台湾・台東県の旅で最後に向かったのは、サンゴ礁に囲まれた緑島。この島はダイビングスポットとして、そして、風光明媚な観光地として知られています。にぎやかな台東市から船で約1時間。そこには、青い海と緑が織りなす美しい南国の風景が広がっていました。
かつては流刑地、今はリゾートアイランド
台東市の富岡港から船に乗ること約1時間。「ものすごく揺れる」と聞き、覚悟はしていたものの、終始ジェットコースターのような揺れに、はるか遠くまで来たような気分で緑島に到着しました。大揺れすることは周知のはずなのに、船内が観光客でほぼ満席だったことからも、この島の人気ぶりがうかがえます。
日本統治時代(1895~1945年)には「火燒島」と呼ばれていたこの島は、火山の噴火によってできた島。噴火と海水の浸食によって生まれた景勝地が点在しています。
そんな南国リゾートの雰囲気に満ちた緑島も、かつては流刑地だった時代がありました。1949年から38年間は、政治犯と思想犯の収容所が置かれた「監獄の島」だったのです。ちなみに、その頃に政治犯として緑島に送られ、今は政治家として大活躍している人は少なくありません。
島は一周約20km。島内の移動手段は、1日数便の周遊バス(ハイシーズンのみ)や自転車、バイクとなります。ただ、坂があまりにも多くて自転車はハードなので、島内に点在する見どころを自由に見てまわるのなら、バイクが断然便利です。私はバッテリーで走る電動スクーターをレンタルしました。ペーパードライバーゆえ運転に不安もありましたが、動作は簡単だし、大自然の中の一本道をひたすら走るのは爽快!

絶景スポットのひとつが「海參坪」。犬が伏せているように見える「哈巴狗」、美人の寝姿に見えるという「睡美人」と呼ばれる奇岩を一望できます。ここは遠景もさることながら、植物がワサワサと生えている遊歩道も、南国気分を味わわせてくれました。
でもやっぱり、一番心が惹かれたのは、海の美しさ。真っ白なビーチに座って、打ち寄せる透明の波を見ているだけで、心が落ち着きます。
その海を満喫できたのが、シュノーケリング。ビーチからほんの少し沖に出ただけで、熱帯魚水族館さながらの海中の光景が見られるのです。色とりどりの魚が悠々と泳ぐ様はあまりにも非現実的で、まるで夢を見ているかのよう。

緑島のシュノーケリングは、インストラクターが持つロープにつながれた浮輪に数人がつかまり、一列になって海中を覗くスタイルが主流です。スキューバダイビングのようにライフジャケットとウェットスーツも着用します。これは、速い潮流に対する安全策と、サンゴ礁や岩から体を保護するため。自由には泳げませんが、泳ぎに自信がなくても安心だし、なによりラクチンです。
ちょっと海に入っただけで、これだけの熱帯魚とサンゴ礁が見られるなんて。次回はスキューバダイビングを目的に緑島を訪れたいと思っています。
台湾で最初に日が昇る朝日温泉で朝風呂!
緑島で絶対に行きたいと思っていたのが、島の北部にある「朝日温泉」です。台湾で最初に日が昇るところとして知られています。
ご来光を拝んだ後は、朝日を浴びながら朝風呂としゃれこもうと、この温泉に一番近い民宿に宿泊。暗いうちにバイクを走らせ、日の出30分前に「朝日温泉」に隣接する展望台に到着すると、すでにそのときを待つ旅行者が何人かいました。
雲の合間にオレンジ色の太陽が見え始めると、海の青と混ざり合い、一帯は幻想的な雰囲気に。目の前を遮るものは一切なく、バーン!と開けた風景に引き込まれそうになります。

朝日が昇ったら、楽しみにしていた温泉へ。台湾の温泉は、水着着用、男女混浴が一般的で、家族やカップルで入ることができます。「朝日温泉」も、早朝からにぎやか。日本の温泉とはずいぶん雰囲気が異なりますが、ファミリーが会話を楽しみながら温泉を楽しんでいる光景に、ほのぼのとした気分になります。

お湯に入ってみると、ちょっとしょっぱい。それもそのはず、源泉はサンゴ礁の広がる海の中にあります。地底に染み込んだ海水や地下水がマグマの熱で温められ、それが硫黄泉となって湧き出ているのです。
日本の温泉施設に比べると設備は簡素ですが、シャワーや更衣室も完備しています。こんなに気持ちのいい朝風呂は、早起きしてでも行く価値大です。

緑島は、決して豪華なホテルが立ち並ぶリゾートアイランドではありません。その代わりにあるのは、熱帯魚が泳ぐ海や、豊かな緑、絶景の朝風呂、そして素朴な島の人々。民宿に泊まって、雄大な自然のなかをバイクで走り、マリンスポーツをするのがなにより楽しい、居心地のいい島でした。
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