「プロトコール」のテーブルマナーには、たくさんの約束事があります。公式な会食ではフランス料理が供されることが多いことから、その基本を身につけることが大切です。知っておくと、取引先との会食や海外旅行先での食事にも役立ちます。
今回はご質問が多いカトラリーやナプキンのスマートな使い方を中心に、レディーとしての美しい振る舞い方もお伝えしましょう。
ゲストである前に、その場を作る一員である
会食の席は、人と人とが織りなす空間ですから、「私はお客様」という尊大な態度ではいけません。ゲストとして堂々と振る舞うのは大切ですが、その前に「自分もその場を作る一員」であることを心得ましょう。
催しやパーティーなどで席を決める場合は、まず上位席を定めます。たとえば、和室では床の間を背にした席、洋室ではマントルピース(暖炉)の前が上位席です。
椅子に座る際は、深く腰掛けて姿勢を整えましょう。正しく美しい姿勢は周囲の方々への敬意表現であると同時に、セルフコントロールのためでもあります。椅子には左側から出入りをします。これはプロトコールの「右上位」に基づくもので、上位の方に敬意をあらわすことになります。
席への持ち込みを許されたバッグは、椅子の右下に置きます。小さいものは膝の上に置き、その上からナプキンをかけても結構です。一部の国を除いては公式な会食ではお料理は左側からサービスをするので、その妨げにならないようにという配慮に基づくルールです。
口紅は食事の前にティッシュで軽く拭って
一般的にはナプキンは二つに折り、輪を手前にして膝の上に置きます。ナプキンには、口や手を拭くことや、料理の種や骨を出す際に、口元を隠すなどの使い方があります。ナプキンの使い方は様々ですが、端から使い、使った部分は内側に少しずつ巻き込むと、テーブルクロスもドレスも汚さずスマートです。端まで使い切った時には、スタッフの方に声を掛け、新しいものに取り換えていただきます。
口紅が気になる方も多いでしょう。べっとりとナプキンにつけてしまうのはタブーです。ご自分がおもてなしをする側で、真っ白なリネンを口紅で汚されてしまったらと想像してみてください。落ちにくい口紅では、なおさら悲しくなりますね。
また、グラスについた口紅を指で拭うことも、やめましょう。グラスが割れることを防ぐためです。そもそも、この振る舞いそのものが「美しい心にあらず」と言われています。食事が始まる前に、口紅を軽くティッシュで拭っておくことが思いやりであり、レディーのたしなみでもあります。
サービスをしてくださる方への気配りを忘れずに
カトラリーがあらかじめセットされている場合は、外側から順番に使います。グラスは右側、パンは左側です。食事の途中で手を休める場合は、プロトコールではナイフとフォークはハの字にお皿の上に置きます。これは諸国でのマナーの中庸を採用した形です。
ナイフの刃は必ず自分に向けてください。刃物は狩りの道具でもあり、相手に向けることは敵意の表れというサインにもなるからです。ナイフは押すときに力を入れ、引くときに力を抜くとエレガントに切ることができます。
パンは供されたときから召し上がってかまいませんが、手で一口サイズにちぎり、右手で口に運びましょう。左手を不浄とする宗教への配慮からつくられた大切なマナーです。
食事の終了時には、ナイフとフォークをそろえてお皿の奥の方に置き、左下側をあけ、サービスがしやすいように心を配ります。
このように、プロトコールのテーブルマナーは、文化や宗教への配慮はもとより、同席の方々やサービスをしてくれる方への細やかな気配りも随所にあります。基本にあるものは、相手の方を思いやる心なのです。
(取材/高谷治美)