花田真寿美 「美」でアスリートをサポートしたい

30代の挑戦

(写真・吉川綾美)

東京五輪・パラリンピックを前に、スポーツ選手への注目は私生活や容姿にも及ぶ。花田真寿美さん(33)の仕事は、選手にメイクなどを教えること。元バドミントン選手で、ミス・ユニバースを目指したモデルの経験を生かし、美の側面から選手の自信を支える。

膨らむ劣等感

高校時代、強豪校でバドミントンに打ち込みました。部の伝統で角刈りにし、顔はニキビだらけ。1メートル75の長身もあり、見知らぬ男子高校生からすれ違いざまに「キモっ」と言われたこともあります。自信が持てず、友人に会うのも嫌でした。

「レギュラーになって日本一」の目標はかなわず、劣等感は膨らむ一方。大学入学後も続けましたが、また努力が実らないのが怖くて、途中で引退しました。

心に穴が開いていた時、2007年ミス・ユニバースの森理世さんを知りました。かっこよかった。就職活動の合間に日本大会を見に行き、涙が出た。「私もここに立ちたい」と、周囲の反対を押し切ってモデル事務所に入りました。

ミス・ユニバースを目指す中で、メイクなどに加え、内面との向き合い方も学び、自分の可能性を信じたいと考えるようになったのです。

憧れの日本大会には進めなかった。でも、「ビューティー」の前向きな力を、いつも猫背だった高校生の自分に教えてあげたかった。だから、今頑張っている選手たちに伝えたいと、29歳で会社を設立。「アスリートビューティーアドバイザー」として活動を始めました。

当初はチームや団体に営業に行くと、「選手が競技に集中できない」「選手たちが美しくないと言っているのか」と、理解してもらえなかった。資料を投げつけられたこともあります。

落ち込むとインターネットで別の仕事を探しました。でも、調べるうちに今の仕事がやっぱり一番だと思い直す。次第に活動を評価してくれる人が増え、日本代表選手のほか、障害の有無や男女を問わず、依頼が来るようになりました。

メイクを力に

選手へのメイクは、汗に強く、自然な健康美を意識します。姿勢のアドバイスや、一緒に服選びをすることもあります。

花田さん愛用のメイク道具

新型コロナウイルスの感染拡大で全ての仕事が中止になり、5月から急きょオンラインレッスンを始めました。画面越しの指導は難しい。でも、なかなか会えない地方の選手とも簡単につながることができたのは、新たな発見でした。

アスリートビューティーアドバイザーは自分で考えた肩書です。これを職業として確立させたい。指導者育成のために昨年、協会を作りました。食事や心のサポートをできる仲間を集め、チームとして活動するのが目標です。困難に直面しても、努力しただけ未来の自分はきっと何とかしてくれる。その自信と期待が、挑戦への原動力です。

◇◇◇

【取材後記】きれいな女性と話す時はいつも少し緊張してしまうのだが、今回は違った。こちらが話を聞く側なのに、相談にのってもらってるような不思議な感覚になった。相手に寄り添う姿勢が、多くの選手から支持されているのだと思う。お酒好き、ららぽーとで服を買うといった共通点も見つかり、親しみが増した。
スポーツ界に、その競技の経験がない人が入り込むのは難しい。スキージャンプ女子の高梨沙羅選手がメイクで非難を浴びたように、選手のおしゃれに抵抗を感じる人も少なくない。「私、ずぶとすぎるので」と笑うが、新たな道を切り開くのは大変だったと思う。それでも「本当に欲しいもの以外に時間を使うのはもったいない。そうすることで、自分が早く成長できる」。
常に目標にまっすぐに向き合ってきた花田さんの言葉を聞いて、私も何か新たな目標を定めてみようと思った。(読売新聞運動部 横井美帆)

花田 真寿美(はなだ・ますみ)

アスリートビューティーアドバイザー。1987年、富山県生まれ。2019年、日本アスリートビューティー協会を設立。今年結婚した夫と2人暮らし。

【あわせて読みたい】
萩生田愛「迷ったら ワクワクする方へ」  
山内美香「人と食つなげるスイッチに」
ソニン「自分からアクションを起こす」