「リーガ~ルポイント」
実際に訴えることがなくても、法律知識はあなたの身を守る!
剣道女子の西山温子弁護士が剣道の試合になぞらえて3本勝負で法律の知識を伝授。今回は、実際に被害に遭った場合の相談先についてです。
壱本目!自分を責めないで・・・裁判に訴えなくてもできること
前回「『訴えてやる!』セクハラ裁判、慰謝料相場はどれくらい?」というタイトルを見て、「現実には訴えたりはできないよ……」と思われた方もいるかもしれません。
セクハラの問題では、時に上司や会社が相手方になります。被害者は弱い立場に置かれていることが多く、会社に在職しながら裁判を起こすにはかなり勇気がいります。前回紹介した裁判例もそのほとんどが、被害者の退職後に起こされた裁判であるという厳しい現実があります。
しかしながら、現実を悲観して知識を得ることを決して諦めないでください。裁判に訴えるだけが手段ではありません。正しい知識は、あなた自身を守る武器になります。
セクハラの被害者は時に「自分を責める」思考に陥りがちです。「私に原因があるのではないか」「相談したら自意識過剰と思われてしまうのでは」といったふうに。しかし、もしも客観的な知識を持っていたら、セクハラに当たるのかを自分で判断し、「自分を責める」思考から抜け出せます。状況を客観的に理解できれば、「相談」することもできるはずです。
弐本目! 相談窓口いろいろ、利用してみるポイントは
もしもあなたや同僚がセクハラ被害に遭っていたら……どこに相談すればいいのでしょうか?
(1)会社に設置された相談窓口を利用する
会社(事業者)には、セクハラ対策について、社内で対策を講ずる義務があり、相談窓口の設置もその一つです。
注意が必要なのは、形ばかりの相談窓口が設置されている(プライバシー保護の対策が取られていない、問題を放置するなど)ケースがあることです。リーガ~ルの皆さんなら、その相談窓口が機能しているか、見極めることができますよね?
(2)都道府県労働局雇用均等室の相談窓口を利用する
職場でのトラブル解決のための組織が、各都道府県にあります。男女雇用機会均等法等の法律に基づいて設置されている労働局雇用環境・均等部(室)です。紛争解決の援助が目的なので、会社に直接言うことが難しいなら、相談してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、ここに持ち込まれるのはセクハラだけではなく、解雇や採用の問題なども含むのですが、相談内容の割合はセクハラが最も多く、45.4%(平成26年度)を占めているのだとか。やっぱりセクハラって身近な問題ですよね。
参本目! こんなことで弁護士に相談しても……OK! 法律相談を賢く利用して
何かのトラブルに巻き込まれたとき、人間関係に悩んだとき、相談する選択肢をあなたはいくつ持っていますか?
リーガ~ルの皆さんには、その選択肢に、ぜひ「弁護士」を加えてほしいと思います。「ハードルが高い」と思う人も多いかもしれませんが、正式に依頼する前に「法律相談」という形で弁護士に相談できます。自治体の無料相談もありますし、個別に相談する場合でも、人によっても違いますが、だいたい30分5000円(税別)程度でしょうか。
弁護士には守秘義務があります。あなたの意に反して相談内容が漏れることはありません。会社内に知られたくない、知人にはむしろ相談しにくい、そんなときにお役に立てます。
弁護士をしていると、悩みをため込んで、ため込んでどうにもいかなくなってから相談に来る方が多いことに気が付きます。もっと早く相談に来てくれていれば、打つ手はあったのにと残念に思うことが少なくありません。
いざ訴えるという場合には、重要なのは証拠集めです。早く相談に来てもらえれば、証拠の押さえ方や今後の対応を相談することができます。客観的に状況を精査し、つらい状況から脱出するヒントが見えてきます。
実際に訴えるかどうかは、状況次第で良いのです。ネイルや美容院と同じ感覚とはいかないかもしれませんが、自分の心を少しでも前に向かせるために、法律相談を賢く利用して下さい。
「リーガ~ルポイント」
セクハラは相談窓口を賢く利用。弁護士もぜひ相談を!