萩生田愛「迷ったら ワクワクする方へ」

30代の挑戦

(写真・吉川綾美)

アフリカ産のバラを輸入販売する萩生田愛さん(38)。製薬会社を辞めて、アフリカでバラと出合い、34歳の時に東京都内に店を構えた。新しいことに挑戦するたびに、自分の気持ちに正直に決断をしてきたという。

アフリカの貧困

ケニアやエチオピア産のバラを扱う「アフリカローズ」という店を都内で経営しています。1本800円と少し高額ですが、大きくて見栄えもよく、記念日などに利用されています。

アメリカの大学で国際関係学を専攻し、アフリカの貧困の背景にある、先進国による労働力の搾取の構造について学びました。衝撃を受け、「いつかアフリカの現状を変えたい」と思うようになりました。

卒業後、日本の製薬会社に就職。でも、アフリカへの思いは捨てきれず、安定した会社員人生を送るか、興味のある道を選ぶか、1年間悩みました。自分の心の声に従い、29歳で退社。NGOのボランティアとして初めてケニアに行き、学校建設に携わりました。

ただ喜びと同時に、違和感も感じたのです。現地の人は寄付や援助に慣れきっていた。どうすれば本当の自立の手助けができるのか。

バラとの出合い

半年後、帰国が迫る中、商業施設で汚れたバケツに入った大輪のバラに出合いました。花びらが肉厚で色彩豊か。茎もがっしりと太く、日本のバラと全く違う。買ったら、2週間も咲き続け、生命力の強さに驚きました。

当時、ケニアのバラの輸出量は世界最大規模。なのに日本ではほとんど知られていない。輸入販売すれば、現地の人の雇用も創出できると思いついたのです。

帰国後、早速2500本輸入し、都内で開かれた催事に2日間出店し、販売しました。ところが半分以上売れ残って、大赤字。でも、「アフリカのバラなんて知らなかった! きれい」という来店者の反応に、在庫さえ計算すれば、ビジネスになる手応えも感じました。

そこで、始めたのがオンラインショップです。予約分のみ受注し、在庫を抱えない。客との接点が増える店舗を持つのが夢でしたが、在庫リスクや人件費を考えると怖くて。

そんな時、ケニアで出会ったある女性を思い出しました。勤め先を不当に解雇されたものの、読書好きを生かして本屋を開店。3年で以前の給料を超えたと、笑顔で話してくれました。力強く咲き誇るケニアのバラのような彼女の明るさやたくましさに背中を押されました。

仕事に責任感や正義感は大切。でも楽しくなければ続けられない。自分の気持ちに正直に。迷ったらワクワクする道を選びます。今は、アフリカに農園を持つ構想を膨らませています。

◇◇◇

【取材後記】写真撮影のために東京・広尾の店舗に現れた瞬間、場の空気がパッと華やぐのを感じた。取材中もよく笑い、記者ともまるで昔からの知り合いのように接する。明るく、バイタリティーのある人柄が伝わってきた。

 初めてバラを輸入したときに大赤字だったこと、オンラインショップが不調になったことなど、苦境について話すときでも常に笑顔だ。その裏には失敗の原因をしっかりととらえ、対策を考える論理的思考と、一つ一つの経験をバネに、乗り越えていく強さがある。「『Follow your heart but take your brain with you(心に従いなさい。しかし頭も使いなさい)』という言葉を大切にしているんです」と教えてくれた。

 「もっとアフリカで雇用を増やしたい。そのための事業を練っている」と目を輝かせながら話した。次の目標に向かい、突き進む姿はケニアのバラのように力強かった。(読売新聞生活部 野口季瑛)

萩生田 愛(はぎうだ・めぐみ)

1981年、東京都生まれ。バラ輸入販売会社社長。東京・広尾と六本木ヒルズに店舗を持つ。著書に「アフリカローズ 幸せになる奇蹟のバラ」(ポプラ社)。

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