押切もえさん「幸せになる覚悟はあるか?」と自分に問う

インタビュー

 1月から「お悩み相談」のアドバイザーに加わる押切もえさん。モデル、小説家、画家と多彩な活躍を見せる一方、私生活では昨年3月に長男を出産しました。いつも前向きで様々なことに挑戦している押切さんに、現在の生活の様子や自身の悩みを解決する方法などについて聞きました。

できないことに目を向けない

――昨年3月に出産されました。仕事と子育ての両立はどうしていますか?

 子育てが始まってもうすぐ1年になります。シーズンオフの期間中は夫(プロ野球・千葉ロッテマリーンズの涌井秀章さん)がすごく面倒を見てくれます。お風呂に入れてくれたり、朝方、子どもが起きた時に抱っこして寝かしつけてくれたりすることもあるので、とても助かっています。私が日中、仕事の時は、仕事場に連れて行ったり、お互いの両親に助けてもらったりしながらやっています。

 仕事と育児のバランスをどうとるのか葛藤することはありますね。子育ては充実していますが、本を書く時間はなかなかとれません。でも、今は気にしないようにしています。できないことばかりに目を向けず、今できることに全力で取り組もうと思っています。

――悩んだ時はどうやって気持ちを切り替えていますか?

 過去にも、所属事務所がつぶれてしまい、アルバイトをしながらモデルをやっていたこともありました。私はすごく不器用な人間なんです。でも、壁が立ちはだかっても、どんどん気持ちを切り替えて行動するようにしています。「悩んでいてもしょうがない」って考えるようにしています。

状況を変えるためにはリスクも

――気持ちを切り替えるコツはありますか?

 最近は「幸せになる覚悟はあるか?」って自分に問うようにしています。「これを乗り越えればもっと楽しい状況になるかもしれないよ」と心の中で整理して、「(覚悟が)ある」と答えて乗り越えるんです。

 大げさに聞こえるかもしれないけれど、日常のほんの小さなことにも当てはまります。例えば、おいしいパン屋さんに回り道をして寄るかどうか。頑張って歩けば、おいしいパンを食べて幸せになれますよね。旅行に行くのは、それまでに仕事を終わらせて準備をしなくちゃいけないから大変だし、面倒くさい。だけど、行ったらきっと楽しい時間を過ごせます。

――年齢を重ねると腰が重くなってしまいます。

 「なんとかなる」っていう若さのノリだけではやっていけなくなる。失敗も計算できるようになると、リスクもとりたくなくなる。面倒なことから逃げるのは効率的だし、賢いと思います。でも、それじゃ現状は変わらない。もし今の状況を変えたいなら、ある程度自分の考え方や行動を変える必要があると思います。

――雑誌の読者モデルからスタートし、21歳の時に女性誌「CanCam」、2006年には、「AneCan」の専属モデルになり(16年に卒業)、順調にモデルのキャリアを積み上げていました。その傍ら、13年には、長編小説「浅き夢見し」で小説家としてデビュー。16年に刊行された「永遠とは違う一日」は、山本周五郎賞にノミネートされました。順調に見えるキャリアですが、スランプなどはありませんでしたか?

 モデル生活が長かったこともあり、「いつものモエで、いつものメイクで」と言われ続けて悩んだことがありました。ファッションも好きだったけど、髪形や洋服のスタイルが固まってしまうのが嫌で、全然違うテイストの私服を買って、1回しか着なかったこともあります。「これはしちゃだめ」「こうやって」と周りの人から言われたことをその通りにやっていたけれど、もっと自分から意見したり、行動を起こしたりしてもよかったのかな、と反省しています。

心情を文章や絵で表現したい

――スランプから抜け出すきっかけはどんなことがありましたか?

 30歳くらいから始めて今も続いている、絵を描くこと、文章を書くことです。モデルの仕事は、まずオファーがあって、衣装、ヘアメイクをしてもらい、スポットライトを当ててもらうので、「与えられる」という印象が大きかったんです。だから、自発的にゼロから何かを作ることに関わってみたかったし、「心情を文章や色で表現してみたい」と思いました。そこで学んだことは、モデルの仕事に生かすこともできました。やればやるほど深くて面白いんです。視野も広がりました。

恋愛、こじらせていた

――押切さんが涌井さんと結婚したのは、36歳の時。同世代のモデル仲間が先に結婚していく中で、焦りなどはありませんでしたか?

 めちゃめちゃこじらせていましたね(笑)。良いお付き合いはありましたが、仕事を自分なりにやり遂げてからじゃないと結婚したくなかった。でも、ある時期以降から、どんな仕事をしても大体最終的には「いつ結婚するの?」「どうして結婚しないの?」と聞かれるのがお決まりになっていました。

――遠慮がない感じですね。

 「絶対に結婚したくないわけじゃないけど、今すぐしたいわけでもないし……」とはっきり言えなかったのもよくなかったのかもしれません。ある密着番組の撮影時には、ディレクターさんから「最後に『寂しいです』って言ってください」って言われて、モヤモヤしたこともありました。

目の前の幸せを大切に

――涌井さんとの結婚に踏み切れたのは何があったのでしょうか。

 夫からは、1年ほどアプローチをされていましたが、自分に野球選手の妻は務まらないと思っていたし、モデルをしていたけれど私生活は地味なので、「華やかさを求めているなら違うから」と断り続けていました。そんな私に対して夫は「そういうのは求めてないから」とずっと言い続けてくれました。

 付き合い始めてから結婚まではスムーズでしたね。夫に「もっと早く付き合って結婚して、出産してもよかった」と言ったら、「だから俺の言った通りでしょ」と言われてしまいました(笑)。当時は「幸せになる覚悟」ができていなかったんです。結婚は、相手や家族も巻き込んでしまうから失敗できないと必要以上に慎重になっていました。でも、起きてもいないことをあれこれ不安に考えるのよりも、自分の直感やその時その時の気持ち、可能性を信じて前に進むことが大事。目の前の幸せを大切にしていくことで、今があるんですよね。

 仕事や恋愛で失敗したり、モヤモヤしたり、いろんな経験をしましたが、「お悩み相談」のアドバイザーを務めることで、それが誰かの役に立ったり、元気の素になれたらいいなと思っています。

(取材・文/山口千尋、写真/今野絵里)

押切 もえ(おしきり・もえ)
モデル、小説家

 1979年生まれ。千葉県出身。雑誌「Popteen」などの読者モデルを経て、女性誌「CanCam」、「AneCan」の専属モデルとして活躍。2013年小説「浅き夢見し」で小説家デビュー。16年には小説「永遠とは違う一日」が山本周五郎賞にノミネートされた。15年、16年、17年と3年連続で「二科展」で入選するなど、多方面で才能を発揮している。

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