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「善人の役は、私には向かないの。少し歪んだ性格とか、枠から外れたような女、その方が刺激的だし、やりがいがある」
このところ欧米からアジアに至るまで、文字通り八面六臂の活躍をしているイザベル・ユペールは、若い頃から巨匠クロード・シャブロルの作品で演技を磨き、毒やとげのある役もこなして、回りくどいことはせずに、本質へと一直線に進んできた女優のひとりだ。後戻りはできないと分かっていながら、不安もなく突き進み、その迫真の演技で、フランス映画界を代表する演技派女優の地位に上りつめたといってもいい。
昨年は『氷の微笑』の監督ポール・ヴァーホーヴェンによる衝撃的作品『エル ELLE』に出演し、ゴールデン・グローブ賞、セザール賞の主演女優賞に見事輝き、名実共に世界の頂点にいる女優なのだ。
今年6月、東京で開催されたユニフランス主催のフランス映画祭のために来日した彼女は、世界の映画界の大物スターとして、眩い輝きを放っていた。帝国ホテルで会った時も、ダークなパンツ・スーツ姿で颯爽と現れて印象的だった。
――――今回のあなたの映画『エル ELLE』について、話してくれますか。レイプの場面もあるし、出演を迷ったりしませんでしたか。
イザベル:いいえ。監督と話し合って、主人公ミシェルの性格を作り出したわけではないのです。ミシェルの役について、話し合ったことは一切ありません。私はフィリップ・ディジャンのこの原作が好きだったし、実のところフィリップと私が、原作をポール・ヴァーホーヴェンのもとに送りつけ、なんとか映画化までこぎつける手助けをしたのです。いわば私が最初に火を点けたのですが、私はよくそういうことをします。この小説は、きみのイメージで書いたような気がするよとフィリップはいってくれていた。そんな映画に、私が出ないわけがないでしょう?
――――過激な(レイプの)場面は、やはり大変だったのではないですか。
イザベル:全然。もちろんあの場面については、私がどのように動くかを、監督と事前に打ち合わせをしました。でもそれだけ。
イザベルはゆっくりと脚を組み替えながら、淡々とそう答えた。それをみていると、レイプの犯人が逃げ去った後、被害者の主人公がまるで何事もなかったように掃除を始める、というあの恐ろしい場面が頭に浮かんでくる。
ポール・ヴァーホーヴェン監督は、これが米国の女優だったら、レイプされる主人公の役は誰もやりたがらなかっただろうといっていたが、イザベルは自ら原作を持ち込んだのだから、そのプロ魂は相当のものだ。
――――これまで多くの巨匠と仕事をしてきたあなたですが、今後一緒に映画を撮りたい監督はいますか?
イザベル:そうですね。私の強い願望は、日本の素晴らしい監督と映画を撮りたいということです。アンスティチュ・フランセ東京で是枝裕和監督と対談をするので、彼みたいな方と仕事をしたいですね。
――――日本が相当お好きなのですね。
イザベル:前回は京都に行ったし、日本の文化は素晴らしいと来るたびにその思いが強くなっていきます。もっと滞在して、色んな場所に旅してみたい。それなのに今回は、一日中ホテルにこもってインタビューばかり。いらだたしい限りです。今回の旅は、欲求不満でいっぱいだわ。
それをきいていると、やはりイザベル・ユペールは、穏やかに満足した表情より、少し感情が表に出ている時の方がずっと味があるのが分かった。
今年、64歳。成熟した魅力を保ちながら何一つ諦めずに努力を重ねた結果、世界的ブレイクを自らの手で築き上げたのだから、成功をつかみ取った女性の輝かしい歴史といえるだろう。
巨匠ミヒャエル・ハネケとの『ハッピー・エンド(原題)』も撮り終え、プロデューサーの夫との間にできた娘で、女優のロリータ・シャマとの母娘共演の『バラージュ(原題)』も、いよいよ封切りが近いそうだ。
生き急ぐと途中で息切れするというが、そんな法則も彼女の場合、まったく通用しない。知性と演技、そして内に秘めた激しい感情といった最強の武器を携え、これからもまだ人々を驚嘆させ続けていくことだろう。
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