世界4大コレクションの一つで、トレンド発信力が注目されているロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)。9月中旬に開催された2018年春夏シーズンは、英国らしさを打ち出す動きと、異文化のエッセンスを積極的に取り入れる動きが交じり合い、ブレグジット(EU離脱)を選ぶに至った英国の今を映し出していました。
上品でさわやかに
テムズ川の上流で毎年開催される伝統のボートレース(レガッタ)は、英国上流社会の夏の社交場です。1894年創業の老舗ブランド「DAKS(ダックス)」は、ボートレースの観戦へと出かける際のファッションからイメージを借りました。

白のシャツ、ネクタイ、ワイドパンツでそろえ、さわやかで上品な装いにまとめ上げました。白とベージュのストライプ柄は、パンツスーツをすがすがしく見せています。ネクタイの先をボトムスのウエストに差し込んで意外感を演出しています。

リネンやコットンの質感も涼やかなムード。独自柄の「ハウスチェック」は英国王室御用達らしいブリティッシュ感を漂わせていました。
英国ならではの技術を生かす
英国ブランドの「JOSEPH(ジョゼフ)」は、ガールスカウトの制服に大胆な変形を試みました。

両胸の張り出しポケットがミリタリー風のスカウトドレスは、ミニ丈でキュートにリモデル。ジャケットがミニ丈ボトムスを隠すスタイリングは、脚が長くセクシーに見える仕掛けです。

英国ルックの代名詞的なトレンチコートは、半身の肩掛けで安定して着られるよう、初めから仕立ててあります。いずれも英国ならではのテーラーリング技術を生かしてドラマチックな着姿に仕上げました。
洗練されたシンプルさ
シャツとパンツといったスタンダードな装いを磨き上げたのは「MARGARET HOWELL(マーガレット・ハウエル)」。白と黒をキーカラーに、グレーやネイビーなどの基本色に絞って、洗練されたシンプルさを印象づけました。

白シャツと黒パンツのすっきりした上下ツートーンにまとめつつ、シャツは大襟にし、パンツは裾を深く折り返して細部に表情を持たせています。シルクのネッカチーフは古風な風情。

着姿をスタイリッシュに引き締めていたのは、マニッシュなブラックシャツ。ブラウス、プリーツスカートは気品を薫らせていました。
踏み込んだカルチャーミックス
気鋭の男女2人組が率いる「MARQUES’ ALMEIDA(マルケス アルメイダ)」は、踏み込んだカルチャーミックスを打ち出しました。

モチーフに選んだのは、星条旗のしま模様と東洋趣味のドラゴン。アメリカと中国が交差するような提案で、いまの世界の姿を写し込んでいます。太いストライプが走り、ドラゴンが躍るというダイナミックな柄遣いでエナジーを注ぎこみました。

バイク乗りが好む黒革のライダースジャケット、ホルスタイン柄のカウボーイブーツなどにもウエスタン気分を投入。チャイナ服風の生地もオリエンタルムードを添えました。
シンプルの中に生きる力強いメッセージ
ファッションショーのあり方が問い直される中、パリのウィメンズブランド「MM6 MAISON MARGIELA(メゾン マルジェラ)」は、通りに面したガラス張りのショーウィンドー内にモデルが立つという形式のプレゼンテーション(展示会)で新作を発表しました。

白をベースにしながら、路上アートのグラフィティー(落書き)風の文字をプリント。文字のメッセージ性を味方につけています。

袖のないアウターは性別を感じさせない「ジェンダーレス」のシルエット。抑えた色遣いもシンプル感を際立たせていました。
今回のLFWで目立ったのは、おしゃれの世界におけるダイバーシティー(多様性)の広がりです。英国の原点に立ち返るような態度と、変容するロンドンを写し取るアプローチが交錯して、選択肢を一段と広げています。これまでのルールにとらわれない自分らしい着こなしに誘う提案も多く、それ自体がLFWの発信力になっていました。