◆アスパラガスの白和え 白胡椒風味
【材料】
アスパラガス 120g 8本
湯 600ミリリットル
塩 6グラム(小さじ1/2)
ホワイトペッパー(砕く) 2グラム(小さじ1/2弱)
くるみ(砕く) 4~5個(10グラム)
マスカルポーネチーズ 45グラム
茹で汁 小さじ1~2
【作り方】
アスパラガスの根元部分を折り、固い部分を3センチほど皮をむく。分量の湯と塩で茹でて冷水にさらし、ざるに上げて水けをきっておく。その他の材料をすべてボウルで混ぜ合わせ、アスパラガスを加えて少々の塩(分量外)をふりながら混ぜ合わせる。
春を感じる色って、何色ですか?
小学校の授業じゃあるまいし、大人になったらそんな質問を誰かから投げかけられることもないだろう。もし、誰かにそう聞かれたとしたら、なんて答えたらいいだろうか。
桜色? なんだかそのまんまだな。東京はもう花見の時期も過ぎ、花は散り、葉桜が目立ってきた。新緑の季節だから、緑色? これもまたひねりのない答えだなぁ。
でも、若葉や新芽が出始める季節だから、もっとも春を感じる色と言えるんじゃないだろうか。
唐突にこんなことを考え始めた理由は、まさにそのまんまのお題を出されて悩んでいるからだ。いま僕がやっている「カレーの学校」というプロジェクトで、第8期生の卒業懇親会で生徒さんたちからリクエストがあった。
「春を感じるカレーを作ってください」
「オッケー」
と安請け合いしたものの、実際に考え始めてみると、まあ、大変なこと。春を感じるカレーっていったいなんだろうか。最初に頭に浮かんだのは「春色のカレー」だった。ところが、カレーという料理は色を楽しもうとしても、簡単にはいかない。桜のようなピンク色のカレーや若葉のような鮮やかな緑色のカレーなんて……。
困った僕は、春の色をあきらめて春に旬を迎える食材でカレーを作ろうと思っている。鰆のカレーにしようかな、と。それならおいしく作れる自信はあるけれど、意外性が足りず、少々残念だ。
おいしい料理は美しい。
「美味しい」という言葉は、「味が美しい」と書くけれど、味わいだけでなく、見た目も色みも美しいはず。僕はそう思っている。春の旬の食材を使って春を感じる色味の料理を作りたい。鰆のカレーに逃げたりせずに王道のアスパラガスを使ってスパイス料理を作ることにした。
火を通した後も鮮やかな緑を保ちたい。アスパラガスは焼いたりフリットにしたりしてもおいしいけれど、やはり、塩ゆでするのが一番きれいに仕上がる。さっと茹でて風味も食感もきっちり残したいから、茹で時間は、1分から長くて1分30秒。それ以上はいけない。すぐに冷水につけてざるに上げる。
そのまま食べたり、マヨネーズをつけたりしても十分おいしいのだけれど、もうひと手間加えたい。選んだのは、マスカルポーネチーズ。クリーミーな味わいと真っ白な色味が歯ごたえの残るピチピチのアスパラガスをより引き立ててくれるからだ。スパイスにホワイトペッパーを選んだのは、もちろん白いから。だが、それだけではない。ピリリとした辛味がアクセントとなっていい。粗びきにすると単調になりがちなこの料理に食感としての刺激も与えてくれる。
作っている間も食べる時も、ずっと美しい彩りを感じることができる。春っていいな。陳腐な感想だけれど、そう思う。
「ねえ、春を感じる色って、何色だと思う?」
「そうだなぁ、マスカルポーネチーズの隙間から見え隠れするアスパラガスの色、かな」
堂々とキザなセリフを言って、すっとこの料理を出してみよう。
「まあ、すてき! まるで雪どけを待ちきれなくなった新芽のようね」
なんて盛り上がることだろう。ん!? 盛り上がるのか!? 白い目で見られたり、二度と口をきいてくれなくなったりする恐怖に打ち勝てる自信があるのなら、やってみる価値はある。
「あれ? なんかピリッとする」
「ホワイトペッパーをしのばせておいたんだ」
「おいしい!」
こうなれば、大成功だ。いったい何のシミュレーションしてんだか……。
ユーモアのある人ならこう言うかもしれない。
「でも、グリーンアスパラガスじゃなくて、ホワイトアスパラガスだったら、こうはいかないよね」
確かにアスパラガスまで白かったら、この料理が隅から隅まで真っ白になってしまう。雪はとけず、春はいつまでたってもやってこない。ただ、そういうときはね、ホワイトペッパーじゃなくて、ブラックペッパーにするのだよ。春の色を感じるかどうかは別として、また別の見た目と風味を楽しめるはずだから。