ソニン「自分からアクションを起こす」

30代の挑戦

(写真・吉川綾美)

今年、デビュー20周年を迎える女優のソニンさん(37)。与えられたスケジュール通りに動くアイドル歌手時代から、名だたる賞に次々と輝く実力派女優へと変容し、輝きを増している。その土台となったのは30歳を目前に決めた米国留学だった。

舞台で達成感

17歳でユニットデビューしましたが、メンバーの不祥事により2年ほどで活動休止に。その後は500キロ・メートルのマラソンに挑戦したり、肌の露出の多い衣装で歌ったりと、芸能界で生き残るためにハードな仕事もこなしてきました。飛び抜けた才能があるわけではないから、与えられた仕事を必死でやるしかなかったんです。

転機となったのは、2008年のミュージカル「ミス・サイゴン」。オーディションでヒロインのキム役を勝ち取りました。カットもNGも出ない舞台で、役を生きる3時間は楽しくて、それまでにない達成感があった。大好きな歌を歌える喜びもあり、カチッとはまる感じがしました。

経験を重ねる一方で、ミュージカルの本場であるニューヨークで歌や演技を学びたいという夢が膨らみました。受け身ではなく、自分でアクションを起こす大切さを実感し始めていたんです。

NYへ強行突破

文化庁の新進芸術家海外研修制度のことを知人に聞き、事務所に内緒で応募しました。2割ほどの合格率でしたが念願がかない、12年にニューヨークへ。「仕事が順調なのにもったいない」などと事務所には反対されましたが、強行突破です。

スタイリスト:Die-co★、衣装協力 Three Four Time/ジオン商事

滞在期間は1年半。一時帰国が認められない分、集中できました。様々な指導者に幅広いジャンルの歌や演劇などのレッスンをつけてもらったり、演劇学校に通ったり。

一番心に残ったのは、人種や貧富の差など、複雑な環境下でもタフに生きる人たちの笑顔でした。どんな時も笑顔を作れる心の余裕を持ちたいと思いました。

31歳で帰国して以降は、仕事への向き合い方が変わりました。アイドル時代は期待に応えようと無理をして心身を壊すこともありましたが、今は責任を自覚しているから絶対、無理はしない。その結果か、演劇賞もいただけるまでになりました。

今年4~5月に公演予定だったミュージカルは、新型コロナウイルスの影響で中止になりました。3か月ほど稽古してきたのに開演できず、心の置き場がわからないのが本音です。

改めて、舞台で芝居ができるのは奇跡だと感じています。最近はユーチューブで歌やメイク動画の配信も始めました。喪失感に浸るのではなく、再び舞台に立てる日までどう成長していけるか、今できるアクションを続けたいと思います。

◇◇◇

【取材後記】4月上旬の撮影現場は、緊張感が漂っていた。新型コロナウイルスの影響で、ソニンさんに近づくメイク担当者らは手指消毒をして、必要以上に話をしない。記者とは一定の距離を取っていたこともあり、近寄りがたい女優のオーラも感じた。
一方、インターネットを通じたインタビュー取材でのソニンさんは、表情豊かでよく笑う人だった。
「自宅にいるのに、フラフラですよ」。動画投稿サイト「ユーチューブ」での配信に、役者仲間との朗読劇――。撮影や編集、本格的なレコーディングも自宅でこなす。「ここ3~4日はまともにご飯も食べていないんだから」。身ぶり手ぶりを交え、前のめりで話す表情からは充実感がうかがえた。
外出を自粛し始めた頃から、「自分は何ができるのか」を考えているという。準備していたデビュー20周年の企画も、新たな形でプロジェクトを進めている。朗読劇も企画から携わった。舞台に立てない苦しい状況でも、挑戦を続ける姿に力強さを感じた。 (読売新聞生活部 林理恵)

ソニン
女優

1983年、高知県出身。ダンスユニット「EE JUMP」としてデビュー後、バラエティー番組などで活躍。現在は舞台を中心に活動。2016年に菊田一夫演劇賞、19年には読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。

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