今の時期に多くのビジネスパーソンを悩ませている問題があります。それは今春配属された新人への向き合い方。「心の壁を取り払えず、距離が縮められない」「やる気があるんだかないんだか、何を考えているのかよくわからない」……。どうすればいいか、困っている人も多いのではないでしょうか。
私は会社員時代に新卒で入社した新人のみを集めた部署を統括していた経験があります。その時から現在まで、新人のマネジメントで私が「効果があった」と思う方法をお伝えします。
「やる気」の裏にある価値観を探る
私は、どんな人にも「やる気」のスイッチがあると考えています。そのスイッチは、これまで育ってきた環境や経験に基づいた「価値観」に大きく左右されます。まずは、それを探ることが大切。
そのために、1対1で面談することから始めます。それも会議室ではなく、ランチや居酒屋など「オフ」の場で。リラックスした状態で、どんな家庭環境や友人関係の中で育ってきたのかを聞くのです。
そうして話すと、相手が目を輝かせてイキイキと語る場面に遭遇します。「この人はこんなときに楽しいと感じるんだ」「こういうことなら夢中になれるんだ」ということがわかります。そうした「モチベーションの源」を刺激するような役割やテーマを与えると、その人の「やる気」のスイッチを押すことができます。
「役割」が成長を促す
例えば、おとなしくて営業ではなかなか実績を出せない新人がいました。彼と話すうちに、学生時代から映像を作るのが趣味だったとわかりました。それで、ある部門のキックオフイベントの映像を作る仕事を彼に任せたら、みんなが感激して泣いてしまうような作品に仕上げてくれたのです。その映像がきっかけで、ほかの部門からも仕事を頼まれるようになり、彼は自信をつけて独り立ちできたのです。
スポーツをしていて仲間との一体感に喜びを感じていた人なら、個人の目標を与えて単独で仕事をさせるより、チームに組み込んで役割を与えるほうが輝くかもしれません。文化祭やサークルで企画を考えるのが好きだった人なら、勉強会のテーマや課内イベントのアイデア出しを任せてみると、持ち味を発揮するかも。
その人が夢中になれることを引き出し、その要素を含んだ仕事や役割を任せることで、意欲が高まり、成長スピードがアップすることが期待できます。
自分の「情報開示」で心を開く
新人と話す時には、一方的に相手の過去をたずねるのではなく、まず私が自分の話をすることを心がけました。子どもの頃はどう過ごしていたか、大学進学時にどんな思いで上京したか、なぜこの会社を志望したのか………など。仕事観はもちろん、恋愛観まで、ありのままをさらけ出しました。そうすると、相手も「この人には、ここまでオープンに話していいんだ」と安心して、自分のこともいろいろ話してくれるようになります。
不安や遠慮が取り除かれて、「何でも話せる」という安心感が生まれれば、仕事の場面でも相談しやすくなるでしょう。先輩・上司としては「1人で何か抱え込んでいるのでは」という不安感が解消できますし、問題解決にも早い段階で取り組めるというわけです。