東日本大震災や熊本地震など、災害が起きるたびに「防災」の大切さがクローズアップされます。でも、「いつか」でいいと思ったり、実際に何をすればいいか分からなかったり……。子育て中の女性たちで作るNPO法人「MAMA-PLUG(ママプラグ)」は、女性や親子が取り組みやすい「防災ピクニック」を提唱しています。代表の冨川万美さん(40)に、その狙いを聞きました。

防災を「自分ごと」にするために
ママプラグは、キャリアを中断した女性が社会との接点「プラグ」を持つために結成され、東日本大震災の後は被災者支援に携わっています。冨川さん自身も、出産で勤務していたPR会社をやめた後にママプラグに参加。被災ママたちの声を生かして「子連れ防災手帖」や「子連れ防災実践ノート」などを出版しています。東京都が今月発刊した防災ブック「東京くらし防災」の編集にも携わりました。
「大事だとわかってはいるけれど、『楽しくなさそう』『今じゃなくてもいいか』と先送りにしている。その点で、防災は『節約』と同じように、大切なのになかなか取り組めないものになっています」と冨川さん。窓ガラスの飛散防止シートや家具の固定も大事だけれども、それよりもまず、「自分の暮らしにあわせて、できることから取り組んでみて」とアドバイスします。
ピクニックで非常食を食べてみる
そのために役立つのが「防災ピクニック」。キャンプほどハードルが高くなく、親子で公園に出かけて、イベント感覚で気軽に取り組めます。ステップがいくつかあり、まずは、公園で非常食を食べてみる。「外で食べることで『うちの子には、乾パンは食べづらそうだ』『スプーンやお手ふきもあった方がいい』などの発見があります」

次に、「リュックに必要なものを詰めて出かけて、公園で使ってみる」「子どもの手を引いて歩いたり、だっこしたりして避難してみる」という体験を積み重ねていきます。そうすることで、自分や家族の暮らしに必要なものが見えてくるそう。
家族との連絡法、保育園と連携するには?
その上で確認しておきたいのは、家族との連絡方法です。被災した女性たちの多くが不安に思ったことは「家族に会えない」ことでした。自身も9歳と3歳の子どもがいる冨川さんは「災害時に誰が子どもを保育園に迎えに行くのか」「どうやって連絡を取るのか」「代理で迎えが来た場合に、どうやって引き渡すのか」など、保育園と保護者との間でシミュレーションすることをもっと広めていきたいと話します。
冨川さんは、東日本大震災の被災女性が、震災後何か月もたってから、子どもを保育に預けて初めて一人の時間ができたときに、「実は怖かった」とポロポロと涙を流す姿に出会ったことがあります。襲いかかる災害には、一人ひとりが自分で対峙するしかありません。自分に何ができるか、家族をどう守るか、3月11日を機に確かめておきたいですね。(大森亜紀)
![]() 子連れ防災手帖 被災ママ812人が作った
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