30代はもう甘えることが許されない年頃。責任のある仕事を任されたり、結婚や転職など大きな決断をしたり、自分とどう向き合っていくかを考える時期でもあります。日本の女性は何かというと「かわいい」を連発しますが、かわいいだけでは人生の転機を乗り切れません。自分の中に眠っている可能性を引き出すために、「かわいい」を卒業して、魅力的な大人にシフトしましょう。
個性と魅力を磨き、人と人を繋ぐ「コミュニケーション力」を高め、美しくしなやかに生きるための「大人の作法」を、清水彰子が伝授します。
「ビジネス」も「恋愛」も第一印象で決まる!
ビジネスや恋愛において、「第一印象が大切」というのは、よく聞かれること。初対面で受けた印象は長く心に残るものです。好印象を持たれれば、その後のコミュニケーションも取りやすくなります。逆に悪い印象なら、仕事や人間関係に影響が出るかもしれません。「初対面で好印象を与える、立ち方、歩き方、座り方」について解説します。
会社で取引相手やお客さまを出迎えるとき、最初に目に留まるのは、あなたの「立ち姿」や「歩き方」です。美しい姿勢でスマートに歩く姿は人目を引くものです。また、ほとんどの人は「座る」という行為にあまり注意を払いません。無意識にどすんと座っていませんか? 座ったあとの姿勢はどうでしょうか? ドタバタ歩いたり、どすんと椅子に座ったりしたら、あなたの印象は台無しでです。魅力的な大人の女性にふさわしい、立ち居振る舞いを身につけましょう。
◇美しい立ち居振る舞いは、まっすぐな姿勢から
美しい立ち居振る舞いの基本は正しい姿勢です。“正しい姿勢”と言われると、背筋をピンと伸ばす人がいますが、それでは正しい姿勢になりません。むしろ、背骨に負担がかかる場合があります。では、どうすれば正しく立てるのか。まず、壁を背にまっすぐ立ってみてください。
最後に、ふんわりした羽を体に乗せたような感覚で、肩の力を抜いてリラックス。この姿勢で、鏡の前に立ってみてください。見違えるほどエレガントな立ち姿になっているはずです。
いつもより後ろに引っ張られている感じがしませんか? それは、あなたがいつも前かがみで猫背だということです。まっすぐな姿勢の感覚を忘れないように、定期的に壁に沿って立ってみましょう。この立ち姿がすべての基本になります。
◇優雅な歩き方
まっすぐ立つことができたら、次は歩いてみましょう。急いでいるからといって、膝を曲げてドタドタ走ってだめですよ。まっすぐな姿勢から、少し爪先で立ち、ゆっくりと歩きましょう。腕や手の位置も大切です。親指を正面に向けて、中指は軽く服に触れるように。前に大きく腕を振るのではなく、後ろに引き気味にするとより美しく見えます。
◇スマートな座り方
立ったり座ったりする動作を意識したことがありますか? 忙しく働いていたら、そんなことに構っていられないかもしれません。でも、座っているときの足元は意外と人に見られています。だらしない印象を与えない、座り方を身に付けましょう。
面接などで、相手が前に座っているときの着席の仕方にもルールがあります。
座った後の姿勢や足元も大切です。

(1)椅子に浅めに腰かけたら、足は左右どちらでも構わないので、斜めに流します。
(2)左足は右足の後ろから、右足にそっと添えます。足元に奥行きが出て、足が長くきれいに見えます。このとき、決して右足に引っかけないこと。
(3)上半身がS字になるよう、手は足を流した反対側の足の上にそっと乗せてください。
意識して立ったり座ったりするのは、少々骨が折れるでしょう。正しい姿勢で優雅に歩くのも、簡単ではありません。でも、これが人と接するときの基本の作法です。「立つ」「歩く」「座る」の基本を身につけ、魅力的な大人への一歩を踏み出しましょう。
モデル*中津留真代/撮影*高梨義之
インタビュー*清水彰子さん
女性のトータルな美しさを引き出すレッスンやセミナーを提供している「セイバイアキコ」の代表、清水彰子さんにお話を聞きました。
――清水さんが「脱かわいい」に込められた思いは何でしょう。
清水さん:日本の女性は「かわいい」を連発しますでしょう? 何でも「かわいい」ですませてしまう。そこには可能性が感じられないんです。「かわいい」で一まとめにしてしまったら、一歩も成長できない。「かわいい」を卒業して、「クール」な大人の女性になってほしい。そんな思いを込めました。
――セイバイアキコを立ち上げたのはなぜでしょう。
清水さん:わたしがこれまで指導した方たちは、「いまの自分を変えたい」という共通の思いを持っていました。魅力的になりたいけど、その方法がわからないという人がほとんどです。自分を客観的に見て、将来をデッサンするのは容易ではありません。その人の持っている可能性や魅力を引き出すコーチの指導や、同じ目標を持つ人たちから指摘を受けることで、冷静に自分の個性を知ることができます。具体的な目標に向かってトレーニングする場として、セイバイアキコを立ち上げました。
――大人の女性になるために、身に付けるスキルや教養で、いちばん大切なことは何でしょう。
清水さん:わたしはいつも「美しい女性になりましょう」と言っています。そう言うと「わたしは姿の美しさをあてにしていません。そんなもの必要ない」と反発する方もいます。でも、それは勘違いです。わたしの言う“美しさ”は「感性が豊か」ということです。豊かな感性は、その人を魅力的にします。姿形(すがたかたち)は、あとからついてくるんです。
――30代でいまさら立ち居振る舞いやメイク術を学ぶなんて……と思う人もいるのでは。
清水さん:以前、講演会で30代の女性が、「私は専業主婦です。子育てと家事の毎日で、ほとんど外出もしません。美しくなったり輝いたりする必要がありますか?」と質問しました。わたしは、その方を説得して、セイバイアキコに来ていただきました。
マナーやメイクやファッションなど、これまで知らなかったいろいろなことを吸収して、彼女はみるみるうちに生き生きしてきました。卒業するときに、外出もままならなかった彼女が「先生、わたし仕事をしたくなりました」と言ってくれました。うれしかったですね。
人はいくつからでも変われますし、夢を持つこともできます。それが仕事でも家庭でも何でもいい。自分の人生に“光”を当てることができればいいんです。大切なのは、自分に自信を持って「夢」を確実に手にすることです。美しい立ち居振る舞いや、コミュニケーション力が、その一助になればいいと思っています。