繊細さとエネルギー
豪華絢爛なドレスと、遊び心あふれた街着――。イタリアの「ドルチェ&ガッバーナ」が今月上旬、東京都内で対照的な二つのファッションショーを行った。同じ地域で立て続けにショーをするのは異例。発表した服も今回のために特別にデザインした。デザイナーのドメニコ・ドルチェさんと、ステファノ・ガッバーナさんも来日し、服作りと日本への強い思いを表した。
「繊細な美しさがわかる日本人にこそ着てほしい」。美しい日本庭園のあるイタリア大使館で8日に行われたショーは、ガッバーナさんのそんな願いを具現化したものだった。紳士と婦人用の高級注文服で、日本人のために意匠を凝らしたという。
光沢のあるオーガンディに手書きで花柄を描いたドレスや、着物を取り入れた装いを発表。イタリアの伝統的な仕立て技術を駆使したスーツもあった。
一方、閉店後の伊勢丹新宿店で4日に行われた既製服のショーは、「ミレニアル世代」向けのものだった。主に1980年代以降生まれの若者たちで、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で絶大な発信力を持つ。
登場した101人のモデルも同世代のブロガーや女優らが務めた。頭には花飾り、ネックレスなどのアクセサリーを重ねづけし、シャツやドレスは大きなロゴやスパンコールで飾られている。スニーカーで店内を勢いよく練り歩くエネルギッシュなショーは、SNSで拡散された。

二つのショーからは、時代に柔軟に適応するブランドの遊び心と創造性、技術に裏打ちされた伝統的な服作りを大切にする姿勢が伝わってきた。ドルチェさんとガッバーナさんは「時代の変化とともに、私たちのブランドも進化していきたい」と話す。

1985年にブランドを創業した2人は今年4月、約25年ぶりに来日した。そのわずか半年後の再来日。「なぜ」と問うと、「前回の来日で、美しい日本、つつましくて温かい人たちにすっかり魅せられた。日本のみなさんとより親密な関係を作りたい」とドルチェさん。イタリア流の情熱的な愛を二つの特別なショーから感じた。
(生活部 谷本陽子)