中郡暖菜 孤独だった最年少編集長…雑誌作り「自分の感覚を頼りに」

30代の挑戦

(杉本昌大撮影)

甘くてかわいい世界観が特徴の女性ファッション誌「LARME(ラルム)」。生みの親である創刊編集長の中郡暖菜さん(34)は、今年3月の発売をもって休刊した同誌を買い取り、9月の復刊に向けた準備を進めている。自分を信じて、出版不況の逆風に立ち向かう。

最年少編集長

ラルムはフランス語で涙を意味します。「女の子の涙の代わりになって、笑顔と幸せを届けたい」という願いを込めて名付けました。

雑誌が大好きで、大学生の時にファッション誌で編集のアルバイトを始め、卒業後も働いていました。自分で雑誌が作りたくて徳間書店に企画書を持ち込み、採用されたのです。26歳。同社で史上最年少の編集長になりました。

創刊から1年で発行部数は23万部に。最初は一人でしたが、スタッフも10人ほどに増えました。遊ぶ間もなく、寝るか働くかの毎日。納得のいく雑誌を作り、売り上げも順調でした。

ところが3年ほどして、状況が変わったのです。雇用環境の悪化などから、一緒に働く仲間が次々に辞めてしまった。さらに会社から編集長交代も言い渡された。ゼロから作り上げたはずなのに、「誰にでもできる」「代わりはきく」と思われていたのが悲しかった。悩み続けた末、2016年秋、編集部を去りました。

孤独だけど

その後、海外を旅したり、別の雑誌で編集長をしたり。新たに雑誌を作ることはしませんでした。自分で名前を付けると愛着がわいてしまうから。

ラルムを離れて3年余りして、休刊の連絡がありました。何よりも大切なラルムを失いたくない。複数の企業に買い取ってもらえないか打診しましたが、出版不況の中、手を挙げるところは見つかりません。一方で、「中郡さんが運営や制作をするなら出資する」という声をいくつももらいました。その言葉に「自分がやるしかない」と心を決めました。今年3月、会社を設立して資金を集め、徳間書店からラルムの事業を譲り受けたのです。

いい雑誌を作るには、自分の感覚が一番大切だと、離れて痛感しました。いろんな人の意見を取り入れた方がいいと思った時期もありますが、雑誌の魅力は薄まってしまう。今は一人で考えて決断しています。編集長は孤独だけど寂しさは感じません。

読者のターゲットは今も変わらず10代後半から20代。若い子のトレンドや感覚に興味があり、常に情報収集をしています。30代はこうあるべきだとか、年相応という考え方はいや。

編集者として、モデルやカメラマンらと自分の思い描く世界を作ることができるのは、何事にも代えがたい幸せ。「読んでよかった」と思ってもらえる雑誌に挑戦し続けます。

◇ ◇ ◇

【取材後記】ファッション雑誌の最年少編集長、辞めた後も別の出版社で編集長に抜擢されるなど、同世代で活躍する女性としてずっと気になる存在だった。経営者という新たな挑戦に、「わからないことだらけで大変だけど、楽しい部分もある」と屈託無く話す姿がすてきだった。
雑誌作りに関しては、「自分の価値観を信じる強い女性」という印象だ。20代の頃は開催中の美術展や写真展を見て回り、何が好きで、嫌いかにとことん向き合った。心ひかれた絵画や写真のポストカードを集め、構図や光の入り方を研究したという。そうして培った自身の価値観やこれまでの経験に自信があるからだろう。「悩んだ時は一人でじっくり考えて決める」という言葉が心に残っている。
「私は何を大切にしたいのか?」。忙しい日々でおざなりにしてしまうこの問いに、改めて向き合おうと思った。(メディア局編集部 山口千尋)

中郡 暖菜(なかごおり・はるな)

1986年、千葉県生まれ。女性ファッション誌「LARME」運営会社代表取締役兼編集長。雑誌の制作だけでなく、物販やイベント事業なども手がける。