京都・仁和寺で大人の修学旅行、世界遺産に泊まって「ミニ修行」を体験

Trip

仁和寺で、阿字観を体験しました

これから紅葉シーズンを迎える京都。「Go To トラベル」を利用して訪れる人も多いのではないでしょうか。真言宗御室派おむろはの総本山で、世界遺産にもなっている「仁和寺」では、境内の宿坊に泊まって“ミニ修行”などを体験できるプランが14日からスタートします。一足先に体験してきました。

JR京都駅からバスで40分、世界遺産・仁和寺へ

JR京都駅から市営バスに乗って約40分。バス停「御室仁和寺」で降りると、道路の向かいには、重厚な「二王門」がそびえ立っていました。

仁和寺は、888年(仁和4年)に宇多天皇が創建した由緒ある寺。元号にちなんでこの名が付けられました。10万平方メートルほどもある境内には、国宝の「金堂」をはじめ、重要文化財の「五重塔」や「観音堂」など、歴史ある建物が並びます。

世界遺産に泊まれる!

境内の東側にある宿坊「御室会館」でチェックインしました。4.5~18畳の計12室がある宿泊施設で、1人から予約ができます。室内には浴衣やフェースタオル、歯ブラシセットが、浴場にはシャンプーとボディーソープ、ドライヤーがありました。バスタオルは各自持参ですが、持ち物は少なくて済みそうです。

泊まったのは、8畳の客室。畳敷きのシンプルな部屋で、大きな障子を開けると柔らかな日差しが降り注いできました。境内は静かで、聞こえるのは、廊下を通る人の声くらい。世界遺産の中でゆったりとくつろぎ、ぜいたくな気分に浸ります。

僧侶に案内してもらい、境内の建築物を特別見学

1日目は、仁和寺執行の大石隆淳さんに案内してもらい、境内を見学しました。このプランでは、いつもは非公開の建築物の中を、特別に見ることができます。

重要文化財の「五重塔」へ。「五重塔の中って、どうなっているんだろう」。中学の修学旅行で仁和寺を訪れた時から、ずっと気になっていた疑問を大石さんにぶつけてみると、「1階より上は、組み木だけなんですよ」と教えてくれました。

五重塔に、大きな虹がかかっていました

実際に入ってみると、目の前には大日如来などの仏像が安置され、壁や柱に描かれた仏様や花の絵などは、まだうっすらと色が残っています。建立当時(1644年)はさぞ華やかな空間だったのだろうと思われます。「当時は極彩色で、『テーマパーク』のようだったんじゃないでしょうか」と大石さん。

五重塔や経堂、金堂の中は、いずれも撮影禁止。特別に許可を取って撮影しています

次に足を運んだ「経蔵」(重要文化財)では、扉を開けると八角形の不思議な棚が現れました。

(左)輪蔵(右)一つの箱を開けてもらいました。経典は江戸時代のもの

この建物は、「一切経」と呼ばれる経典を収納するための倉庫です。棚は「輪蔵」という回転式の書架。768個もの引き出しがあり、その一つ一つに経典が保存されています。納められている全ての経典を読まなくても、この輪蔵を一回転させると、読経したのと同じ御利益が得られると言われています。

金堂について説明する、仁和寺執行の大石隆淳さん

ほかにも、仁和寺の本尊が安置された「金堂」(国宝)や「九所明神」(重要文化財)などを見て回りました。団体のツアーだと質問しづらい場面もありますが、個人なので気軽に尋ねることができました。

非公開の国宝・金堂で、朝のお勤めに参加

会館のレストラン「京料理 和食どころぼん』」で、夕食に懐石料理をいただき、この日は、気合いを入れて早々と就寝。なぜなら、翌日は「朝のお勤め」に参加したかったからです。翌朝、夜が明け切らないうちに起床。肌を刺すような寒さの中、白い息を吐きながら金堂を目指します。
金堂に入ると、大勢の僧侶が阿弥陀如来像を囲むように座っていました。しんとした静けさの中、読経の低い声が重なり合い、堂内に響き渡ります。荘厳な雰囲気に、自然と手を合わせていました。空が白む頃にお勤めは終わり、その後15分ほど法話を聞きました。

精進料理で、食事作法を学ぶ

宿坊に戻り、朝食に「精進料理」をいただきました。

メニューは、湯豆腐鍋と筑前煮、がんもどき、生麩のみそ汁など

最初に、食事作法を学びます。精進料理を食べたことはありますが、作法を学ぶのは初めて。もらった資料を見ながらお経の一部を読み上げます。次に、自分が食べる前に仏様などへのお供え用として、ご飯茶わんからコメ7粒を取り分けました。この作法を「出生食しゅっさば」といいます。

上は、記者が読み上げたお経。僧侶の修行では、下の長さのお経を読み上げるそうです。「せっかくの食事が冷めてしまうので、私たちはもっと流ちょうに、10分ほどで読み上げています」とのこと

精進料理には、肉や魚は使われません。筑前煮やしぐれ煮には、牛そぼろの代わりに麩が入っていました。汁物などのだしを取るのにも、かつお節や煮干しは使わず、昆布や大豆で取るそうです。

魚や肉はありませんが、おなかはいっぱいに。漬け物を一切れだけ残して完食しました。食後の作法として、食器にお茶を注いで、その一切れでなぞるようにして食器を洗います。その後、注いだお茶を飲み切りました。

人気の“ミニ修行”体験で、ストレス解消!

宿泊体験の締めくくりは、“ミニ修行”です。「気軽に挑戦できて、ストレス解消できる」と、ミニ修行は近年、働く女性の人気を集めています。仁和寺では、真言密教の修行の一環「阿字観あじかん」と「写経」に挑戦することができます。

まずは、写経から。紙にうっすらと書かれた般若心経を、上からなぞっていきます。慣れない毛筆ペンに戸惑っていると、僧侶から「上手に書こうと思わなくていいんですよ。心を込めて書いてくださいね」と優しいアドバイスが。文字をゆっくり書き進めていくと、鳥のさえずりなど周りの音がいつの間にか聞こえなくなり、そのまま無心で書き上げることができました。感覚的には15分ほどでしたが、時計を見ると、もう30分近くが過ぎていました。

最後は、阿字観にチャレンジ。阿字観とは、平安時代に弘法大師・空海が日本に伝えためいそう法です。最初に、上半身のストレッチで体をほぐして仏様と同じ姿勢で座り、体の重心をしっかりとります。目は半眼を開いた状態。ここから、ゆっくりと深い腹式呼吸を繰り返します。

深い腹式呼吸に慣れてきたら、阿字観の特徴的な呼吸を行います。口を少し開いて、低い声で「阿、阿、阿……」と唱えるのです。「阿」は大日如来を象徴しています。「1メートル、2メートル先まで声を伸ばすように。心の中に満月を映して、月がだんだん大きくなるのをイメージして」と教えてもらいましたが、イメージをつかむのが難しい。ようやく慣れてきた頃に、体験は終わりました。

それでも、日頃抱える頭の中のモヤモヤは晴れて、体もスッキリ! 自分自身のメンテナンスとして、定期的に“ミニ修行”を取り入れたいなと思いました。

あっという間の2日間でしたが、都会のけんそうを忘れてゆったりとした時間を過ごし、修行で心身をリラックスさせることができました。次回は女友達を誘い、紅葉真っ盛りの頃に訪ねようかな。

紅葉のライトアップ、11月中旬から見頃に

仁和寺では、11月29日まで、紅葉のライトアップが行われています。

僧侶に“映え”スポットを教えてもらいました!

担当者によると、「スマホでもキレイに撮れるよう、照明の強さや色合いなど、ライティングにこだわっています」とのこと。紅葉は、11月中旬以降に見頃を迎えるそうです。早めの食事が済んだら、夜の仁和寺を楽しむのもいいですね。

(取材/読売新聞メディア局 安藤光里)

ライトアップ「仁和寺の風景を未来に残すプロジェクト」

会期:2020年10月30日(金)~11月29日(日)の金・土・日曜、祝日
会場:総本山 仁和寺境内(京都市右京区)
開場:午後6~午後9時(午後5時半受付開始、午後8時受付終了)
入場料:一般1000円、高校生以下無料

【あわせて読みたい】