目の前に広がる一面のブドウ畑と、その向こうに幾重にも連なる丘陵。そんな絵ハガキのような美しい風景が広がっているのが、ヤラバレーです。一帯はオーストラリア屈指のワイン産地として知られ、たくさんのワイナリーが点在しています。メルボルンの中心地から車で約1時間。旅の一日はヤラバレーまで足を延ばして、ワインざんまいの時間をたっぷり楽しみました。
味と風景に酔いしれる、名門ワイナリー
華やかなシャルドネに軽やかなピノノワール。メルボルンのワインはおいしくて、食事のたびに「今日はどのワインにしようかな」とワクワクします。ワイン好きなメルボルンの人たちが頻繁に足を運ぶのが、郊外にあるヤラバレー。80軒以上のワイナリーが品質と個性を競い合う、オーストラリア有数のワインの郷です。

「ブティックワイナリー」と呼ばれる家族経営の小さなところから、海外に輸出している有名どころまで、その規模やスタイルはさまざま。個性豊かなワイナリーを訪ね回ってテイスティングを楽しむのが、ヤラバレーの醍醐味です。

「大人の遠足」気分で出かけたヤラバレー。まずは正統派のスパークリングワインを求めて、「ドメイン・シャンドン」へ。ここはフランスの名だたるシャンパンのメーカー、「モエ・エ・シャンドン」が自国以外に設立した4軒のワイナリーのひとつ。フランスのシャンパーニュ地方と同じ環境、同じ工程でスパークリングワインが作られています。

試飲したのは4種類。長く続くきめ細やかな泡は、シャンパンのイメージそのもの。テイスティング中、スタッフがブドウの品種や工程の説明に加え、「食後、チョコレートとともに、この赤のスパークリングをぜひ合わせてみて」「これは蜂蜜のような香りがして、ブルーチーズとの相性が抜群」と、料理とのマッチングも教えてくれました。

テイスティングの後半は、ブドウ畑を眺めるテラスに移動。遠くで聞こえる野鳥の声と緑の香り、爽やかな風が、いっそうワインをおいしく感じさせます。ああ、なんて贅沢! 名門のワインが生まれる場所だということを抜きにしても、その開放的な環境に、すっかり心がほぐれてしまいました。
絶品ランチと気鋭のクラフトジンを堪能
ヤラバレーを訪ねる楽しみは、ワインだけではありません。ワイナリーに併設されたレストランもまた、クオリティーが高く、期待大。併設といっても、けっしてオマケ的なものではなく、味は本格的。ワイナリーのレストランが味を競う大会もあって、シェフたちは日々、研鑽を積んでいるといいます。
「オークリッジ」は、手摘み収穫やフレンチオーク樽での熟成といった、伝統的なワイン作りを続けるワイナリー。ここはワインもさることながら、食事目当てで訪れる人たちでにぎわっています。
自家菜園で育てた野菜やフルーツをはじめ、地元生産者が手がける食材をみごとな料理に仕立てているのは、若きシェフ。カンガルー肉とサンダルウッドナッツをあわせた前菜や、乾燥熟成鴨肉と桃を使ったメインディッシュなど、メニューを読んだだけでは想像できないクリエイティブな料理が、テーブルに運ばれてきます。

ワインをたっぷりと楽しんだ後の締めくくりは、ジンのテイスティングへ。ヤラバレーで今、ワインに劣らず注目を集めているのが「フォー・ピラーズ・ジン」。2013年に誕生したクラフトジンの蒸留所です。ヤラバレーはワインの印象があまりにも強く、ジンが飲めるのはちょっと意外でしたが、こちらのスタッフいわく、「ヤラバレーの水はとてもマイルド。こんなに素晴らしい水はほかの場所にはないよ!」。
伝統的なジンは原料にジュニパーベリー(ハーブの一種)を使いますが、ここではオーストラリア固有の植物であるユーカリをベースにしたり、ハーブやスパイスをブレンドさせたりなど、ユニークな素材を使っています。

蒸留所に併設されたバーでは、10オーストラリアドルで3種類のジンが試飲可能です。ブレンドによって、桃のような香りがしたり、かんきつ類のように爽やかだったり。テイストがはっきりと異なるので、ウンチクを知らなくても、飲み比べが楽しい! フィンガーフードもあって、テイスティングにとどまらない、バーでお酒を味わう心地よさも覚えました。
ワインとジンを楽しんだヤラバレー。どんなに小規模な作り手でも、徹底的に味を追求している情熱的な姿が印象的でした。メルボルンっ子は、「あのワイナリーの今年のピノノワールがおいしかった!」と、自分のとっておきの一本を見つけるのが得意なのだとか。ヤラバレーを訪れて、ワインがますます好きになり、ジンがとても身近なものになりました。
【オススメの関連記事】