米マーベル社の人気ヒーロー映画「アベンジャーズ」シリーズ最新作「マイティー・ソー バトルロイヤル」で、死の女神「ヘラ」の声の吹き替えを担当した天海祐希さん。大好きだという女優ケイト・ブランシェットさんの演技にあわせ、主人公の前に立ちはだかる敵役のとてつもない強さを声の表情で存分に伝えています。映画の見どころや仕事に対する思いを聞きました。
ダントツに好きな女優ケイト・ブランシェット
――死の女神「ヘラ」は、すべてを滅ぼす女王として、主人公のソー(クリス・ヘムズワース)と対決します。演じるのは、アカデミー女優のケイト・ブランシェットさん。その声を担当すると聞いた時はどう思いましたか。
大変光栄で、ありがたかったです。ダントツに好きな女優さんで、演技力はもちろん、美しいし、エレガントだし、何をやってもステキな人。そのケイトさんの演技をドンと一本の柱にして、それに寄りそう形で声をあてていきました。彼女が声が低いトーンの時は、私も低くして、とにかく彼女の演技を邪魔しないように、と。

――アメリカン・コミックスのヒーローたちが活躍する「アベンジャーズ」シリーズの中で、今作品の主人公ソーの武器は巨大ハンマー。ヘラはその武器を粉々にするほどの破壊力と冷酷な美しさを持ち、自らが置かれた境遇についての複雑な思いを明かします。
これまでの「アベンジャーズ」シリーズのさまざまな伏線がこの映画でつながっていく。うまく練られた脚本だなと思いました。ヘラは、ソーにとっては敵役だけれど、彼女にとってはソーの方がむしろ自分を脅かす存在。登場人物それぞれに過去がある。ヘラは、ビジュアルも登場の仕方もかっこいいし、ガーンとスケールの大きな悪役。ケイトさんも楽しんでおやりになったんじゃないかな、と思いました。私も男たちを前にしてセリフで「ひざまずけ、女王の前に」って言う珍しい体験ができました(笑)。
――個人的に好きなシーンやセリフはありましたか?
バーンと爆発してシュッと場面が切り替わるテンポのいいアクションシーンはもちろん、戦っている最中に、ソーと義弟のロキ(トム・ヒドルストン)がクスッと笑えるような会話を交わすのも、日本映画ではあまり見られないですよね。次回作につながる伏線もあって、シリーズを初めて見る人でも楽しめると思います。
勝手が違う声の演技、選んでもらったうれしさと責任
――役者として演技するのと声をあてるのとでは勝手が違いますか。
違いますね。声の仕事を楽しいと言えるほど、私には技術がないと思っているので、一生懸命です。アベンジャーズの大ファンの方もいらっしゃるし、作品やケイトさんの芝居を邪魔せず、見ていただいたお客様に「面白かった」「楽しかった」と言ってもらえるのが一番大事ですよね。

――低く抑えた声のすごみがヘラにぴったりだと思いましたが、うまくできた、という自信はありますか?
たくさんの魅力的な女優さんや声優さんがいらっしゃる中で、私を選んでいただいたという感謝の気持ちも、責任もありますから、これが今の自分にできる精いっぱいのお仕事だと思ってやりました。でも、今回に限らずどのお仕事でも、最高にうまくできたと思っていても、あとでできあがった仕事を見ると、「もっとできたのでは」と必ず毎回思うんですよね。
――それで落ち込んだりしますか?
毎回、落ち込みます。完璧だと思っちゃったら、次がない。「なんであそこであれができなかったんだろう」という悔しい思いや、「ほかの人だったらもっと上手にできたかも」と責任を感じるつらさは、次の仕事で挽回するまで、自分がずっと抱えてなきゃいけないと思っています。悔しい思いがなくなったら、私、やめた方がいい。悔しさが次の仕事への原動力になり、自分の成長のバロメーターだと思うので。
――ずっとその思いを抱えるというのはつらくないですか。
でも、私、あまりストレスって感じないかもしれないです。ワーッと大声を出したり、今回の映画のように「ひざまずけ」って普段は言わないようなセリフを言ったりする仕事がストレス発散になっているのかも。あと、食べたり、寝たりすると忘れちゃいます(笑)。
――次はどんな仕事に挑戦したいと思っていますか。
天海に合うんじゃないのと、いろんな役に声をかけてもらえて、一緒に仕事をしたいと思っていただけるような人間で常にいたいと思っています。

マイティー・ソー バトルロイヤル 11月3日から全国ロードショー
アスガルドの王子で雷神のソー。弟のロキやアベンジャーズの盟友ハンク、訳ありの女戦士と共に、故郷を恐怖で支配しようとする死の女神「ヘラ」に立ち向かう。
監督:タイカ・ワイティティ
出演:クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、アンソニー・ホプキンス、ケイト・ブランシェット
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン