洋裁が大好き。仕事と趣味の両立のコツを教えてください。
最近、女性誌のモデルが着ているものや、市販の服がまったく魅力的に見えなくなってきて、着たいものがありません。
それなら自分で作ってはどうかと思い、趣味で洋裁を始めました。
ところが、いざ色々作ってみると、技術がないことに加え、自分の選「生地」眼がないために微妙な服しか出来上がりません。いまのところ、2着に1着はタンスの肥やしになっています。
まあや先生のカラフルな服は大好きです。でも、きっと見る人、着る人を選ぶんじゃないかと思います。
先生はどうやって医者をしながら、服作りのセンスを磨きましたか? いつから「このセンスで行こう」と自信を持ち始めましたか?(ハンドルネーム:柿)
A.自分を知り、自分らしさを表現する方法を見つけることが、センスにつながる
まず初めに、私はいわゆるモデルのような体形ではないので、「ファッションを語ってほしくない」「本当にデザイナーなの?」という意見は百も承知でございます。そんな私が偉そうに、回答することをお許しください。

洋裁の趣味。とってもよいですね。コスプレの流行か、既製服がつまらないからか、世代、性別を問わず、服を自作する人が増えているように思います。
一般に「今年の流行はこれ!」と提示されると、そのはやり物を購入し、そのシーズンを乗り越えたら、次の流行に乗り換える人が多いですよね。はやりを取り入れた安価なファストファッションが広がり、高い洋服の売れ行きが落ちていて、私もデザイナーとしての厳しい現実をひしひしと感じております。
こうした流行の服が売れるのは、自分のセンスに頼るよりも、流行に乗った方が確実にみんなに置いていかれず、後ろ指も指されずに、無難に「今どき女子」になれるからですよね。これはこれで、一つの文化。しかし、私の意見としては、残念ながらそんな人は「“ファッションセンスの良い人”ではないのかな?」とは思います。
「自分を知り、自分にこだわる」
センスを磨き、ファッションとして見せるにはどうしたら良いか?
それは、「自分を知り、自分にこだわる」ことでしょうかね。
第1歩として、「自分とは何者か」を知ることです。
長所や短所、好き嫌い、他人から見た自分(客観性)など、自分と向き合うことで、自分をどう表現するか、理想の自分とは何か、が見えてきます。さらには、TPOに合わせて、自分をどう見せるべきか、なども考えられるようになります。
次に、自分の好きなことからでいいと思いますが、教養を深め、リサーチをすることです。自分の好きなことが、なぜ好きで興味があるのか。好きになった理由を説明して、他人に理解を求めてみる、とか。逆になぜ嫌いなのか、ということをやってみるのも面白いです。
それは、ファッションと関係のない分野でも良いのです。文学や歴史、生物学、美術、音楽、建築、はたまた食べ物、社会学的なこと、スポーツ、アニメ、鉄道、ゲームなんでも良いです。要は、教養を深めることです。広く浅くでもきっかけになりますし、一つを深く学ぶことがさらに良いでしょう。

私が最初にアートやデザインについて学び始めたときに、一見関係のない一つのテーマから、あらゆる方向にアイデアを広げ、作品に繋がる、ということを経験しました。ロンドンの授業で、嫌いなことをテーマに、生地のデザインに取り組みました。私は、「小ぶりの花柄」の洋服が苦手です。理由は、花柄のかわいらしいイメージが私にはハードルが高く、「かわいい」という印象をつけたい時の、安易な方法と思われる気がして、ひねくれ者の私には抵抗があるというわけです。
でも、そこを克服するための服を考えてみる、というのは、一つのプロジェクトになります。私の場合、嫌いを少し克服するためのデザインとして考えた服が「皮下内臓脂肪CT」で製作した花柄テキスタイルだったんです。
このように、自分を知り、自分にこだわることで、自分らしさが見えてくる。そんな生き方を表現する手段の一つがファッションであり、他人はそこにセンスを感じるのではないでしょうか。自分のこだわりからぶれず、流されず、表現し続けていることが大事なのかな、と思います。
「黒にこだわり、黒を纏う」
「小物好きの、ファッションの演出」
「年代を感じさせない女性らしさの表現」
などなど、自分を知り、こだわった結果、生まれた答えが出てくるはずです。
と、「カラフルデブ」がお送りしました。
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