30歳になった浅田真央「目標持つことが私の活力」

30代の挑戦

横山就平撮影

フィギュアスケーターの浅田真央さんが新年を30歳で迎えた。少女の頃から世界で戦い続け、26歳で現役を引退。20代後半はプロデュースしたアイスショー「浅田真央サンクスツアー」に情熱を注いだ。どんな30代を描いているのだろうか。

ゼロから出発

昨年9月に30歳になりました。30には0がつきます。だから30歳は「ゼロからのスタート」だと思っています。2018年から始めたサンクスツアーが4月に終わる予定で、そこが一つの区切りになると考えています。

20代はスケート一色でした。引退記者会見では「新たな目標を見つけたい」と話しました。すべてやりきった気持ちだったので、「スケートをしない生活になるだろう」と思っていました。

でも半年ほど、次の目標が見つからなかった。今思うと、焦る必要はなく、じっくり考える時間が大切だったんだと思います。自然と「自分にはスケートしかない。まだ滑れるのに滑らないのは申し訳ない」「スケートで恩返しを」という思いが湧いてきて、全国を巡るサンクスツアーにつながりました。

選手の時、大会のリンクでは、自分に負けないよう一人で戦っていました。だけど、アイスショーでは仲間やスタッフの皆さん、何よりお客さまがいます。自分が表現したいことに自由にチャレンジできる。この素晴らしい舞台で滑れて「あの時にスケートとお別れしなくて良かった」と実感しています。

リンク作りたい

次の挑戦も見えてきました。一つはスケートリンクを作ること。子どもの頃、「真央はいつか、将来の子どもたちのために作りなさい」とコーチに言われた言葉が、ずっと心にありました。引退後に様々な経験をして思いが強くなり、決心しました。まだ具体的ではないけれど、子どもたちが夢を追いかける場所だから明るいリンクにしたい。そこで子どもたちにスケートの楽しさを教えたい。

もう一つの夢は、自然の中での暮らしです。20代から、森や川がある場所で野菜などを育てながら暮らす生活に憧れていました。引退後、テレビ番組などで体験する機会があり、「いつかは」と思っていたのが、今から拠点を二つ持つ生活もいいかなと思うようになりました。30代で家族を持ちたい気持ちもあります。

夢に近づくため、少しずつ進めていきたい。スケートを始めた子どもの頃から常に目標を持って過ごしてきて、それは今も変わりません。目標を持つことが、私の活力です。気持ちも行動も前向きになれる。

ただ、頑張り過ぎると、パワーがなくなってしまう。私は「何事も完璧にやらないと」と考え過ぎてしまう時があります。頑張る時は全力で。パワーを蓄えるため、休む時はしっかり休む。挑戦を楽しむことが、私の30代のテーマです。

◇ ◇ ◇

【取材後記】 30歳の節目というと、20代が終わり、「もう一人前」と意気込むイメージが強かったので、真央さんの「ゼロからのスタート」という表現が新鮮だった。 どれだけのキャリアを築いてきても、自ら改めてスタートラインを引く。その姿勢に、謙虚さや潔さ、力強さを感じた。「自分の考え次第で、スタートはいつでも切れる」というエールにも聞こえた。 取材中は、声の大きさが十分か気にかけてくれ、その場の皆とアイコンタクトするなど、自然で細やかな気配りが印象的だった。好きなスイーツなどの話になると、とても楽しそうだった。朗らかな笑顔は、少女の頃のままだ。 浅田真央サンクスツアーが終わる予定の4月までは「全力でスケートを届けたい」と話していた。フィギュアスケーターとしての真央さんは見逃せない。そして、彼女の30代の挑戦からも目が離せない。(読売新聞社会部 大石由佳子)

「30代の挑戦」は、各界で活躍する女性たちにキャリアの転機とどう向き合ったかを、読売新聞の30代の女性記者たちがインタビューする企画です。

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浅田 真央(あさだ・まお)

1990年、名古屋市生まれ。2010年バンクーバー五輪銀メダリスト。全日本選手権6度、世界選手権3度の優勝。引退後、18年から浅田真央サンクスツアーを全国で展開。千秋楽公演は4月12、13日に横浜アリーナで開催予定。