ノスタルジックな漁村の風景に癒やされる、長崎県の上五島

リフレッシュ! 極上旅

私が長崎県の五島列島にある上五島(新上五島町)を旅したのは、早春、ちょうど椿(つばき)が満開の頃。島には約680万本もの椿が自生し、教会が点在する祈りの島を、さらに美しく彩っていました。赤い花と青い海とのコントラストは、言葉にできないほどの美しさ。ノスタルジックな漁村の風景も、心を癒やしてくれます。

ネイルにもボディーにも使える万能コスメ、椿油作りを体験

上五島に到着してまず目にしたのは、キラキラと輝く山の樹々でした。輝きの正体は、島の代名詞となっている、野生のヤブ椿です。五島列島全体では900万本ものヤブ椿が自生し、そのうちの600万本以上が上五島に茂っています。

満開の時期に島を訪れた私を、かれんな椿の花が迎えてくれました。最北端の「津和崎灯台・椿公園」は椿の観賞スポットとして整備されていますが、そこに至るまでの途上でも、咲き誇る椿の花を何度も目にすることができました。幾重にもグラデーションを描く青い海と深紅の花のコントラストは、まるで一枚の絵画のよう。

12~2月頃までが椿の開花シーズン

でも、椿はただ美しいというだけではありません。椿の実から搾る椿油は、島の特産品。昔から地区ごとに実を集めて搾油をし、家庭で料理用油や保湿剤として活用していたといいます。その歴史は古く、かつて7世紀から9世紀にかけて、遣唐使によって唐への貢物として椿油が贈られていたという記述もあるのだとか。

種が実る時期は8月~10月頃。実の中の黒い種が椿油の原料となる

そんな島の生活に溶け込んでいる椿油を、自分で作ることができると聞いて訪ねたのは、「つばき体験工房」です。ここで体験できる昔ながらの椿油作りは、とても興味深いものでした。まず、種を臼に入れて杵(きね)でつぶします。15分程つぶして油がにじみ出てペースト状になったら、それをセイロで蒸し、最後に圧搾機(あっさくき)にかけて油をしぼって完成。工程はけっして複雑ではないのですが、1粒の種からとれる油はわずか0.3グラムと、とても貴重です。

「つばき体験工房」では、種をすりつぶし、蒸し、油を抽出するまで、一通りの工程を体験できる

この工房をはじめ島内のショップでは、さまざまな椿油のアイテムが売られています。椿油に含まれるオレイン酸は、生活習慣病の予防改善に良いと言われる成分ですが、女性が注目すべきは、美容の効果! 肌への刺激が少ないうえ、お肌や髪に潤いを与えてくれるのです(椿油には、植物油の中で最も多くのオレイン酸が含まれています)。

しぼりたての椿油は少し濁っているものの、しだいに不純物が沈殿してクリアになる
椿の木は無農薬。純粋椿油や甘夏エキスを加えたものなど、さまざまなコスメがある

椿油というと、昔、祖母の家の鏡台にあった記憶があり、なんとなく古くさいイメージもあったのですが、上五島で売られているコスメは、パッケージもかわいらしくて持ち歩きにぴったり。椿油に島産甘夏エキスを入れたハンドオイルはさわやかな香りで、昔ながらの100%精製油は色素も香料も一切使用しない優しい使い心地です。乾燥肌の私は、年間を通してローズヒップオイルやアプリコットオイルを使っていますが、椿油も保湿力が素晴らしく、なにより肌なじみが抜群。日々、ボディーやネイル、フェイス用に使っています。

迷路のように延びる奈良尾集落を探検

椿油作りを楽しんだ後は、集落散策へ。エメラルドグリーンの海や白砂のビーチが魅力の上五島ですが、島の暮らしにも触れてみたくなって、奈良尾地区を歩いてみました。

海に面した丘に広がる奈良尾地区。新上五島町には他に、若松地区、有川地区、上五島地区、新魚目地区がある

長崎市や福江島(五島市)と航路でつながる奈良尾は、上五島の玄関口のひとつ。江戸時代から西日本随一の大型「まき網」漁業の基地として栄えた漁師町でもあります。

まき網漁というのは、船団を組み、巨大な網で魚群を囲い込む漁法のこと。数隻で船団をなし、約1か月にわたって漁をした後、月夜間(つきよま=満月の前後約1週間)に奈良尾港に帰ってくるのが習わしとなっています。かつて、月夜間の奈良尾は、長崎市から芸者が集まり、漁師たちの労をねぎらう宴会で大いににぎわっていたのだとか。くねくねと曲がった道を歩いていて見つかるのは、かつて料亭だった頃の面影を残す建物。当時の大繁栄がしのばれます。

迷路のように延びる住宅街の路地を散策

集落の中心部には、奈良尾神社があります。集落の人にとっては身近な「村の鎮守」的な存在のようですが、アコウの大木が繁る参道は大迫力、そして神秘的。根元が二股に分かれた木が、まるで緑の鳥居のように、参道を覆っています。枝や幹を天に向かって伸ばす大樹はなんとも言えない生命力を感じさせ、ここにいるだけでパワーをもらったような気持ちになりました。

アコウの大樹は、幹周り約12メートル、高さ約25メートルで、日本一の大きさを誇る

集落は、海に向かって開いた緩やかな丘に形成されています。一歩、路地裏に入れば、家の間を縫うようにして路地が延び、まるで迷路のよう。階段を上ると、突然、見事な石垣の上に立つ住宅が現れたり、屋根の上を猫が飛び回っていたりなどして、1時間ほどの散策は飽きることがありませんでした。

至るところに手積みの石垣が。これも上五島らしい風景

ひとしきり散策を楽しんだ後は、地元の食料品店へ。上五島名物の芋焼酎「五島灘」の島内限定青ラベルと、「ふしめん」という、珍しい食材を購入することができました。

島では親しまれる「ふしめん」。ショートパスタ代わりに使ってもおいしい

「ふしめん」は、名物の五島手延うどんをさおに掛けて干したときにできる、一番端の曲がった部分。「ショートパスタ代わりに使ってもおいしいわよ」というお店の方のアドバイスを参考に、グラタンにしてみたところ、もちもちの食感がたまらない一品ができあがりました。

つばき体験工房
新上五島町観光なび

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芹澤和美
芹澤和美(せりざわ・かずみ)
旅行ライター

 編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。

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