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モンソー公園からほど近くに位置するニッシム・ド・カモンド美術館は、フランスの銀行家モイーズ・ド・カモンド伯爵が収集した繊細な18世紀のコレクションを収蔵する個人邸宅です。なんとあのヴェルサイユ宮殿の中にあるプチ・トリアノン宮を模して建てられた邸宅としても知られています。
ヴィジェ=ルブランの絵画やゴブラン織りのタペストリーがずらりと並ぶサロンを通り抜けると、当時の洗練された高級家具の数々が目の前に現れ、軽くパニックを起こすほどです。この収集品は間違いなくパリ装飾芸術美術館が嫉妬するほどのもので、何よりも趣味のよさと品ぞろえが素晴らしいのです。

私は色鮮やかな陶器が整然と並べられた食器コレクションの棚の前で、その美しさに気絶しそうになりました。深紅色の書物が並ぶ大図書室では、マリー・アントワネット時代の壮麗なインテリアが今もなお生き続けている空間に感動しました。それらは最近修復されたのですが、20世紀初頭に夢見られていた当時のモダンで快適な貴族の生活を訪問者に見せてくれます。例えば、「ダウントン・アビー」(イギリスの貴族を描いたテレビドラマ)に出てくるような装飾品で飾られた贅沢なキッチンは、まるで今でも誰かの帰りを待っているかのようです。
しかし、この物語が止まってしまったのは、伯爵の最愛の息子が戦死し(追悼のため、後に息子の名前を美術館に付けました)、娘も強制収容所で亡くなるという「カモンド家の悲劇」があるからです。彼はその後、ひとり大邸宅の中でひっそりと暮らして収集を続けたと言われています。後世のために収集したコレクションは、彼の死後、競売にかけられることを避けるため、邸宅を丸ごと国に寄贈して現在の美術館の形になりました。
私はこの美術館を出た後、何気なく目にした「その後、カモンド一族は強制収容所で亡くなった」と書かれたプレートを読み、大富豪一族であっても不幸はすべての人に平等に訪れるのだ、ということを改めて思いました。
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