◆ハーブとヨーグルトのスープキーマカレー
【材料・4人分】
植物油 大さじ2
にんにく(みじん切り) 2片
玉ねぎ(みじん切り) 小1個
合挽肉 400g
パウダースパイス(カレー粉大さじ2でも可)
・コリアンダーパウダー 小さじ2と1/2
・クミンパウダー 小さじ2
・ターメリック 小さじ1/2
・パプリカ 小さじ1
塩 小さじ1
トマトピューレ 大さじ2
プレーンヨーグルト 400g
タイバジル(ざく切り) 適宜
【作り方】
鍋に油を熱し、にんにくと玉ねぎをきつね色になるまで炒める。合挽肉を加えて表面全体が色づくまで炒め、パウダースパイスと塩を混ぜ合わせる。トマトピューレとヨーグルトを加えて混ぜ、挽き肉に火が通るまで煮たらタイバジルを混ぜ合わせる。
こうも暑い日が続くと食欲はないし、料理をする気力もうせてしまう。ああ、いつから日本は熱帯地域の仲間入りをしてしまったんだろうか。こんなときは冷房の利いた部屋で動かずじっとしていたほうがいい。と思いつつ、全く逆の行動に出た。
炎天下の畑に出かけていき、野菜を収穫し、ハーブを摘んでアウトドアでカレーを作ったのである。まあ、そういうイベントが予定されていたのだから、仕方ない。せめてもう少し気温が低ければ……。ぶつぶつ独り言を口にしながら千葉・四街道の畑へ向かう。
キレドというプロジェクトで野菜を育てる農家の栗田くんが待ち構えていた。
「今日は、農家でも畑に出ない天気ですよ」
栗田くんはにこやかに笑う。やっぱり、ね……。とはいえ、プロもお手上げみたいなことを言われると逆に燃えるのが男子の定めでもある。
降り注ぐ太陽と対峙し、噴き出る汗と格闘し、喉の渇きを潤しながら、精力的に収穫をした。
うだるような暑さを吹き飛ばすようなカレーを作りたい。スパイスやハーブが爽快に香るカレーを。畑に3種類のバジルがあった。ひとつはスイートバジル。イタリア料理のスパゲティ・ジェノベーゼなんかに使うふっくらとした葉のバジルだ。
残りの2つはタイバジル。タイ料理で有名なのはホーラパーだが、残りのひとつは少し珍しい。レモングラスのようなすっと爽やかな香りのするバジルだという。
「バイメンラックって言うんです」
「バイ……?」
「バイメンラックです」
「バイメン……?」
「バイメンラック」
聞き分けのない子供を諭すように栗田くんは名前を連呼してくれるのだが、聞きなれない言葉をインプットしようにも暑さのせいか、頭に入ってこない。「バイ」はタイ語で葉のことをさす。ホーラパーの葉は「バイ・ホーラパー」、こぶみかんの葉は「バイ・マックルー」。要するにメンラックというバジルの葉である。
手で摘んで指で揉み、鼻に近づけて香ると、冷たい風がさっと吹き抜けていくような爽快感に包まれた。口に入れて噛むと本当にレモンに似たすっきりした風味が口の中を駆け巡る。これだ!
畑で作ったカレーが抜群にうまかったのは言うまでもない。帰宅した翌日、僕は早速、おさらいをすることにした。タイバジルが決め手となるカレーだったが、その他、好みのハーブでもおいしくなりそうだ。
何度もいうけれど、この暑さだからこそ、濃厚なうま味が全面的に出るカレーというよりも、スッキリとした食後感を味わえるようなカレーにしたい。そのために一役買ってもらうことにしたのは、プレーンヨーグルトである。
プレーンヨーグルトには少々、苦い思い出がある。今年の新刊「わたしだけのおいしいカレーを作るために」というエッセー本で、僕は大変な誤植をしてしまったのだ。たったひとつだけ紹介しているレシピでプレーンヨーグルトの分量を10倍にしてしまった……。6~7人分のカレーに150g使うところを、1,500g(!)と表記してしまったのである。なんという失態。
訂正に奔走したが、とはいえ、ヨーグルトをたっぷりと加えたカレーがさっぱりおいしくなることを僕は知っている。たいていのヨーグルトは、400gでパックになっているから、使い切りできるカレーにした。スパイスはいろいろと買うのが大変なら、同量(合計大さじ2)のカレー粉で代用してもいい。
4人分だから1人で作るとさすがに食べきるわけにはいかない。残りを冷蔵庫で保存し、翌日に食べる。耐熱の器に入れずに保存してしまったから、そのままレンジで温めるわけにもいかず、かといって器を移し替えるのも面倒だから、冷たいまま食べることにした。
すると、これがまたうまいのである。油脂分が適度にかたまり、ひんやりした食感の後、ジワジワと口の中でうま味が溶け出していくのがわかる。シャバッとサラッとした形状のソースだったのに、もったりとして少し味が濃縮されている感じもある。これならつまみにいけそうだ。
冷えた白ワインを出して、ごくりと飲み、冷やしキーマカレーを口に運ぶ。いいマリアージュである。まさか、カレーをつまみにワインを飲む日がやってくるとは思わなかった。
どれもこれもすべてこの信じられないほど暑い夏のせい、いや、おかげなのかもしれない。 農家も畑に出ないような天気の日は、農家さんたちも畑仕事は早朝か夕方にして、昼間はこのカレーを作ったらいいんじゃないかな。