておく。定期的にはがせば汚れがたまらなくて済む。
(6)ドラム式洗濯機のゴミフィルターには、100円ショップなどで販売している深型の排水口用水切りネットを装着。頻繁に交換すれば掃除の手間が省ける。
――などです。

汚れを取り除くことができる。
上原さんは「“完ぺき”よりも“快適”を目指せば精神的に楽。日ごろ手の届かなかった所を掃除して、スッキリした気分になれるといいですね」と話しています。