旅先で、雰囲気があるステキなカフェを見つけると、思わず立ち寄りたくなります。そこでは、ただコーヒーやお茶を飲むだけではありません。お店の人から地元の情報をもらったり、ガイドブックには載っていない、とっておきの場所を教えてもらったり。秋田県にかほ市の旅でも、ステキなカフェにめぐり合いました。
季節の花に迎えられ、隠れ家カフェでランチ
四季折々の花が咲き乱れる庭の中にカフェがあると聞いてやって来たのは、大竹地区。迷路のような路地に家々が立ち並び、その合間を清らかな小川が流れる、静かな集落です。
「本当にここにカフェがあるの?」と思いつつも、目的地へ向けて集落を散策。最初は「何もないところだなあ」と思っていたのですが、歩くほどに、緑や花が次々と目に入り、どこか懐かしい気分がこみ上げてきます。
この集落ができたのは、およそ1000年前の平安時代。その歴史は、加賀の国(現在の石川県)から来た三兄弟が竹林を伐採して家を建てたことに遡ることから、「千年の村」とも呼ばれています。初めて訪れたのに懐かしさを感じるのは、長い歴史を持つ集落の雰囲気に、旅情が誘われるからなのかもしれません。

ほどなくして、目的の「ガーデンカフェTime」に到着。敷地内に足を踏み入れたとたん、目の前に広がっていたのは、一面に季節の花が咲き乱れるみごとな庭! 日本の昔話の世界から一転、英国式庭園にワープしたかのような気分です。

でも、その向こうには美しい緑が広がっていて、いわゆるテーマパークを思わせるような違和感はまったくなし。それもそのはず、ここはガーデナー・フラワーコーディネーターの佐々木利子さんが、地域の自然を大切に守りながら、竹林を開墾し、手作りで築いた庭なのです。
庭で存在感を放っているのは、江戸時代に鳥海山が噴火したときに押し流されてきた岩。それらをうまく活用し、300種以上の花やハーブが息づく庭は、ただキレイ、ゴージャスというだけではありません。「ここに立って、この位置から庭を眺めてみて」。佐々木さんのアドバイスのとおりにいろいろな角度から庭を眺めると、花の香りや表情も変わって感じるから不思議です。

これほどの庭を佐々木さんが一人で築いたのには大きな理由があります。それは、若くして天国に旅立った妹さんと交わした「自宅に庭を作って、小さなカフェを始めよう」という約束。その思いをかなえるべく、ゼロからこの庭を造ったといいます。「あこがれじゃない、やらなきゃという思いが強かった。ここは、命から始まった庭なのよ」と佐々木さん。

店名の「Time」には「命も花も永遠ではない、だからこそ、今という時間を大切に」というメッセージが込められています。いただいたランチ(税込み2000円・要予約)は、庭でとれたハーブや地元の野菜を使った、やさしいお味でした。
遠いけれど、足を運びたいところ。そこでしか見られない風景や、土地の人の思いが込められた場所。旅の本当の醍醐味を、このカフェで見つけた気がします。
街中の情報発信カフェでほっこりカフェタイム
にかほ市のコーヒー好きの人気を集めているのが、「ESPRESSO AUBE」。テーブル席数席とカウンターだけの小さなコーヒー専門店ですが、ライブも行われる、情報発信基地的な存在のお店です。
私が訪ねた日は、太陽がギラギラと注ぐ夏日。低温抽出のコーヒーをトニックウォーターで割った炭酸コーヒー「コールドブリュートニック」をオーダーしてみました。さっぱりとしていて、こんな日にぴったり! 苦いアイスコーヒーが苦手な私でも飲みやすく、旅の疲れを癒やしてくれました。

ほかにも、スペシャルティコーヒーを使ったラテやヨーグルトドリンクなどのメニューもいろいろ。自家製酵母のバゲットやサワードウブレッドも人気です。入りやすいお店なので、女性の一人旅でも利用しやすそう。

その土地の人が営むカフェは、旅人にとっては特別な空間。チェーン店にはない、オーナーのセンスがあふれるインテリアやローカルフードに出会えるから、私はやっぱり、“旅先カフェ”が大好きです。
●ガーデンカフェTime
●ESPRESSO AUBE
●にかほ市
●にかほ市観光協会
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