花房観音さん「人に『いいね!』をもらうより、自分の幸せを探した方がいい」

お悩み相談アドバイザー花房観音

 女性の性愛や情念を描いた作品を数多く発表している作家の花房観音さん。京都に住み、バスガイドとしての顔もあります。お悩み相談のアドバイザーとして回答を寄せてもらう花房さんに、豊富な人生経験と働く女性としての本音を聞きました。

–––– 第1回団鬼六賞の大賞を受賞したのがデビューのきっかけですね。

 文章を書く仕事につきたいとぼんやりとした思いを持ちながら、京都でバスガイドをしていました。ところが、2009年春に新型インフルエンザが流行し、行楽シーズンなのにパタッと仕事がなくなった。40歳手前の独身で、給料も入らず、せっぱつまって、新人賞に片っ端から応募したんです。

–––– 官能小説に抵抗はありましたか?

 団鬼六さんの本はほとんど全部読んでいて、団さんの世界の中に自分のオリジナリティーとして、京都が舞台の小説なら書けるかな、と。百貨店の地下で美しい和菓子を見て思いつきました。2011年3月の授賞式では、団鬼六さんと、私が影響を受けたアダルトビデオ監督の代々木忠さんに祝ってもらったのがうれしかった。

–––– 女性が性を書くと、色眼鏡で見られる気もします。

 私は田舎の保守的な家庭で育ち、20歳を過ぎてから男女が本能で向き合う代々木さんの作品に、価値観を揺さぶられました。だから、性を通して人を書きたいと思っていましたが、官能小説家と言われたことは想定外。男の妄想をかき立てる神秘的な美人であることや自身の性体験の告白を期待され、葛藤がありました。デビュー後に女性向けの小説を別の出版社から依頼され、女性自身の性や情念を描くという自分が書きたい方向に行けたんです。

–––– 最新作の「わたつみ」には、花房さんの経験が反映されていると聞きました。

 22歳年上の男性に貢ぎ、借金を抱えて、30代になって実家に連れ戻されました。この町を出てやると思って大学に行ったのに、その時は、自分の人生終わったなと思った。けれど、工場で働いて、出会った人たちが面白かったんです。小さな町の密接した人間関係と、いろんな思いを抱えながら働く女の強さ。都会とは違う生々しさがありました。

–––– 花房さんの作品には女同士の葛藤や本音が映し出されています。

 女同士は、仕事、結婚、出産とかで、話が合わなくなっていく。私は結婚した時に子供を持たないと夫と決めたのですが、お金を持っていても、仕事で成功しても、「子供がいなければ負け」という価値観を男性だけじゃなく同性から食らうことがあります。不倫が発覚した時のたたかれ方も女性の方がきつい。女性が自由になったかというと、全然そうはなっていないのではとも感じます。

–––– 同調圧力があるということでしょうか。

 どうしてそんなに人目を気にしなければいけないんだろう。やっぱり生きづらいなと思うんです。雑誌で「モテメイク」「愛され服」といった言葉を見ましたが、そもそも、そんな万人向けの「モテ」「愛され」で釣れる男はつまらん男やろ、愛されるために気を使うより自分の好きにしたらええやん、と私は思いますね。

––––  アドバイザーとして、悩む女性に対して一言。

 周りの30代の女性を見ていると、悩まないでいいことに悩んでいる。きれいで仕事もできるのに、情報に流されて、がんじがらめになっているのかもしれません。パワースポットを巡っても神様は幸せにしてくれない。やりたいことやらずに後悔して、人をうらやむより、目の前の自分の幸せを探せたらいいなと思います。

花房観音(はなぶさ・かんのん)
作家

 京都市在住。京都女子大学中退後、映画会社、旅行会社などに勤務。2010年「花祀り」で第1回団鬼六大賞を受賞し、作家デビュー。12年に発表した「女の庭」など、女の性愛や情念を描いた作品で注目を集める。近著に「わたつみ」(中央公論新社)、「楽園」(中公文庫)など。花房観音HP花房観音御開帳