企業が注目するSDGsに働く女性はどう関われるのか?

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仲本千津さん… RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)代表(園田寛志郎撮影)

日本の企業の間で、国連の掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」への関心が高まっている。目標の達成のために取り組みを進めている人もいる。働く女性はどのような形で関わっていけるのだろうか。

仲本千津・RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)代表

東アフリカの国、ウガンダのシングルマザーら約20人が縫製、加工したバッグ類を、東京・代官山の店舗などで販売しています。

2011年の東日本大震災を機に、勤めていた銀行を辞め、アフリカで農業支援を行う民間活動団体(NGO)で働き始めました。高校時代から元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんに憧れていて、日本人で、しかも女性が海外の困っている人を支援する姿に、「いつかは自分も」と心に秘めていました。

14年にウガンダに駐在。マーケットで売られていた色鮮やかな布が目に止まりました。「きっと日本でも売れる」と考え、地元の女性を雇ってバッグの製造を始め、15年にオリジナルのブランドを作りました。働く場がなく、貧困にあえぐシングルマザーの雇用創出と自立を目指し、製造や採用など現地の運営は、彼女らに任せています。

同じ年に国連総会でSDGsが採択され、私の取り組みは「貧困の解消」や「ジェンダー平等の実現」につながると、自信を深めました。一方で、日本のジェンダーギャップに、問題意識を持ちました。

その後、日本とウガンダを行き来しながら、製品作りをしていますが、新型コロナウイルスの影響でウガンダに行くことができず、店頭に立つ機会が増えました。うれしいことに、「元気や勇気をもらった」という声を多く聞くようになりました。

取り扱い店舗が増え、製品の魅力だけでなく事業の意義が理解されてきていると感じます。

製品が日本の女性を元気づけ、同時にアフリカへの理解を深め、女性たちの生活向上と自立の支援になる。SDGsに取り組むことは、途上国支援にとどまらず、みんなの暮らしを豊かなものにしていくことでもあるのです。

不平等 人ごとじゃない

村上芽・日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャー

SDGsに早くから注目していたのは、長期的な視点でビジネスの成長に目を向ける投資家です。SDGsでも重要なテーマである、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した企業への投資は、ESG投資と呼ばれ、近年、広がってきています。こうした投資家の動向に合わせて、企業はSDGsの達成に向けた取り組みを始めています。

村上芽さん 日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャー
村上芽さん

SDGsというと、途上国の支援を思い浮かべがちです。しかし、日本にも性差別や貧困といった問題があります。

SDGsの17のゴールのひとつである「ジェンダー平等」は、日本でいまだに解決していません。2018年、医学部入試で女性の受験生が不当に不合格にされていたことが明らかになりました。女性への不平等な扱いが100年前の話ではなく、つい最近までまかり通っていたのです。

ほかにも、会議で発言を許されない雰囲気があったり、男性と同等の知識や能力があるのに昇進で差をつけられたり――といった働く女性の現実も聞かれます。

「貧困」についても、「給食費が払えない」という家庭は珍しくありません。新型コロナウイルスの影響でオンライン授業に切り替えるといっても、子供に自室とパソコンをそろえられる家庭がどれだけあるでしょう。

SDGsについての「知識」を得ることで、「意識」を高め、何らかの「行動」につなげられるはずです。弱者や少数派の立場を経験している女性は、自分の利益だけを考えず、困っている人の立場になって行動する傾向が見られます。こうした弱者の視点を生かして、働く女性が活躍することが期待されます。

(読売新聞メディア局編集部 鈴木幸大、安藤光里)

※SDGs 「Sustainable Development Goals」の頭文字からとった略称で、持続可能な開発目標のこと。2015年の国連総会で採択され、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「健康と福祉を」など17のゴールと、具体策や数値を示した計169の目標がある。

 

仲本千津(なかもと・ちづ)
RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)代表

1984年、静岡県生まれ。一橋大大学院修了。笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)などを経て、2016年から現職。

 

村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャー

京都大卒。日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年に日本総研入社。ESG投資の支援や気候変動リスクと金融などが専門。