壇蜜 今は損でも「いつか役に立つ」と受け入れた方が得

30代の挑戦

壇蜜さん
田中秀敏撮影

29歳でデビューし、タレントとして幅広く活躍する壇蜜さん。2019年に結婚し、人生の新たなスタートを切った。決しておごらず欲張らない、壇蜜流の生き方とは。30代最後に話を聞いた。

見せ方変えた

タレントの壇蜜さん

朝の情報番組出演を機に知名度が上昇し、舞い込む仕事をどんどん受けました。でも1~2年したら疲れてしまって。事務所を移籍し、テレビ出演を少しお休みしました。去って行く人もいましたが、追いすがる気力もありませんでした。

20代の頃に働いていた大学病院に戻ろうかとか、ホステスをしていた銀座で仕事を探そうかとか考えましたが、事務所を移ってすぐ辞めるのはあまりに失礼。ある意味、観念しました。華美な服装にハイヒールというスタイルから、季節に合った装いにし、自分の見せ方を変えて仕事を続けることにしました。

次第に、文章執筆や教養番組への出演といった新たな分野から声がかかるように。どんな仕事も粛々と、でも手を抜かずに取り組みました。日記を基にしたエッセーは6冊刊行し、小説も書きました。

思いもよらぬ形で生きたのが、過去の経験です。学生の頃、おしゃれや流行に興味がなく漫画ばかり読んでいたけれど、だから漫画に関する取材を受けられる。就活にはつまずいたけど、ホステス時代に男女のことを学んだから恋愛を語れる。

自立と結婚と

タレントの壇蜜さん

逆に言えば、今、損だと思うことも10年後、20年後に生きる可能性がある。世の中は思い通りにいかないことばかり。損したなと思っても、「いつか役に立つ」と受け入れた方が得なんじゃないでしょうか。

働いていれば理不尽な目にも遭う。だから、仕事中は「壇蜜」というコスプレをしているのだと思って折り合いをつけています。帰宅したら着ぐるみを脱いで休憩。でも、知名度を利用せず、おごらず私生活も粛々と生きるよう、自分の手綱を握っています。

19年11月、漫画家の清野とおるさんと結婚しました。周囲の話から、結婚すると損なんだとずっと思っていました。実家を出て10年近く。精神的にも自立し、この先一人でも生きていけるという自信がついて、いよいよ損することに向き合えるぞ、と。今こそ結婚の時と思ったのです。

今は、週の半分を私の家で一緒に過ごす生活です。ある時、清野さんに「これ、ドッキリなんじゃない?」と聞かれました。「あなたの納骨までドッキリだよ」と答えたら、「その時にはもう意識ないから、いいか」だそうです。

いつか、骨になった清野さんをざらざらと骨つぼに入れながら、「結構損したな」って思えたら、それはそれでいいかもしれません。

◇ ◇ ◇

【取材後記】手土産にクッキーを持ってきてくれた壇蜜さん。今はまっているという米国製の歯間ブラシも、「本当にオススメです」と1袋いただいた。とても気さくで、気遣いの人だ。

印象に残ったのは、「折り合いをつける」という表現。単なる「妥協」ではない。考え方を変え、穏やかな気持ちで現実を受け入れるという前向きな意味に思えて、勇気づけられた。「損せず得しかしてない人って、人生が早く過ぎちゃう気がします」。人気タレント「壇蜜」になるまでに紆余曲折を経たからこその言葉だ。そう言われると、遠回りすることも怖くなくなる。

語り口は終始穏やかで、しっとり。でも夫の清野とおるさんの話になると一転、少女のようなかわいらしい表情を見せた。「清野さんの、芯が強い中にも時々見える繊細さとかもろさみたいなものがいいなって。そのもろさを、ずっと見ていたい」。最高ののろけだ。納骨の時まで、どうぞお幸せに。(読売新聞社生活部 福元理央)

「30代の挑戦」は、各界で活躍する女性たちにキャリアの転機とどう向き合ったかを、読売新聞の30代の女性記者たちがインタビューする企画です。

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壇蜜(だん・みつ)

1980年、秋田県生まれ。文化放送で冠番組などを持つ。「OTEKOMACHI」の悩み相談に対する回答をまとめた新著「三十路女は分が悪い」(中央公論新社)を発売。