仕事と出産 減る卵子、妊活はいつから?

「どうする仕事と出産」セミナー

 「大手小町」と読売新聞の医療情報サイト「ヨミドクター」がコラボしたイベント「どうする? 仕事と出産」(NTTドコモ「dヘルスケアパック」協賛)が昨年11月28日、東京・大手町のよみうり大手町小ホールで開かれました。第1部は産婦人科医のそん美玄みひょんさんによる基調講演、第2部は、プロゴルファーの東尾理子さん、少子化ジャーナリストで作家の白河桃子さんを交えてトークショーが行われました。セミナーの内容を4回にわたって紹介します。

卵子は毎月1000個減っていく

卵子の数の変化などについて解説する宋さん(昨年11月28日、読売新聞東京本社で)=高梨義之撮影

講師:宋美玄さん(丸の内の森レディースクリニック院長)

 こんにちは。「産む」と「働く」をテーマとしたまじめなお話ですが、聞いていただけたらと思います。

 晩婚化、晩産化がどんどん進んでいて、2011年には平均初産年齢が30歳を超えました。「最近の女性は働いて自分の好きなことばかりしているから、産むのが後回しになっている」というようなことを、年輩の男性などが言ったりします。ですが、それには不景気が続き、若いうちに家庭を持つのが難しいことが大きく影響しています。

 今の女性は、初潮が昔よりも早くなって12歳ぐらい。もっと早い人もたくさんいると思います。30歳を過ぎての妊娠が普通になってくると、初潮から子供を産むまでに20年ぐらい毎月生理があるのですね。そのために、妊娠しづらくなる、ということがあります。

 卵子というのは、女性がまだお母さんのおなかの中にいるときにつくられます。ですから、41歳の私の卵子は、今42歳なのですね。お母さんのおなかにいるときには700万個ぐらいあった卵子が、生まれるときには200万個ぐらいに減り、思春期ぐらいになると20万、30万個に減る。排卵は基本的に月に1個なのですけれども、アポトーシスという細胞の自殺があって、大体毎月1000個ずつぐらい卵子は減るのです。そして、閉経時にはゼロに近づく。年齢とともに卵子が年をとり、数も減るのですから、妊娠には不利なことです。

加齢とともに増える子宮内膜症

 もう一つは、子宮内膜症。皆さん聞いたことはありますか。女性の1割ぐらいは子宮内膜症と診断されているのですが、実際は、もっと多いのではないかと思います。子宮内膜症の有病率も、やはり年齢とともに増えるのです。これはどういうことかと言いますと、子宮の中に赤ちゃんを宿らせるクッションみたいな内膜という組織が、毎月排卵の後にできます。妊娠が成立しないと必要なくなって、下から出てくる。ですが、実は下からだけではなくて、90%以上の人が卵管へ毎回逆流しているのですね。そのせいで、この子宮内膜という組織もお腹の中に入り込み、入り込んだ先で毎月生理を起こす。これが子宮内膜症の原因です。

 初潮が来てから妊娠するまでに20年も毎月生理があると、どんどんおなかの中に血がたまっていって、卵巣にたまればチョコレート嚢腫のうしゅ、子宮の筋肉の中に入り込めば子宮腺筋症、腸などほかの表面につくと子宮内膜症になって、不妊の原因にもなります。ですから、「妊娠するのはしばらく先だわ」という方は、ピルを飲んで、この子宮内膜の発育を抑えると、年齢とともに妊娠しづらくなることが防げるのです。

晩婚化でセックスレスも多く

 このほか、年齢とともに妊娠しづらくなる原因の一つにセックスレスがあります。20歳のカップルと35歳のカップルでは全く性交渉の頻度が違います。私のクリニックにも、「月に何回も夫婦生活をするのは難しいので、なるべくタイミングを合わせたい」という方がいらっしゃいます。性交渉の頻度が高いほうが妊娠率が高いのは、データにも表れているのですが、晩婚だと、新婚さんでもそんなに性交渉の頻度は高くないのです。

体外受精の成功率 日本で低いのはなぜ?

「30代前半から仕事と妊活を並行すれば、キャリアも形成できる」と語る宋さん

 不妊治療の話をします。最近は体外受精がどんどん増えていて、今は19人に1人の赤ちゃんが体外受精によって出生している。大体100万人弱ぐらいの赤ちゃんが生まれて、そのうち5万人ぐらいの赤ちゃんは体外受精で生まれています。

 ですが、体外受精の成功率は、医学が進歩しているにもかかわらず下がってきています。妊娠率も、無事に赤ちゃんが生まれる率もです。

 体外受精と顕微授精を合わせ、治療数は日本で42万件(2015年)も行われています。でも、実際に妊娠したのは7万件。流産をせずに赤ちゃんを授かったのは4万9000件しかない。これは世界的に見てもかなり低い数字です。

 どういうことかというと、やはり40代以上の治療数がすごく多いのです。妊娠率も低くなるし、成産率も低くなる、そして流産率が上がってくる。これは卵子の年齢によるものです。体外受精の門をたたく年齢が、遅い傾向にあるのです。

 体外受精にはお金がかかりますが、国が助成を出しています。世帯年収が730万円までの方ですと、1回の治療につき15万円。妻が40歳未満で始めると、6回まで助成されます。自治体で助成を行っているところもあります。しかし、これにも年齢制限がつくことになりました。

2人欲しいなら30代前半から妊活を

 外国の文献によると、子供を1人欲しい人が20歳で妊活を開始すると、ほぼ100%の人が授かります。35歳でも体外受精を選択肢に入れれば9割。40歳で始めても、体外受精をすれば7割ぐらいの人は授かるし、しなくても6割以上の人は授かる。このように見ると、35歳とか40歳というのは、まだまだ全然、生殖可能な年齢であることがわかります。

 私はひとりっ子じゃなくて2人欲しいんだという場合。35歳から妊活をしても、8割は2人授かる。私は35と39歳の時に産んでいます。30代前半ぐらいに始めたら、2人欲しいという希望は達成できる人が多いわけです。女性の生殖に適した年齢とキャリアを形成する時期は重なっていて、キャリアを先にし、それから産むとなると、希望する数の子どもが授かれないこともあります。30代前半から仕事と妊活を並行すれば、キャリアも形成できる。妊活開始年齢はこの辺なのかな、という感じです。

宋 美玄(そん・みひょん)

 産婦人科医。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「内診台から覗のぞいた高齢出産の真実」(中公新書ラクレ)など。子育てと産婦人科医を両立し、様々な女性の悩み、性、妊娠などについて、女性の立場から積極的な啓発活動を行っている。ヨミドクターでコラム「宋美玄のママライフ実況中継」を連載中。